労働運動や政治運動ではなく暴発で世の中が変わるなら国の恥【追記あり】
2010年 06月 22日
広島市南区のマツダ宇品工場や隣接する府中町の本社工場で引寺利明(ひきじ・としあき)被疑者の車(マツダ製)が約11人はねる事件が発生。1人が亡くなりました。
広島市内の30代男性は「自分の家から数分のところに被疑者の家があり、現在報道陣で埋まっている。警察も家宅捜査に入っているようで、大変な騒ぎだった」と興奮したように語っていました。
また、広島市南区内に勤務する20代女性は「近所で起きた事件でびっくりした。何があったかわからないが、怒りを向ける方向が違うと思う。」。一方で、「広島でも、正直に言って、いつか起きると思っていた。」(40代男性)という声もありました。また「秋葉原事件に続いてこういう事件が起きてしまったということは、民主党政権の怠慢とみなされても仕方がない」、という声もありました。
■秋葉原事件を思い出す
被疑者は、3月から4月に契約社員としてマツダに勤務し、「会社に恨みがあった」、と報道されています。
思い出されるのは2008年6月におきた加藤智大被告人(当時25)による秋葉原事件。
トヨタの車体を製造する会社に派遣されていた加藤被告人は、会社とは無関係な秋葉原でレンタカーで突入し、惨劇を引き起こした。引寺被疑者は、会社に乱入し、人々をはねた。
もちろん、何があったにせよ、はねられた社員個々人が悪いわけではないのであり、被疑者の行動は法により裁かれねばなりません。
■凶行でやっと世の中が動くのは本来は恥
ただ、わたしは、秋葉原事件の後、派遣法改正の動きがいったん加速したことを思い出します。あの後、広島での講演会でも雨宮処凜さんが「こういう形で世の中が動くのは嫌だ」とおっしゃったのを記憶しています。
みんなで「生きにくさ」を考えよう! 雨宮処凛さんが広島で初の講演
http://www.news.janjan.jp/area/0809/0809056369/1.php
「労働運動や政治運動ではなく、凶行により世の中が動く」のは決して民主主義国としては、誉められたことではない。はっきりいえば恥です。
精一杯の当事者と「他人事」と感じる他者
もちろん、今の日本には以下のような情けない状況がある。
当事者は当事者で、生きるのに精一杯で、他人を省みる余裕がない場合も多い。
一方、当事者以外は、「俺には関係ない」「自己責任だろ」などと切り捨てて済ませがちである。そして、個人が暴発するまで、問題が放置される。そんな状態が続いてきたことが大問題である。
残念ながら、我が民主党でも、いわゆる自己責任論にとらわれた議員なりスタッフなりが多いのです。党を内側から見ていてそれは痛感する。
労働運動にも問題はあった。
派遣社員追いかけ、労組がビラを奪う マツダ正門前の寒々しい光景−JanJanニュース
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812073041/1.php
2008年末の派遣切り騒動の後、共産党がマツダ正門前でビラを配っていたら、「組合役員が、ビラを受け取った人(派遣切りに遭った派遣社員)を追いかけて、ビラをひったくった」のです。別にわたしは共産党を支持するわけではないのですが(参院選では与野党として激しくぶつかり合います)ビラをひったくるなんて、厳密に刑法を適用したら犯罪になります。
ただ、連合の一般組合員にも、いざ非正規社員の話となれば、冷淡な方が少なくないのが現実ではないか?実は組合幹部(いわゆるダラ幹と揶揄されている)だけの問題ではない、と思います。
例えば、地方(北海道や沖縄がとくに多い)で、仕事がなくなり、仕方なく東京や名古屋、広島にやってきて、いわゆる(違法派遣を含めた)ブラックな職場で働かざるを得なくなった人も多い、しかし、そういう事情を知らない人は、「甘えている」「そんなところで働かなければ良いのでは?」などという認識になるのでしょう。
もちろん、年配の正社員や公務員でも、子どもが非常勤職員や派遣しか就職口がなかったことなどを機会に問題意識を持っていただいている方もおられます。
「自分は多少恵まれているからいいや」では済ませてはいけないのですが、現実にはそうなりがちである。もちろん、政権が代わり、雇用保険適用拡大、高校授業料無償化など、変化は見られる。
労働運動でも変化は起きています。広島電鉄では非正規社員と正社員の均等待遇に踏み出し、「広電方式」として市長にも紹介されるなど、名高い。
県庁でも、非常勤労組ができた。事件現場となってしまったマツダでも7月から契約社員を労組に組織しようと方針転換したばかりである。(実際には、共産党や独立系ユニオンなどの浸透を恐れた面が多分にあるでしょうが。)
でも、結局、残念ながらまだまだです。20年の遅れを取り戻すのには時間が掛かる。
■「何のための政権交代だったのか?」といわれないために
たしかに、自民党時代には、下手に「同一価値労働同一賃金」などをいえば「正社員の待遇を非正社員に合わされるだけでは?」という疑心暗鬼はあったでしょう。
しかし、政権交代が起きた今、そんな屁理屈を振り回している場合ではない。 同一価値労働同一賃金(むしろ、派遣などは不安定な分、手取り時給は二倍くらいでいい。)を行う。お金持ちに甘く、課税ベースも小さくなった所得税を見直す。
そのかわり、正社員も、教育や医療、住宅などの負担は減る。そういう社会に転換させねばならない。
もう、「官僚や議員が企業を保護する。そして企業が世帯主を保護する。」なんてモデルは、成り立たない。高度成長期からバブルまでの遺物です。
秋葉原やマツダで事件があったからどうこうではない。 やるべきことをサボっていた。それをきちんと処理すべきである、と感じます。
正直、経営者も政治家も、労働組合も、「冷戦+高度成長」という組み合わせの時代感覚から抜け出していないのが実態でしょう。
だから、経営者は、21世紀になっても、いつまでもアメリカへの輸出に依存する仕組みを、労働者を使い捨てにして維持しようとした。
大きな労働組合も、2008年末の段階で、「派遣切りにあった人を追いかけて共産党のビラを奪う(反共)」方に力を入れてしまっていた実態はあった。
繰り返します。政治や社会を通じ、体系だって問題を解決できるような意識にしないといけません。個人の暴発に慌てて対応するのは、国の恥である。
無念さにじませ「真相を解明」 社長、哀悼の意
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201006220412.html
【税制改革】「財政再建のための」「消費税増税」はいけない
よくまとまった「財政のしくみがわかる本」岩波ジュニア新書の感想
「生活第一」を忘れないで【民主党マニフェスト・成長戦略】
「菅・神野」と「小泉・竹中」の違い
地方の一民主党員は菅政権をこう見る
日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠(kojitakenの日記)
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広島市内の30代男性は「自分の家から数分のところに被疑者の家があり、現在報道陣で埋まっている。警察も家宅捜査に入っているようで、大変な騒ぎだった」と興奮したように語っていました。
また、広島市南区内に勤務する20代女性は「近所で起きた事件でびっくりした。何があったかわからないが、怒りを向ける方向が違うと思う。」。一方で、「広島でも、正直に言って、いつか起きると思っていた。」(40代男性)という声もありました。また「秋葉原事件に続いてこういう事件が起きてしまったということは、民主党政権の怠慢とみなされても仕方がない」、という声もありました。
■秋葉原事件を思い出す
被疑者は、3月から4月に契約社員としてマツダに勤務し、「会社に恨みがあった」、と報道されています。
思い出されるのは2008年6月におきた加藤智大被告人(当時25)による秋葉原事件。
トヨタの車体を製造する会社に派遣されていた加藤被告人は、会社とは無関係な秋葉原でレンタカーで突入し、惨劇を引き起こした。引寺被疑者は、会社に乱入し、人々をはねた。
もちろん、何があったにせよ、はねられた社員個々人が悪いわけではないのであり、被疑者の行動は法により裁かれねばなりません。
■凶行でやっと世の中が動くのは本来は恥
ただ、わたしは、秋葉原事件の後、派遣法改正の動きがいったん加速したことを思い出します。あの後、広島での講演会でも雨宮処凜さんが「こういう形で世の中が動くのは嫌だ」とおっしゃったのを記憶しています。
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秋葉原の無差別殺傷事件については「なかなか動かなかった労働問題が、これによって注目されたが、運動ではなく、暴力がそれを動かす直接の契機になったのはすごく嫌だった」と振り返りました。
筆者は「そもそも憲法25条を守るのが公務員の責務である。それがやりにくくなっている状況に憤りを覚えている。それが私の原点。政治家や官僚ら公務員が、自分に脅威が及びそうになってから動き出すというのは情けないことだ」と申しました。
「労働運動や政治運動ではなく、凶行により世の中が動く」のは決して民主主義国としては、誉められたことではない。はっきりいえば恥です。
精一杯の当事者と「他人事」と感じる他者
もちろん、今の日本には以下のような情けない状況がある。
当事者は当事者で、生きるのに精一杯で、他人を省みる余裕がない場合も多い。
一方、当事者以外は、「俺には関係ない」「自己責任だろ」などと切り捨てて済ませがちである。そして、個人が暴発するまで、問題が放置される。そんな状態が続いてきたことが大問題である。
残念ながら、我が民主党でも、いわゆる自己責任論にとらわれた議員なりスタッフなりが多いのです。党を内側から見ていてそれは痛感する。
労働運動にも問題はあった。
派遣社員追いかけ、労組がビラを奪う マツダ正門前の寒々しい光景−JanJanニュース
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812073041/1.php
2008年末の派遣切り騒動の後、共産党がマツダ正門前でビラを配っていたら、「組合役員が、ビラを受け取った人(派遣切りに遭った派遣社員)を追いかけて、ビラをひったくった」のです。別にわたしは共産党を支持するわけではないのですが(参院選では与野党として激しくぶつかり合います)ビラをひったくるなんて、厳密に刑法を適用したら犯罪になります。
ただ、連合の一般組合員にも、いざ非正規社員の話となれば、冷淡な方が少なくないのが現実ではないか?実は組合幹部(いわゆるダラ幹と揶揄されている)だけの問題ではない、と思います。
例えば、地方(北海道や沖縄がとくに多い)で、仕事がなくなり、仕方なく東京や名古屋、広島にやってきて、いわゆる(違法派遣を含めた)ブラックな職場で働かざるを得なくなった人も多い、しかし、そういう事情を知らない人は、「甘えている」「そんなところで働かなければ良いのでは?」などという認識になるのでしょう。
もちろん、年配の正社員や公務員でも、子どもが非常勤職員や派遣しか就職口がなかったことなどを機会に問題意識を持っていただいている方もおられます。
「自分は多少恵まれているからいいや」では済ませてはいけないのですが、現実にはそうなりがちである。もちろん、政権が代わり、雇用保険適用拡大、高校授業料無償化など、変化は見られる。
労働運動でも変化は起きています。広島電鉄では非正規社員と正社員の均等待遇に踏み出し、「広電方式」として市長にも紹介されるなど、名高い。
県庁でも、非常勤労組ができた。事件現場となってしまったマツダでも7月から契約社員を労組に組織しようと方針転換したばかりである。(実際には、共産党や独立系ユニオンなどの浸透を恐れた面が多分にあるでしょうが。)
でも、結局、残念ながらまだまだです。20年の遅れを取り戻すのには時間が掛かる。
■「何のための政権交代だったのか?」といわれないために
たしかに、自民党時代には、下手に「同一価値労働同一賃金」などをいえば「正社員の待遇を非正社員に合わされるだけでは?」という疑心暗鬼はあったでしょう。
しかし、政権交代が起きた今、そんな屁理屈を振り回している場合ではない。 同一価値労働同一賃金(むしろ、派遣などは不安定な分、手取り時給は二倍くらいでいい。)を行う。お金持ちに甘く、課税ベースも小さくなった所得税を見直す。
そのかわり、正社員も、教育や医療、住宅などの負担は減る。そういう社会に転換させねばならない。
もう、「官僚や議員が企業を保護する。そして企業が世帯主を保護する。」なんてモデルは、成り立たない。高度成長期からバブルまでの遺物です。
秋葉原やマツダで事件があったからどうこうではない。 やるべきことをサボっていた。それをきちんと処理すべきである、と感じます。
正直、経営者も政治家も、労働組合も、「冷戦+高度成長」という組み合わせの時代感覚から抜け出していないのが実態でしょう。
だから、経営者は、21世紀になっても、いつまでもアメリカへの輸出に依存する仕組みを、労働者を使い捨てにして維持しようとした。
大きな労働組合も、2008年末の段階で、「派遣切りにあった人を追いかけて共産党のビラを奪う(反共)」方に力を入れてしまっていた実態はあった。
繰り返します。政治や社会を通じ、体系だって問題を解決できるような意識にしないといけません。個人の暴発に慌てて対応するのは、国の恥である。
無念さにじませ「真相を解明」 社長、哀悼の意
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201006220412.html
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by hiroseto2004
| 2010-06-22 18:17
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