人気ブログランキング | 話題のタグを見る

庶民派知事で何があっても心配いらない広島を ヒロシマ庶民革命


by hiroseto2004

公務員には「憲法尊重擁護」の義務がある!―田母神「論文」問題を考察し問題提起する―横原 由紀夫

公務員には「憲法尊重擁護」の義務がある!
―田母神「論文」問題を考察し問題提起する―
  
                                 横原 由紀夫

<はじめに> 
 昨年10月に、現職の航空幕僚長が「アパグループ」主催の懸賞論文に「日本は侵略国家であったのか」の題で応募し、最優秀作として賞金300万円を貰う事が明らかになった。要するに主張の趣旨は、「わが国が侵略国家だったなどというのは濡れ衣であり、悪いのは中国や米国である・・」ということである。
 この問題の結末は、幕僚長の地位は10月31日付けで更迭されたが、懲戒処分もされず11月3日付けで定年退職となり約7000万円の退職金を受け取った。
 この問題を中心にして問題点、背景、運動課題を提起してみたい。

Ⅰ 田母神「論文(主張文)」の問題と背景

 字数の関係で「論文(主張文)」の内容について事細かに反論・検証はできないが、問題点を列挙してみる。(1)わが国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者である。ルーズベルト大統領の仕掛けたわなにはまり戦争に突入した。(2)中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、旧日本軍の駐留は条約に基づいたものであり相手国の了承を得ている。(3)わが国が侵略国家だったなどと言うのは、まさにぬれぎぬだ。(4)東京裁判は責任をすべて日本に押し付けようとしたものである。それが日本人を惑わせ、集団的自衛権も行使できない(以下、省略するが、いずれも偏見と都合の良い主観に基づくもので、自分勝手な旧軍正当化論である:内容については11/16付け中国新聞記事を活用)。

 日本外国特派員協会でも講演し、自説を繰り返したが、そこから表れる主要な考え方を挙げると・・。(1)核武装に言及し、(質問に答える形ではあるが)核による「報復」にまで言及。(2)植民地支配に関する歴史認識の否定(政府見解の否定)。(3)集団的自衛権の行使容認、憲法改正を求める持論の展開。(4)自衛隊は「言論弾圧社会」と断定し、言論の自由を主張する。ここから伺えることは「文民統制の否定」である。

 200人以上のジャーナリストが出席したと報道されているが、外国人特派員や日本人記者の多くに共通する感想は、「このような人が自衛隊のトップにいたこと自体が驚きである。日本で本当にシビリアンコントロールが機能しているのか疑問だ」、「論文も引用が多く素人の文章で懸賞でなぜ高く評価されたのか分からない。自衛隊員の多くがこうした考え方を持っているなら驚きだ。日中の信頼醸成に悪影響を及ぼす」、「(賛成できる部分もあるが)戦前の日本の行動がすべて正当だったかのように述べる彼の議論は、あまりに一面的。米国人は相手にしていないだろう(米国人ジャーナリスト))」等など、あまりに一面的な見解に驚き、あきれる声が上がった、と報道されている(12/2付け中国新聞)。

 問題を考える上で重要な事は、(1)田母神論文(主張文)を支持する勢力が自民党など政界に存在すること。(2)制服組の発言力が増してきたこと。2003年、石破茂防衛相(当時)が、自衛隊の高級幹部に対して“政治に意見を述べることは権利であり、義務だ”と訓示したことが影響を与えていること。(3)新しい歴史教科書をつくる会などの活動に自衛隊制服組の中に共鳴者が存在すること。懸賞論文を主催した“アパグループ元谷代表”の人脈には自民党だけでなく民主党などの政治家も存在すること。(4)麻生首相も浜田防衛相も、「立場上問題である」として立場性のみ挙げていること。とすると両者とも自らの歴史観は田母神と同じである、ということにならないか。本来であれば、首相・政府は歴史観・認識について「公式見解」を明らかにしなければならないが・・。

 これらの流れを作り出した大きな背景は、この十数年間の政治にある。橋本内閣の「日米安保再定義」にはじまる日米軍事同盟強化路線と米国追従路線強化、それを加速・拡大させた小泉内閣による「有事法制」、イラクとインド洋への自衛隊派遣、自衛隊法改正により「自衛隊の海外派遣が主要な任務」とされたことなどなどである(今、大問題となっている「格差拡大(新たな貧困層の増大)」も橋本内閣からはじまり、小泉内閣で加速された。米国からの強い規制緩和要求などに応える形で事態が進んだ)。

Ⅱ 田母神「論文」批判と考え方―運動の課題

1 侵略国家は濡れ衣か

 従来、政府は、侵略戦争の反省に立って「植民地支配と侵略でアジア諸国に損害と苦痛を与えた、という事実を謙虚に受け止める」とする村山談話を歴代政権が踏襲してきた(筆者は、談話ではなく戦後50年国会決議とすべきであった―との批判を持つが)。これが日本政府の公式見解であり、「公務員」はこれを否定することはできない。

 日本が中国、朝鮮をはじめアジア諸国の人々と和解し共存・共栄するためには「歴史教育」を教育現場のみならず社会の場でも徹底させねばならない政府の責任がある。歴史認識を共通のものとするためには、(左派・右派を問わず)客観的事実に基づいて真実を見出すものでなければならず、一面的、主観的、情緒的な見方は誤りであることは論を待たない。また、そのためには、「戦争加害の責任をとるための戦後補償問題解決に政治が動かなければならない」のである(政治家の任務)。良いことも悪いことも歴史を正面から受け止め自省することが求められている。
 戦後補償問題解決を「国会決議」すべき課題が運動にとっても重要かつ急がれる。

2 自衛官にも言論の自由を

 政府見解による言論統制はおかしい―ということについて

 言論の自由は民主国家における基本的人権の一つである。だが、よく考えて欲しい。“自由”という概念はもともと「権力からの自由を保障」するということから始まって法的に確立された「権利」である(近代法治社会の原理)。従って、本来、権力を持たない市民(弱者)の言論を守るためのものである(自由勝手に振る舞い、他者を傷つけることは許されていないが)。田母神氏のように高い地位にあり権力を持っている者が使う論理ではなく次元が異なる問題である。もし仮に麻生首相が、「俺は金も使い努力(?)して今の地位についた。俺の言うことを国民は聞くのが当然だ。嫌なら日本から出て行けばよい。格差がつくのは競争社会であれば当然だ。努力しない一部の者に税金を使うのは不公平だ。自己責任だから自助努力すべきだ・・」と発言することが、言論の自由として許されるのか?このような社会は独裁権力社会であり、ファッショであり、民主国家ではない。

3 公務員の憲法遵守義務(第99条を守れ)―運動の課題

 憲法第99条は「憲法尊重擁護の義務」を以下の人々に課している。[天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。]と明記している。公務員は憲法を尊重せよ!と迫る運動を強めなければならない。
 田母神問題に象徴されるように、この間、公務員の憲法を無視・軽視・違反する言動が余りに多すぎる。「行政・立法・司法」という国家機関は憲法に縛られていることを自覚すべきである(法治社会の原則)。

 マスコミも市民も運動団体も“公務員の憲法無視、軽視、違反の言動”に対して厳しくその責任を追及しなければならない(現状、追及が弱い)。憲法違反行為に対する追及力の弱さが「無責任社会」、格差拡大社会の日本を作った原因だと、私は考える。

 戦前の日本が、天皇主権を原理とする帝国憲法の下で、天皇・憲法すら無視する軍部の暴走がはじまり、軍部独裁・ファッショと化し軍国主義による戦争へと突っ走ったことを反省しなければならない。武力を持つ軍部の強権を許したが故に、武力の怖さに従わざるを得なかった、歴史である。その反省と教訓から「現憲法が生まれ、第99条が規定」され、「文民統制」が制度化されている。文民統制の責任者は内閣総理大臣であるが、本質的には「国民」に最終権力がある。

 田母神氏のこの間の発言と行為は、憲法第99条に違反し、憲法第15条(公務員は国民全体に奉仕する義務)にも違反している(字数の関係で略)。
 憲法違反を社会的に許さない運動を強めよう。
(2009年1月9日記 第9条の会ヒロシマ世話人)


公務員には「憲法尊重擁護」の義務がある!―田母神「論文」問題を考察し問題提起する―横原 由紀夫_e0094315_1847474.jpg



記事へのご意見・ご感想はこちらへどうぞ!

なるほど!と思ったら下をクリックお願いします!







公務員には「憲法尊重擁護」の義務がある!―田母神「論文」問題を考察し問題提起する―横原 由紀夫_e0094315_1711491.gif
人気blogランキングへ
by hiroseto2004 | 2009-01-28 22:38 | 読者投稿 | Trackback