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by hiroseto2004

食卓から見えなくなってしまった“農”

8月2日、福山市の男女共同参画センター「イコールふくやま」で、エソールひろしま大学公開講座があり、広島大学生物圏科学研究科の田中秀樹教授に「食卓から見えなくなってしまった“農”」とのテーマでご講演いただきました。

田中さんは
1、食品が遠くからやってくる(いわゆるフードマイルズが世界でもダントツ一位)「遠距離化」
2、社会の変化により、消費者が「食べるだけの人」になってしまい、農業がどんなものかわからなくなる「遠方化」が起きていると指摘。栄養バランスがよい日本型食生活は崩れ、総菜などに頼るように変化していると指摘しました。

そして、農業自体も、モンサントなどに見られるように、超大型機械やGPSを使用するなど、まるで工業のようになっている、としました。

そして中国のWTO加盟で、アメリカの大豆が中国に流れ、それが中国の農業の野菜シフトを招き入れ、韓国市場を席巻、さらに韓国の野菜が日本に流れ込み、とくに野菜の大量生産の分野が圧迫されている、と紹介しました。

しかし、最近では、中国やインドなどの食料需要増加やバイオ燃料、投機マネーの影響で食料が高騰し、金さえあれば買える状況ではなくなった、として、広島でも、地域から食料自給をめざすべきだ、としました。

その上で、どうすればよいかを考える材料として広島の農業の歴史と現状を紹介しました。

広島の食料自給率はわずかに23%。下から12番目で東京や大阪など農業がほとんどない府県があることを考えると実質最下位に近いそうです。

また、広島は平地での農業は盛んではなく(広島市と福山市という都会になっている)中山間地に集中しているのが特徴です。米も、東広島市や三次市の山間部が多く、棚田が多い。だから、都会に八割が住む県民にとり農村は見えにくいのです。

しかし、実際には北部山間部ではりんごがとれ、南部沿岸ではみかんがとれるという多様な自然にめぐまれ、山も信州や四国のように険しくありません。だから山間でも農業をため池と棚田が特徴としてできます。

広島県民は水田、里山、山林をうまく組み合わせ、米、和牛、木炭など多様な山の恵みを生かした農業をしていました。和牛の放牧で堆肥をつくるなど、栄養がぐるぐる地域で回る仕組みだったのです。まさに環境からいえば理想的だと私も話を聞きながら感心しました。

ところが、経済効率だけから見ればこういう非効率になってしまう。

高度成長以降、次第に高齢化が進みました。
最近は、グローバリズムの直撃を受け、自給野菜生産も含め農業が衰退、耕作放棄が二割に達し、これらがまた地力を弱め、松茸の生産量も昔は数百トンあったのが今は数トンに低迷しています。いまや多くの集落が維持不可能です。

広島は日本農業の衰退のフロントランナーなのです。

しかし、一方で、農村の地域づくりに危機感をもってとりくむフロントランナーにも広島はなっています。

具体的には、農家が複数集まって農産物を売る直売市があります。

また、生産協同のための集落型法人導入、さらに福祉のネットワークなど、旧来ムラ社会とは違った形でのネットワークが広がっています。

田中さんは、特に女性と高齢者の役割が重要になっていると強調しました。
さらに、都会の人が農村を訪れ、魅力を言うことで、「何にもない」と自虐的だった地域の人が誇りを取り戻すことになる、と都会の人の役割も重要としました。

売るための農業ではなく、暮らしに根付いた、また、高齢者の生きがいとしての福祉としての、多面的な農業をめざすべきとしました。

このようにして、小さな産業複合体をつくり、都市型市場経済、グローバリズムの影響から自立化すべきとしました。

そして、古い農村社会や慣習ではなく、新たな協同にすることで女性の役割を社会的に認めることによる農村社会変革が必要だと提起しました。

広島県民全体の課題としては、地産地消は、商品づくりより、顔と暮らしが見える関係づくりが大事ではないか、そして広島の地域資源を生かした暮らしを広めることが必要ではないかと提起しました。

また、それにより逆に都会でも農業が見直されるのではないかと期待しました。実際、広島市の秋葉市長は、三期目にはいり、農業への普及啓発に力を入れだしていますから、この提起はタイムリーだと感じました。

もちろん、質疑応答では悲観的な意見も出ました。国の政策に農家が振り回されている。自治体の農政関係者からは「わが街で農業を、と若い人にうかつに薦められない」と憂慮する声がでました。

田中さんは、「国や県の政策はどうか」との質問に対し、「残念ながら国は、大規模化する農家しか助けない方針だ。広島も「選択と集中」という名目でその路線だ。これでは広島の農業は厳しい」と憂慮しました。

そして、「学者は何ができるか」という質問に対しては「学者は非力。最後に国を動かすのは国民。」と、国民意識に期待しました。

講演を通じ、広島県民が、何を農村で都会ですべきか見えてきました。

一方で、国の政策が壁として立ちはだかっていると改めて確認させられました。

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