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by hiroseto2004

長時間労働を解消し、過労死を根絶するために――日本共産党の緊急提案


長時間労働を解消し、過労死を根絶するために――日本共産党の緊急提案

2017年3月3日


 電通の若い女性社員の過労自殺が労災認定され、大きな社会問題となっています。過労死・過労自殺は、労災認定されただけでも189件(2015年度)にのぼり、2日に1回、過労死事案が起きていることになります。日本で過労死が叫ばれるようになって40年も経過しますが、悲劇は繰り返され、悪化し続けています。

 長時間労働に社会的な批判が高まるなかで、一部の大企業では、業務量も、目標=ノルマも、成果主義も、そのままで、「残業はするな」「とにかく会社から出ていけ」というだけの「働き方改革」が横行しています。労働者は、「会社の電気が消えた後は卓上ライトを持ち込んで仕事をしている」「パソコンを持ち帰り自宅や24時間営業のファストフード店などで仕事をせざるを得ない」など、「会社に隠れて仕事をする」という異常な事態まで生まれています。

 安倍政権は「働き方改革」を掲げていますが、実際にやろうとしているのは、長時間労働を固定化し、悪化させる「改悪」です。

 第一は、残業時間を「年720時間、月100時間まで合法化する」など長時間労働に「お墨付き」を与えることです。

 安倍首相が議長の「働き方改革実現会議」では、「年720時間、繁忙期には月100時間」もの長時間残業を容認することが検討されています。年720時間の残業は、休日を除けば1日3時間程度に相当しますから、「1日11時間労働」を「合法化」するようなものです。「月100時間」は「過労死」してもおかしくない水準で、残業時間が「月100時間」に達していなくても、過労死の労災認定されたケースも少なくありません。いくら会社が「忙しい時期」だからといっても、過労死の危険を冒してまで働かせることを「合法化」するなどあってはならないことです。

 第二は、裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)の導入という会社が残業代を払わない働かせ方を拡大することです。

 すでに法案が国会に提出されており、労働基準法の労働時間規制が適用されない労働者をたくさん作り出すことになります。どんなに残業をやろうが残業代は1円も払わない、何時間働いても賃金は同じという仕組みで、労働時間にとらわれずに業務量や目標を決定できるようになるなど、長時間労働をさらに悪化させる法改悪そのものです。

 長時間労働は、働く人の身体と心の健康を傷つけるとともに、家族や子育て、地域社会など日本社会の健全な発展にも大きな妨げになっています。長時間労働を克服し、過労死を根絶するために、日本共産党は、以下の諸課題に緊急に取り組むことを提案します。

1、残業時間の上限規制と割増残業代の支払い――二つの方向から長時間労働を規制する

 過労死という悲劇が繰り返され、長時間労働の是正が叫ばれ続けながら、事態が悪化し続けたのは、日本の労働法制に二つの決定的な弱点があるからです。

 その一つが、残業時間の上限規制も、勤務と勤務の間に最低とるべき休息時間――インターバル規制もないことです。これらはヨーロッパ諸国では当然の労働時間管理のシステムとなっていますが、日本では、労使協定を結べば残業ができることになっていながら、その上限規制が法律にないために、長時間労働が野放しになっています。インターバル規制がないために、深夜まで残業しても、翌日は定時で出勤させられます。

 もう一つが、残業代によって、長時間労働を経営的に抑制するという役割がきちんと発揮されていないことです。残業代の割増率が25%というのは、アメリカ、イギリス―50%、フランス―週8時間まで25%、週8時間以上は50%、ドイツ―日2時間まで25%、それ以上は50%など(法律や労働協約などで規定)に比しても低いうえに、残業時間を過少に申告させる、規定以上の残業代は認めないなど、「サービス残業」(ただ働き残業)という会社による違法行為=企業犯罪がまかり通っています。

 長時間労働を是正し、過労死をなくすためには、残業時間の上限規制と割増残業代をきちんと支払わせる、二つの「歯止め」を強化し、きちんと機能するようにしなければなりません。

①残業時間の上限規制とインターバル規制を行う労基法改正を早期実現する

  • 残業時間の上限を、政府自身が働く人の健康を守るためとしてきた「週15時間、月45時間、年360時間」とし、この規制に穴をあける特例は設けない。
  • 勤務間に最低11時間の連続休息時間を確保するインターバル規制を導入する。

 労働基準法上、労働時間は「1日8時間、週40時間」が大原則です。その例外として労使協定(36協定)を結べば残業ができることになっています。厚生労働省は、例外の残業時間を大臣告示で「週15時間、月45時間、年360時間以内」としていますが、法的拘束力がありません。大臣告示は、残業が「月45時間」を超えると健康リスクが高まるという医学的根拠をもとに政府自身が決めたものであり、これを上限として法定化するのが当然です。

ところが安倍政権は、大臣告示で示してきた「週15時間、月45時間、年360時間」を残業時間の一応の「上限」としながら、労使協定を結べば「年720時間、月100時間」の残業をさせても構わないという「特例」を設けようとしています。これでは「働き方改革」どころか、長時間労働に「お墨付き」を与えるだけです。

その一方で、安倍政権は、勤務終了から翌日の勤務開始までの休息時間確保=インターバル規制も「多くの企業が導入していない」などという「理由」で拒否しています。多くの企業が導入していないからこそ、法整備が必要なのです。 

②残業代による長時間労働抑制――長い残業時間には割増率を増やす、「サービス残業」へのペナルティー強化

■長時間の残業、連日の残業には、割増率を50%にする

  • 1日2時間を超える残業、週8時間を超える残業には割増率を50%にする。
  • 3日連続で残業をしたら4日目からは割増率を50%にする。

 現行では、月60時間を超える残業からは割増率は50%になりますが、これでは長時間労働の抑制効果はありません。実効力を持たせるために、一日単位、週単位で、長時間の残業には割増率を引き上げることを提案します。

■「サービス残業」や残業時間のごまかしを許さない法規制を強化する

  • 違法な「サービス残業」が摘発されたら、残業代を2倍にして支払わせる「倍返し」の制度をつくる。
  • 労働時間台帳を法律で義務づけ、本人や本人の同意を得た職場の同僚、家族、友人が労働時間と支払われた残業代が正当かどうかチェックできるようにする。

 違法な「サービス残業」が発覚しても、規定の残業代を支払えば「一件落着」というのが現行の労働行政です。「バレてもともと」というのでは違法行為はなくなりません。違法な「サービス残業」をさせたら残業代を2倍にして支払わせる制度をつくり、経営的に「サービス残業」は割に合わないものにするなど、ペナルティーを強化します。

 「規定の残業代までしか認めない」など、労働時間と残業代のごまかしを許さないために、管理職を含めた全員の労働時間と支払われた残業代(賃金)を正確に記帳することを義務づけ、本人や本人の同意を得た職場の同僚や家族、友人が閲覧できるようにし、これを拒めば違法行為として摘発できるようにします。

■“課長にも残業代を”――残業代が免除される管理監督者の規定を厳格に運用する

  • 「名ばかり管理職」はもとより、「課長になったら残業代は出ない」という間違った常識を正す労働行政にする。

現行の労働法には「課長は残業代がつかない」という規定はありません。労働基準法上の管理監督者は、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」で、課長や店長などの名前がついていても、この管理監督者としての実態がなければ、残業代を払わなくてはなりません。

2、パワハラを規制する法改正を行う

  • 厚生労働省は、パワハラ行為をおこなった企業に対して、助言、指導、勧告を行い、勧告に従わない企業名を公表する。パワハラの是正指導を労働局に求めた労働者に対する不利益とりあつかいを禁止する。

過労死の背景には、長時間労働での精神的・肉体的疲労とともに、職場でのパワーハラスメントがあります。そもそも「過重な仕事の押し付け」は、厚生労働省が示している「パワハラの6類型」の一つである「過大な要求」に該当します。達成できないノルマを課して精神疾患や過労死・過労自殺に追い込むことは、厚労省の見解にてらしても、職場であってはならないパワハラです。しかし、現行の労働法制にはパワハラを規制するものはなく、企業への「啓蒙指導」で終わっています。適切な法規制を実施すべきです。

3、労働法を守らせる監視体制と違法行為への社会的制裁を強化する

  • 労働者や家族など現場からの告発に迅速に対応できる労働行政にする。そのために労働基準監督官の増員をはじめ労働基準監督署の体制を抜本的に強化する。
  • 労働基準監督署が摘発しても企業名公表に至るのは0.2%程度という現状をあらため、違法行為を繰り返す悪質な企業の名前を公表する。

 長時間労働の最大の抑止力は、労働者のたたかいであり、現場からの告発です。現場の声を真正面から受け止め、労働法違反を厳しく監視できる労働行政にする必要があります。

 労働者本人はもとより、家族や職場の同僚、友人などからの長時間労働の告発に迅速に対応する労働行政に改善しなければなりません。そのために労働基準監督署の体制を抜本的に強化することが必要です。

 また、企業が違法行為を摘発されてもほとんど公表されていません。2015年1年間に、残業代未払い(サービス残業)や労働時間関係違反で、労基署が摘発したのは約27000件にもなりますが、企業名が公表されたのは0.2%程度にすぎません。違法行為をやっても社会的制裁をほとんど受けないのでは「企業犯罪」はなくなりません。同一企業で年二回以上、労働時間管理や残業代未払いで摘発された企業名は公表するようにします。

 

 野党四党として、長時間労働を規制する労働基準法の改正案を国会に共同で提出するなど、長時間労働と過労死をなくし、労働者と家族の生活を守り、働く人たちが個人として尊重される社会をめざそうという世論と運動、野党と市民の共同がすすんでいます。また、日本共産党は、ブラック企業規制法案で、「サービス残業」へのペナルティー強化・「倍返し」制度やパワハラ規制など「ブラックな働かせ方」をやめさせる立法提案をしています。長時間労働への規制を強化する労働基準法の改正を一日も早く実現するとともに、8時間働けば普通に暮らせる社会にしていくために、幅広いみなさんと力を合わせます。


by hiroseto2004 | 2017-03-04 11:40 | ジェンダー・人権(労働問題) | Trackback