司法修習生の「借金制」に反対!市民集会
2010年 09月 20日
司法の未来が危ない!司法修習生の「借金制」に反対、広島でも集会・パレード
2010年 9月 20日 23:17《広島》 【取材ニュース】 <人権> <国会> <市民活動> <法律・裁判>
さとうしゅういち
http://www.janjanblog.com/archives/16213
お彼岸の入りである9月20日、広島市中区平和公園近くの中国新聞社ホールにおいて、「司法修習生の『借金制』に反対する緊急市民集会」が、開催されました。
1947年以降、裁判官、検察官、弁護士(法曹)を志し、司法試験に合格した司法修習生には、アルバイトが禁止される代わりに、給費制と言って、公務員の初任給程度の給料が払われています。
ところが、2004年の一連の司法改革を巡る法「改正」の中で廃止が決定。2010年11月1日から、生活費が必要な修習生にお金を最高裁判所が貸し出す「貸与制」に切り替わります。貸与といえば聞こえがいいが、要は「借金制度」です。
これに対して、給費制を維持しようと、日本弁護士連合会や市民団体、労働団体などが各地で集会を開催。この日は、広島市で広島弁護士会が主催して開催されました。
開会挨拶をした、大迫唯志広島弁護士会会長は、東京での集会で出た市民の「(納税者である)自分たちが、給費制維持を訴えるのは、これから弁護士になる人に、公益を担う自覚を持って欲しいからこそなのだ」という声を紹介しました。
また、日弁連の緊急対策本部の釜井英法事務局長が、基調報告。その後、ザ・ニュースペーパーによる給費制廃止による影響を面白おかしく描いたコントがありました。
さらに、日弁連の宇都宮健児会長によるビデオメッセージがありました。
これらの論客による報告やコント、メッセージによると、以下のような問題が司法改革後起きていることがよくわかりました。
1990年代後半から小泉政権時代にかけて進んだ「司法改革」の表向きの看板は「多様な人が法曹の担い手になれるように」ということでした。ロースクール(法科大学院)には、3割程度は法学部以外の出身者、また半分程度は社会人経験者が当初は入っていたそうです。
ところが、その目論見は見事に外れました。すなわち、社会人経験者は年々減少し、今は2割台に落ち込んだ。他学部出身者もどんどん減った。
さらに、ロースクールに通っている間に、奨学金を借りて借金を抱える修習生も増えました。だんだん、裕福な家庭の人しか、司法を志せなくなる状態になりつつあり、現に、司法試験志望者は年々減り続けています。
このように「多様な人材を法曹界に採り入れる」という狙いはものの見事に外れています。その上、給費制まで廃止になれば、法曹になるには、裕福な家庭の出身者であるか、さもなくば、多額の借金を抱えるか、しかなくなる。前者であれば、庶民感覚がどうしても欠落してしまいがちである。後者なら、余裕がないので、公益的な仕事を敬遠してしまいかねない。刑事事件や消費者問題、薬害、公害など人権に関わることが置き去りになり、「お金になりそうなこと」が優先される。その結果、庶民の人権が守られなくなってしまいかねない危機にあるのです。
なお、今まで、なぜ、弁護士会がこんな大事な問題を放置していたか、といえば、2004年当時は反対はしたが、世論の喚起が十分できなかったこと。その後、組織の中でも諦めが広がったことがあるそうです。しかし、「おかしいことはおかしいと声をあげよう」という、宇都宮健児さんが、日弁連の会長になって、雰囲気は一変しました。「残り時間」わずか7ヶ月と言う今年4月から、給費制維持へ向けた運動を開始。
署名集めや集会、デモなどを各地で行うようになっているそうです。お陰で、民主党の法務部門会議で、給費制維持への方向性が打ち出されました。
しかし、まだまだ、油断はできません。国会できちんと法案が可決されること、予算面でも、財務省を説得すること(最終的には押さえ込むこと?)など、限られた時間の中でハードルは低いとはいえないそうです。
給費制維持へ積極的な国会議員も、「世論をどんどん高めて欲しい。」とおっしゃっているそうです。
その後、国会議員や、市民から意見表明がありました。
わたしが所属する民主党広島県衆議院第7選挙区総支部長の和田隆志衆院議員(政策秘書が代理)は、「個々の経済的事情により、(法曹になれるかどうかが)左右されないようにするのが、政治の使命」と決意を表明しました。
その他、広島県内のほとんどの国会議員から、メッセージがあったことが報告されました。
ロースクールの在学生からは「現在、奨学金で、1000万円以上、高校時代から借金がある」「父の仕事関係のトラブルなど見てきた。そういうことを活かせる弁護士になりたい」「検事になるなら、被疑者がいい方向に立ち直れるような仕事がしたい。」と現状報告がありました。
また、多重債務者救済のための市民団体の代表や、B型肝炎訴訟の原告団長、消費者団体の代表からも、ときには手弁当で、被害者の人権のために弁護士が仕事をしてくれることへの感謝の意が示されました。それとともに、給費制廃止が、こうした団体の活動に悪影響を与えることへの懸念が表明されました。
参加した市民や労働者からも、「ロースクールの負担そのものを軽減すべきだ。」などの意見が出されました。さらに、一部新聞で「経済的に裕福な弁護士になるための司法修習生にお金を投入する必要はない」という趣旨の主張がされていることに対しては「検察官や裁判官はとくに若いうちは給料が低い。法曹が裕福になるための資格、ということ自体が前提を誤っている。検察官や裁判官は、多額の奨学金を返すことができるのだろうか?裕福な家庭の人しか裁判官や検察官にならないか、逆に、経済的に困窮した裁判官や検察官が賄賂を受け取るなどと言うこともおきかねない。」などという反論がされました。
その上で「弁護士とは、正義と人権を守るのが務め。この給費制維持の運動を通じ、その原点にかえると言う意味で、襟を正すことも必要」という意見も参加した弁護士から出されました。
わたしも、まったくそのとおりだと思います。「儲ける弁護士」を前提に「給費制」」を廃止するべきではない。
むしろ、いまや、貧困問題も拡大している。そういう中で「正義と人権を守る」弁護士の原点を見直しつつ、給費制は維持し、さらに、ロースクール負担軽減も進めるべきだ、と考えます。
そして、そもそも、人々の進路が、親の経済力によって決まってしまう今の日本のあり方を見直す必要がある、と思います。民主党が政権を頂いたのも、そういうことへの期待、というよりは、あまりに世襲を横行させ、親の地位や経済力で進路が決まってしまうような世の中にした前政権がひどすぎた、ということなのでしょう。
この給費制維持を出発点に、もう一度、「個々の経済的事情により、(法曹になれるかも含めた進路選択が)左右されないようにする」日本を作りたいものです。
関連リンク
ビギナーズ・ネット司法修習生の給費制維持のための若手ネットワーク
http://www.beginners-net.com/
司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会
http://egg-supporters.net/
2010年 9月 20日 23:17《広島》 【取材ニュース】 <人権> <国会> <市民活動> <法律・裁判>
さとうしゅういち
http://www.janjanblog.com/archives/16213
お彼岸の入りである9月20日、広島市中区平和公園近くの中国新聞社ホールにおいて、「司法修習生の『借金制』に反対する緊急市民集会」が、開催されました。
1947年以降、裁判官、検察官、弁護士(法曹)を志し、司法試験に合格した司法修習生には、アルバイトが禁止される代わりに、給費制と言って、公務員の初任給程度の給料が払われています。
ところが、2004年の一連の司法改革を巡る法「改正」の中で廃止が決定。2010年11月1日から、生活費が必要な修習生にお金を最高裁判所が貸し出す「貸与制」に切り替わります。貸与といえば聞こえがいいが、要は「借金制度」です。
これに対して、給費制を維持しようと、日本弁護士連合会や市民団体、労働団体などが各地で集会を開催。この日は、広島市で広島弁護士会が主催して開催されました。
開会挨拶をした、大迫唯志広島弁護士会会長は、東京での集会で出た市民の「(納税者である)自分たちが、給費制維持を訴えるのは、これから弁護士になる人に、公益を担う自覚を持って欲しいからこそなのだ」という声を紹介しました。
また、日弁連の緊急対策本部の釜井英法事務局長が、基調報告。その後、ザ・ニュースペーパーによる給費制廃止による影響を面白おかしく描いたコントがありました。
さらに、日弁連の宇都宮健児会長によるビデオメッセージがありました。
これらの論客による報告やコント、メッセージによると、以下のような問題が司法改革後起きていることがよくわかりました。
1990年代後半から小泉政権時代にかけて進んだ「司法改革」の表向きの看板は「多様な人が法曹の担い手になれるように」ということでした。ロースクール(法科大学院)には、3割程度は法学部以外の出身者、また半分程度は社会人経験者が当初は入っていたそうです。
ところが、その目論見は見事に外れました。すなわち、社会人経験者は年々減少し、今は2割台に落ち込んだ。他学部出身者もどんどん減った。
さらに、ロースクールに通っている間に、奨学金を借りて借金を抱える修習生も増えました。だんだん、裕福な家庭の人しか、司法を志せなくなる状態になりつつあり、現に、司法試験志望者は年々減り続けています。
このように「多様な人材を法曹界に採り入れる」という狙いはものの見事に外れています。その上、給費制まで廃止になれば、法曹になるには、裕福な家庭の出身者であるか、さもなくば、多額の借金を抱えるか、しかなくなる。前者であれば、庶民感覚がどうしても欠落してしまいがちである。後者なら、余裕がないので、公益的な仕事を敬遠してしまいかねない。刑事事件や消費者問題、薬害、公害など人権に関わることが置き去りになり、「お金になりそうなこと」が優先される。その結果、庶民の人権が守られなくなってしまいかねない危機にあるのです。
なお、今まで、なぜ、弁護士会がこんな大事な問題を放置していたか、といえば、2004年当時は反対はしたが、世論の喚起が十分できなかったこと。その後、組織の中でも諦めが広がったことがあるそうです。しかし、「おかしいことはおかしいと声をあげよう」という、宇都宮健児さんが、日弁連の会長になって、雰囲気は一変しました。「残り時間」わずか7ヶ月と言う今年4月から、給費制維持へ向けた運動を開始。
署名集めや集会、デモなどを各地で行うようになっているそうです。お陰で、民主党の法務部門会議で、給費制維持への方向性が打ち出されました。
しかし、まだまだ、油断はできません。国会できちんと法案が可決されること、予算面でも、財務省を説得すること(最終的には押さえ込むこと?)など、限られた時間の中でハードルは低いとはいえないそうです。
給費制維持へ積極的な国会議員も、「世論をどんどん高めて欲しい。」とおっしゃっているそうです。
その後、国会議員や、市民から意見表明がありました。
わたしが所属する民主党広島県衆議院第7選挙区総支部長の和田隆志衆院議員(政策秘書が代理)は、「個々の経済的事情により、(法曹になれるかどうかが)左右されないようにするのが、政治の使命」と決意を表明しました。
その他、広島県内のほとんどの国会議員から、メッセージがあったことが報告されました。
ロースクールの在学生からは「現在、奨学金で、1000万円以上、高校時代から借金がある」「父の仕事関係のトラブルなど見てきた。そういうことを活かせる弁護士になりたい」「検事になるなら、被疑者がいい方向に立ち直れるような仕事がしたい。」と現状報告がありました。
また、多重債務者救済のための市民団体の代表や、B型肝炎訴訟の原告団長、消費者団体の代表からも、ときには手弁当で、被害者の人権のために弁護士が仕事をしてくれることへの感謝の意が示されました。それとともに、給費制廃止が、こうした団体の活動に悪影響を与えることへの懸念が表明されました。
参加した市民や労働者からも、「ロースクールの負担そのものを軽減すべきだ。」などの意見が出されました。さらに、一部新聞で「経済的に裕福な弁護士になるための司法修習生にお金を投入する必要はない」という趣旨の主張がされていることに対しては「検察官や裁判官はとくに若いうちは給料が低い。法曹が裕福になるための資格、ということ自体が前提を誤っている。検察官や裁判官は、多額の奨学金を返すことができるのだろうか?裕福な家庭の人しか裁判官や検察官にならないか、逆に、経済的に困窮した裁判官や検察官が賄賂を受け取るなどと言うこともおきかねない。」などという反論がされました。
その上で「弁護士とは、正義と人権を守るのが務め。この給費制維持の運動を通じ、その原点にかえると言う意味で、襟を正すことも必要」という意見も参加した弁護士から出されました。
わたしも、まったくそのとおりだと思います。「儲ける弁護士」を前提に「給費制」」を廃止するべきではない。
むしろ、いまや、貧困問題も拡大している。そういう中で「正義と人権を守る」弁護士の原点を見直しつつ、給費制は維持し、さらに、ロースクール負担軽減も進めるべきだ、と考えます。
そして、そもそも、人々の進路が、親の経済力によって決まってしまう今の日本のあり方を見直す必要がある、と思います。民主党が政権を頂いたのも、そういうことへの期待、というよりは、あまりに世襲を横行させ、親の地位や経済力で進路が決まってしまうような世の中にした前政権がひどすぎた、ということなのでしょう。
この給費制維持を出発点に、もう一度、「個々の経済的事情により、(法曹になれるかも含めた進路選択が)左右されないようにする」日本を作りたいものです。
関連リンク
ビギナーズ・ネット司法修習生の給費制維持のための若手ネットワーク
http://www.beginners-net.com/
司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会
http://egg-supporters.net/
by hiroseto2004
| 2010-09-20 17:40
| 司法
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