復刻版広島瀬戸内新聞 広島市政編 次期地方選挙・国政選挙を前に提言する(1)---2003・2・17
2014年 10月 24日
はじめに
基本的な考え方
交通・都市政策
産業政策
「人件費」は罪悪ではない
安心して暮らせる地域づくりこそ
「出口」「入り口」押さえ,社会の変革促す
はじめに
今年春は統一地方選挙が予定されています。広島県内でも、広島
県議選・市議選を始め多くの自治体の議会選挙があります。また、
前回総選挙から2年7ヶ月が経過し、いつ総選挙があってもおかしく
はありません。
選挙といっても、団体や地縁により投票する、などというのではなく、
どういう街にして行くか、県にして行くか。どういう日本にして行くか、
という視点が問われると思います。
その材料を、何回かにわけて、シリーズで提供して行ければ、と
考えています。第1回目は、とりあえず、環境問題や公共事業の問題、
産業政策について考えて行きたいとおもいます。
基本的な考え方
「いまあるものを生かす視点」に徹底して立ちます。新規投資は抑制し,
既存施設の補修や活用に力を注ぎます。
今後,国・地方とも今までに行ったインフラの修繕費用が膨れ上がる
ことが予想されます。新規投資を安易に行えば,これらの修繕費用が
出せないことも予想されます。逆にいえば,修繕(メンテナンス)だけで
相当な雇用が生み出されることが予想されます。
また,新規建設事業を頻繁に行えば,廃棄物が大量に出ることは避け
られません。砂などの採取も避けられません。海砂採取を禁止し,瀬戸
内海の環境を守るためにも,新規骨材の使用は抑制する必要があります。
新規施設を建設する場合は,寿命の長いものにします。住宅政策も
同様です。長く使い,事業者はメンテナンスやリフォームなどで収益
を上げるような経済の仕組みに変えます。
また、「今あるものを活かす」ためには、みんなで知恵を出し合うことが
不可欠です。がんがん、御金や資源を使うなら、力技で済みますが、
これからは知恵が重要です。住民自治の活性化が必要です。
住民投票により議会を補完すること、また広島市のような大都市なら
区議会を設けることも考えられます。市町村合併もあくまで住民自治の
視点でケースバイケースで考えます。
交通・都市政策
高速道路の新規建設はいったん凍結します。そのかわり,既存の道路
の通行料の無料化を検討します。このほうが,国民全体でみれば利益
になるし,劣悪な運送業界での労働条件改善に資することが期待でき
ます。
道路特定財源は廃止し,ガソリン税などは,環境税的な性格のものに
組替えます。税率は大気汚染や地球温暖化などの抑制などを総合的に
考えながら決めます。増税の場合は,消費税の減税などを行います。
一般道路については,右折レーンの設置等で対応できるものに附いては
新規道路建設を見送ります。
大都市圏では,自動車の都心部への流入をおさえ,クルマ優先から,人間・
自転車優先の環境都市を目指します。
それと関連して、自動車産業の再生可能・分散型エネルギーへの進出や、
自転車産業への進出を応援します。いまや、自転車は、世界での生産台数
は一億台。乗用車の2.5倍以上です。アメリカでも警官の乗り物として
見なおされています。
一方、エネルギー分野では、原発などの集中型エネルギー源から再生可能・
分散型エネルギーへのシフトが流れです。広島市は、未来エネルギー研究所を
設立することにしていますが、こうした流れをもっと徹底して進め、未来に
貢献したいものです。
農山村での交通については,ユニバーサルデザインの観点から議論を進
めます。どうすればだれもが移動する権利を保障できるか,という視点にたち,
撤退の自由を認めた鉄道法「改悪」の撤回などを検討します。
道路公団問題については,こうした視点から道路行政の「民主化」こそを求め
ます。「民営化」では何ら変わりません。「民主化」を行ったうえで,総合的な
視野で交通政策を論議していくべきです。
産業政策
2000年以降,循環型社会形成促進基本法などが施行されています。しかし,
まだまだゴミ問題は深刻です。企業の責任を強化し,ゼロ・エミッションを目指
します。具体的には,耐久消費財や住宅においては長持ちする製品を製造し,
事業者はメンテナンスで収益を上げる,解体すればリサイクルしやすいように
する,という方向にします。
使い捨てに近い商品や,食糧などについては,リサイクルを進めます。リサイ
クルしやすいような雑誌,土で分解されやすいような食器などです。し尿や生
ゴミを都市近郊の農山村で利用するよう,現在技術を活用して行います。
産業同士の連関により,ゴミをゼロに抑える工夫を行います。
経済は,既存のインフラを活かすことに知恵を絞ることで活性化を目指します。
また,「地元の人が地元の人の面倒を見る」産業,すなわち,福祉や教育,
環境などを盛んにすることで,地域のお金が地域に還元されるような経済
循環を作り出します。
わたしたちは,財政支出そのものを否定するものではありません。不況時の
財政赤字はやむを得ない部分があります。それにより,景気を安定化させる
機能があるからです。しかし,従来のようにエネルギー・資源大量浪費型産業
を前提とした産業を誘致するための基盤整備は,失敗すれば,長期的には
地域そのものには負担が残ります。地域が「投資」を回収できないのです。
「人件費」は罪悪ではない
人件費を罪悪視する向きもありますが、わたしは、こうした考えには否定的
です。下手な「投資的」経費の方が「失敗」に終りかねません。企業の来ない
工業団地、船の来ない港などです。
それよりは、最初から例えば少人数学級のためにきちんと正規の教員を
雇用する。介護保険でも、重度の人を中心にやはり施設に入りやすくする。
一方で自宅でも暮らしやすいように住宅改修費の支給限度額を引き上げ
たり、保健福祉サービスを充実させるなど考えられるでしょう。福祉や教育
は往々にして人に掛かる経費が多くなりますが、それは当然です。しかし、
地元の人が地元の面倒を見ますから、地元で御金の循環が生じます。
安心して暮らせる地域づくりこそ
また、それと関連して、安心して暮らせる地域づくりを進めます。
住宅も持ち家政策から、きちんとした公共住宅を老後に至るまで
保障する視座が求められると思います。今の政府の政策は、持ち家
重視の政策は放置しておいて、住宅金融公庫は廃止すると言うビジョン
をはなはだ欠いたものといわざるを得ません。
安心して住民が暮らせることは、消費の底入れにもつながります。また、
一方で、安心して働き、商売ができることにもつながります。わたしは「人
権なくして発展なし」ないし「人権なくして成長なし」と考えています。
「出口」「入り口」押さえ,社会の変革促す
それとともに,ゴミの「出口」「入り口」を押さえることで,ゴミ削減への
動きを進めます。具体的には,産業廃棄物の瀬戸内海への投棄禁止,
埋立ての禁止を瀬戸内法改正により行います。公有水面埋立て法の
廃止などを求めます。「入り口」については海砂の採取禁止などを即時
に行うことで対応します。
ゴミの「出口」を押さえることで,社会全体がゴミの削減へ向かわざるを
得ない状況を作り出すのです。広島県の産業廃棄物課税はその第1歩
です。やはり目標は、埋立ての原則禁止ではないでしょうか。
広島はゼロエミッション宣言をしています。また,現市長は「万人の故郷
を目指す」ことを平和宣言でも選挙公約でも掲げています。わたしは、
広島は,本稿で述べたような方向で,町作りを進めていけば,市長の
政策を具体化することが出来るのではないかと考えます。