EUにみる雇用のセーフティ・ネット、オバマ大統領当選一年【2】
2009年 11月 15日
昨日14日、大阪市内で朝日新聞編集委員の竹信三恵子さんの【EUにみる雇用のセーフティ・ネット】と、ニューヨーク市立大学のジョイス・ジェルブさんの【選挙後一年のオバマ大統領】をお聞きしました。
WWN(働く女性のネットワーク)主催。
http://wwn-net.org/
竹信さんは、ここ数年、EUおよび国内の労働問題について取材を重ねておられます。朝日新聞を購読されている方には、彼女の記事はおなじみだと思います。今後とも紙面を注目していただきたいと思います。
以下は、竹信さんのお話の概要です(質疑応答への回答含む。整理の都合上、前後させている部分もあります。)
■均等待遇原則を徹底させるEU
EUは2008年11月、均等待遇原則のEU指令を採択しています。
均等待遇にすることで、際限のない派遣労働へのシフトを食い止めています。
日本は均等待遇ではない。三年たてば直接雇用という条項を定めたが、正社員と派遣社員の格差がありすぎる中で、企業が正社員に採用するわけがないのです。
■リスクを分散するデンマーク、監視が厳しいオランダ
デンマークは、正社員を解雇しやすいが、転職支援が充実してます。そして最近では【解雇前に転職】が政策目標です。このため派遣労働は少ない。
翻って日本は、とりあえず見かけの失業率を下げるために派遣を拡大してしまった面もある。ところが、一旦ワーキングプアになるとそこから脱せなくなる状況です。
オランダは労使で労働条件が守られているかどうか監視する監視機関(通称:労働ポリス)があります。オランダは日本と似て派遣が多いが、均等待遇が徹底し、正社員への道は広いのです。
■権利意識が根付いている英仏
イギリスの場合は、社会的企業が、職業訓練を仕事付きで政府から委託費をもらって引き受けています。また、日本と違い、そうはいっても昔の長い労働政権時代の権利意識が根付いている、ということです。
フランスは、労働組合組織率は8%ですが、意味が違います。労働組合員=活動家なのです。そして、協約が8割から9割の労働者に適用されます。従って組合員でなくても、ストライキにも自発的に参加します。そこが日本とは違います。
監視の仕組みが機能していない。労働組合も元気がない。ですから、新自由主義の影響がひどくでてしまったのです。
■日本と似た失敗例:スペイン
あえていえば、日本と似た失敗をしたのはEUではスペインだそうです。
スペインでは、非正規雇用が三分の一にまで増えてしまいました。また、日本と似て、男性がつく職と女性がつく職がわかれていて、賃金差別が温存されているということです。
低賃金に頼る経済成長と続けてきたスペインですが、リーマン・ショックで一気にめっきがはがれました。高付加価値の仕事をなくしてしまったという反省が聞かれるそうです。
これからの日本では、以下のことが課題になります。
■賃下げに頼る経済からの転換を
とにかく日本はここ数年、賃金引き下げに頼った経営を企業がしてきて、政治がそれをアシストした。
非正規労働増加→スキルアップできない→全体の生産性低下になりつつあります。
本当は付加価値が高い産業に変えていかないといけなかったのです。オランダやデンマークはそうした方向に進んできたのです。
■企業に頼るセーフティネットから社会全体で支えるセーフティネットへ
企業・家族に頼るセーフティー・ネットのあり方を見直し、社会で支えるセーフティー・ネットにすることです。仕事をしなえば家も失う。会社を辞めたら職業訓練も終わり。会社依存の福祉は怖いのです。
派遣労働は、やはりどんな業種でも賃金引き下げに働いてしまった。均等待遇にしたうえで、正社員へのブリッジがないものは禁止とすべきです。
■労組は地域協議会の強化で影響力を
また、労働組合が政策決定力と監視力をつけないといけません。労働組合は今の企業別から地域労組をめざすべきです。
産業別をめざすべき、というのが昔だったが、いまは非正規が増えすぎたから地域労組を目指すしかない。
連合幹部に取材すると、もっと連合は地域協議会に予算を回すべきとおっしゃる方もおられます。さ
らにいえば、ストライキを長年やっていないので「埋蔵金」が1.2兆円もあるそうです。組合費はそもそもストで給料が入らなくなったときに備えて蓄えてあるものなのですから・・。
1000億円もあれば、非正規労働者の組織化が出来るのに、という意見もあるそうです。現実にはそうなっていないが、それを外部も後押しすべきなのです。
などでした。
■政権交代で言い訳は通用しなくなった
さて、民主党員・連合組合員としての感想は以下です。
民主党は一応、企業支援から家計支援への転換をマニフェストの基調として総選挙に圧勝しました。おおまかにいえば、均等待遇にしたうえで生活面のセーフティー・ネットは社会全体へという指向性です。とくにわたしより下の年代の若手党員には、この指向性を額面通り有権者に訴えてきた人間が多いとおもいます。
さらに、鳩山政権閣僚は、均等待遇にも前向きで、女性差別撤廃条約選択議定書の批准も前向きです。
また、正規労働者の労働組合員の中ではいままで、本音レベルでは、均等待遇への警戒感もありました。
「職務給で均等待遇にされたら、給料を低い方にあわされるだけではないか?」
「住宅ローンや子どもの学費はどうしてくれる?」
しかし、これからは福祉を企業頼みではなく、社会全体で支えることにすればいいのです。自民党政権下であれば社会全体で支える福祉を整備せずに、「低いほうにあわせる」ということになりかねないという言い訳も通用しましたが、そうはいかなくなります。
もちろん。財政運営で藤井財務大臣、平野官房長官ら緊縮財政派が力が強い。やはり、きちんと負担できる方から負担していただき、それを社会全体で支えるセーフティー・ネットにあてる方向にしないとらちがあかないでしょう。
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以下の与党各党も参考に
「建設的野党」日本共産党
解散・総選挙にのぞむ基本的立場(日本共産党)
WWN(働く女性のネットワーク)主催。
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竹信さんは、ここ数年、EUおよび国内の労働問題について取材を重ねておられます。朝日新聞を購読されている方には、彼女の記事はおなじみだと思います。今後とも紙面を注目していただきたいと思います。
以下は、竹信さんのお話の概要です(質疑応答への回答含む。整理の都合上、前後させている部分もあります。)
■均等待遇原則を徹底させるEU
EUは2008年11月、均等待遇原則のEU指令を採択しています。
均等待遇にすることで、際限のない派遣労働へのシフトを食い止めています。
日本は均等待遇ではない。三年たてば直接雇用という条項を定めたが、正社員と派遣社員の格差がありすぎる中で、企業が正社員に採用するわけがないのです。
■リスクを分散するデンマーク、監視が厳しいオランダ
デンマークは、正社員を解雇しやすいが、転職支援が充実してます。そして最近では【解雇前に転職】が政策目標です。このため派遣労働は少ない。
翻って日本は、とりあえず見かけの失業率を下げるために派遣を拡大してしまった面もある。ところが、一旦ワーキングプアになるとそこから脱せなくなる状況です。
オランダは労使で労働条件が守られているかどうか監視する監視機関(通称:労働ポリス)があります。オランダは日本と似て派遣が多いが、均等待遇が徹底し、正社員への道は広いのです。
■権利意識が根付いている英仏
イギリスの場合は、社会的企業が、職業訓練を仕事付きで政府から委託費をもらって引き受けています。また、日本と違い、そうはいっても昔の長い労働政権時代の権利意識が根付いている、ということです。
フランスは、労働組合組織率は8%ですが、意味が違います。労働組合員=活動家なのです。そして、協約が8割から9割の労働者に適用されます。従って組合員でなくても、ストライキにも自発的に参加します。そこが日本とは違います。
監視の仕組みが機能していない。労働組合も元気がない。ですから、新自由主義の影響がひどくでてしまったのです。
■日本と似た失敗例:スペイン
あえていえば、日本と似た失敗をしたのはEUではスペインだそうです。
スペインでは、非正規雇用が三分の一にまで増えてしまいました。また、日本と似て、男性がつく職と女性がつく職がわかれていて、賃金差別が温存されているということです。
低賃金に頼る経済成長と続けてきたスペインですが、リーマン・ショックで一気にめっきがはがれました。高付加価値の仕事をなくしてしまったという反省が聞かれるそうです。
これからの日本では、以下のことが課題になります。
■賃下げに頼る経済からの転換を
とにかく日本はここ数年、賃金引き下げに頼った経営を企業がしてきて、政治がそれをアシストした。
非正規労働増加→スキルアップできない→全体の生産性低下になりつつあります。
本当は付加価値が高い産業に変えていかないといけなかったのです。オランダやデンマークはそうした方向に進んできたのです。
■企業に頼るセーフティネットから社会全体で支えるセーフティネットへ
企業・家族に頼るセーフティー・ネットのあり方を見直し、社会で支えるセーフティー・ネットにすることです。仕事をしなえば家も失う。会社を辞めたら職業訓練も終わり。会社依存の福祉は怖いのです。
派遣労働は、やはりどんな業種でも賃金引き下げに働いてしまった。均等待遇にしたうえで、正社員へのブリッジがないものは禁止とすべきです。
■労組は地域協議会の強化で影響力を
また、労働組合が政策決定力と監視力をつけないといけません。労働組合は今の企業別から地域労組をめざすべきです。
産業別をめざすべき、というのが昔だったが、いまは非正規が増えすぎたから地域労組を目指すしかない。
連合幹部に取材すると、もっと連合は地域協議会に予算を回すべきとおっしゃる方もおられます。さ
らにいえば、ストライキを長年やっていないので「埋蔵金」が1.2兆円もあるそうです。組合費はそもそもストで給料が入らなくなったときに備えて蓄えてあるものなのですから・・。
1000億円もあれば、非正規労働者の組織化が出来るのに、という意見もあるそうです。現実にはそうなっていないが、それを外部も後押しすべきなのです。
などでした。
■政権交代で言い訳は通用しなくなった
さて、民主党員・連合組合員としての感想は以下です。
民主党は一応、企業支援から家計支援への転換をマニフェストの基調として総選挙に圧勝しました。おおまかにいえば、均等待遇にしたうえで生活面のセーフティー・ネットは社会全体へという指向性です。とくにわたしより下の年代の若手党員には、この指向性を額面通り有権者に訴えてきた人間が多いとおもいます。
さらに、鳩山政権閣僚は、均等待遇にも前向きで、女性差別撤廃条約選択議定書の批准も前向きです。
また、正規労働者の労働組合員の中ではいままで、本音レベルでは、均等待遇への警戒感もありました。
「職務給で均等待遇にされたら、給料を低い方にあわされるだけではないか?」
「住宅ローンや子どもの学費はどうしてくれる?」
しかし、これからは福祉を企業頼みではなく、社会全体で支えることにすればいいのです。自民党政権下であれば社会全体で支える福祉を整備せずに、「低いほうにあわせる」ということになりかねないという言い訳も通用しましたが、そうはいかなくなります。
もちろん。財政運営で藤井財務大臣、平野官房長官ら緊縮財政派が力が強い。やはり、きちんと負担できる方から負担していただき、それを社会全体で支えるセーフティー・ネットにあてる方向にしないとらちがあかないでしょう。
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以下の与党各党も参考に
「建設的野党」日本共産党
解散・総選挙にのぞむ基本的立場(日本共産党)
by hiroseto2004
| 2009-11-15 09:45
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