JR西日本社長起訴に疑問を呈する論考(上岡直見さん)
2010年 12月 23日
福知山線の脱線事故で、業務上過失致死傷罪の起訴事実で起訴されている山崎元社長。
刑事責任を問うのは無理ではないか?と交通学者の上岡直見さんは疑問を呈しておられます。
わたしも「山崎被告人をやっつけてしまえ」という風潮には反対です。「あくまで、被告人は推定無罪」。
その上で、背景まで踏み込むなら踏む込むべきでしょう。それこそ、国鉄民営化後、実は外資に株が2割以上保有されていること、一般国民(個人)保有は4分の1に過ぎないことなどです。
http://www.janjanblog.com/archives/26971
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JR西日本社長起訴の疑問
2010年 12月 23日 15:24<法律・裁判>
上岡直見
◎「業務上過失」は成立しない
2005年4月25日の福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われた被告(JR西日本幹部)の初公判が、2010年12月21日に神戸地裁で開かれた。たしかにJR幹部の道義的責任は免れないが、刑事責任を問うのはいかにも無理がある。当然ながら業務上過失罪の成立には、事故を予測できた可能性(予見可能性)と事故を防ぐ義務(結果回避義務)が要件となる。筆者の評価では、これらはいずれも無理であると考えられる。
翌日には、事故列車に乗務していた車掌がJRに対して、種々の不利益・苦痛を被ったとして損害賠償を求めた別件の訴訟に対する判決があった。別件の民事訴訟ではあるが刑事訴訟にも判決が引用されることは当然考えられるので、影響は大きいと考えられる。この訴訟では、原告側がJRが安全設備(列車自動停止装置・以下「ATS」)の整備を怠ったことが事故の原因であると主張したのに対して、裁判所は「事故の発生は予測できず、ATSを現場に設置する義務はなかった」との判断を示した。
ここで大きな疑問は、鉄道事故に比べて桁ちがいに多くの人命が失われている道路交通事故について、いったい誰が責任を取っているのかという点である。鉄道事故と道路交通事故では、人命の重さに差があるのだろうか。一般道でも高速道でも「事故多発箇所」などという看板が至るところにみられる。つまり充分な「予見可能性」がある。ところが警察や道路管理者は、看板を立てただけで、あとは個々のドライバーの問題として知らん顔をしているのは怠慢ではないだろうか。
電車の運転資格(正確には「動力車操縦免許」)を取得し一人で営業列車を運転するまでにはかなりの訓練・経験を必要とする。その前提でもなおATSを設置しなかったことが結果回避義務を怠ったとするのであれば、1か月も教習所に通えばほとんど誰でも免許が取れてしまう自動車こそ、なおさら安全システムによるバックアップが必要ではないか。歩道がない狭い道路を保育園児が歩いてしても、アクセルを踏めばいくらでもスピードが出てしまう現在の自動車は、本質的な欠陥システムである。
道路上の危険箇所において、自動車の速度を強制的に制限する方法を講じる技術は充分に実現可能であるのに「結果回避義務」を怠っている。もし今回、検察が主張するていどの「予見可能性」と「結果回避義務」でJR幹部に業務上過失罪が成立するのであれば、「事故多発箇所」という看板を出しただけで知らん顔をしている警察(公安委員会)幹部・道路管理者や、いかにマナーの低いドライバーでもアクセルを踏んだだけスピードが出てしまう自動車を製造している自動車メーカー幹部・に対しても同罪を適用しなければ、法の下の平等に著しく反するのではないか。
◎真の背景に迫れ
また今回の訴訟には別の側面がある。被害者は、単にJR幹部を有罪にしてほしいという感情ではなく、なぜこのような重大事故が起きたのかについて、「急カーブ」「速度の出し過ぎ」といった物理的な説明にとどまらず、それに至るすべての過程・すべての背景を公判を通じて解明してほしいという期待があるはずである。検察は「被告が危険性を予測しながらATSの整備に費用がかかることをおそれて設置を拒んだ」と主張している。しかし被告が危険性を予測していたことを前提とするならば、被告としても状況が許すかぎりATSを設置すべきと考えたはずである。
国鉄時代には、三河島事故(1962年)・鶴見事故(1963年)などを契機として、現在よりも旧式のシステムではあったが、列車の運転本数が少ないローカル線の隅々までATSが設置された。ではなぜ今回は違ったのか。国鉄再建管理委員会の委員長であった加藤寛氏は、著書で「その最大の実(行革のことを指す)は国鉄がJRに変わったことによって国民の「足」が国民の手に帰ってきたことである」と述べている(*1)。しかし国鉄の民営化はまた別の結果をもたらした。
JR西日本の、事故直前の株主構成の比率は次のようになっている(*2)。
金融機関 44.5%
証券会社 0.5%
法人 7.3%
外国人 22.7%
個人 24.9%
加藤寛氏のいう国民の手に帰ってきたのは4分の1だけである。このような経営環境の下で、従来、日本の公共交通に期待されてきた義務や機能を続けることができるだろうか。自らも企業経営者である岡将男氏は「経営者が目に見える効果のない安全投資に消極的になった原因の一つは、グローバル化である。こうした必要な投資の先送りが事故の遠因であったことは間違いないし、経営とはこうした目に見えない、論証できないものの効果を感じてするものである」と指摘している。
検察が事故に至るすべての過程・すべての背景を公判を通じて解明する意志があるならば、ここまで踏み込む必要がある。そうでなければ被害者の感情を自己の都合に利用して弄んだにすぎない。
◎鉄道の安全性を壊す高速無料化
さらに鉄道の安全に脅威となるのは、高速無料化である。まだ最終的に決定されていないが、現政権は「政策コンテスト」で国民にさんざん不評を買った高速無料化(*6)をまだ続けようとしている。すでに筆者は、高速無料化による鉄道ほか公共交通への影響の試算をいくつか行っているが(*3,4,5)これは公共交通の収益の低下をもたらす。当然、安全投資もその収益の範囲内で行わざるをえない鉄道事業者としては、安全投資に消極的にならざるをえない。
さらに、高速無料化により予想されるJR各社の減収額と、安全投資額を比べると次のようになる。詳細は筆者の過去記事(*7)に示したが、たとえばJR西日本(2009年)についていえば
営業収益 8549億円
安全関連投資 1596億円
高速無料化による減収予想 1816億円
となる。すなわち安全関連投資を上回る金額が、高速無料化で消えてしまうことを意味する。減収になったからといって安全投資をただちにやめるわけではないとしても、列車の運行に直接かかわらない安全投資は後回しにされることは当然である。鉄道の危険性は「急カーブで脱線」だけではない。トンネルや橋梁など各地で耐用年数に達した設備が至るところに存在する。また昨今指摘されるように、ホームからの乗客の転落防止のためのホームドア設置などの余裕はますます失われる。
繰り返すが、検察が今回の訴訟で主張するていどの「予見可能性」と「結果回避義務」で業務上過失罪が成立するならば、高速無料化が実施された後に、福知山事故と類似の事故がいずれかの鉄道で起きたならば、高速無料化も事故の原因として充分に指摘しうる。
(*1)加藤寛『国鉄改革はこうなる』ダイヤモンド社、1985年。
(*2)岡将男「福知山線事故と地方鉄道廃止の政策的背景」『交通権』交通権学会、2006年。
(*3)高速無料化関連の調査・研究(気候ネットワークホームページ)
http://www.kikonet.org/research/freeway.html
(*4)「民主党マニフェストで交通はどうなる?(上)高速道路無料化や暫定税率廃止は地方公共交通を破壊する恐れ」
http://www.news.janjan.jp/government/0907/0907300982/1.php
(*5)「民主党マニフェストで交通はどうなる?(下)物流コストの低減が国民全体に便益を及ぼすか効果は不明」
http://www.news.janjan.jp/government/0908/0908010065/1.php
(*6)http://seisakucontest.kantei.go.jp/kk/kk23.php
(*7)高速無料化は公共交通利用者に重大なリスク
http://www.janjanblog.com/archives/14822
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by hiroseto2004
| 2010-12-23 16:08
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