日本のリベラル・左派による「格差是正」運動が強くならなかった背景とその弊害
2016年 03月 02日
【日本のリベラル・左派による「格差是正」運動が強くならなかった背景とその弊害】
日本の場合、格差是正の運動が最近（2000年代後半）まで強くはなりませんでした。イラク戦争以降、特に安保法の問題以降、若者の間にも復活してきた護憲・平和運動や、3.11以降の反原発運動、あるいは、1990年代の環境や情報公開、男女共同参画と言った運動に比べても弱いという感覚をわたしは持っています。
その背景はなにか？
第一に、日本が企業主義の福祉だったことがあります。国が個人に再分配を行うよりも、企業を通じたものに比重が置かれたからです。乱暴に言えば、「お父さんが大手企業正社員や正規公務員であれば家族の教育や医療も安泰。」という体制だったからです。従って、日本国民の意識として、福祉とは、国よりも企業（会社）に対して求めるものという感覚が根強かったわけです。
そのきっけかの一つは、学生運動の敗北です。いわゆる団塊世代の左翼のみなさんは、学費値上げ反対を主目標とした学生運動で敗北してしまった。それ以降、学費はうなぎのぼりになっていったのです。そのことが後々響いて、日本の大学生が奨学金地獄に苦しむことになったのです。
第二に、第一と関連して、労働組合の労働貴族化、無力化です。特に1980年代、金丸信（故人）は、「自公民」路線を進める一方で、日本社会党の田辺誠（故人、書記長、委員長を歴任）らと組んで、国鉄などの労働組合を無力化していきました。竹下・金丸の弟子の橋本龍太郎（故人）が運輸大臣として、国鉄労組の解体を完成しました。橋本は、のちに、自社さ政権の総理となり、社会党改め社民党の了承も得ながら、新自由主義的な格差拡大路線を1990年代に突き進んでいきます。（社民党は2006年党大会で当時を総括し、橋本も晩年には自らの失政を認めましたが）。労働組合の弱体化は、格差是正を訴える主体を弱体化させてしまいました。
第三に、１９９0年代のポストモダン思想と、それまでの近代を十分消化しきれていないいわゆる「ムラ社会」が結びついたことがあります。ポストモダン思想は、近代を十分に消化しきれていない日本においては、まるで、大手企業や国家と、一般市民・労働者が対等であるかのような幻想を生み出してしまいました。そして、一方で、「自分とは違う属性の人間には冷たい」ムラ社会的な雰囲気は依然健在でした。その結果、欧米でも他のアジア諸国でも見られないような珍妙な「自己責任論」がまかり通ることになります。これと関連して、さらに、「竹下・金丸」的なものへの批判が勢い余って、新自由主義に回収された側面もあります。言い換えれば、「国がやることはすべて悪」というイメージも「竹下・金丸」のせいで浸透してしまったのです。
第四に、「国民の生活が第一」を旗印に、格差是正のマニフェストを掲げた民主党政権のとん挫です。これは、痛かったと言わざるを得ません。しかし、その背景には、格差是正を求める運動が、民主党政権を支え切れず、民主党が新自由主義ゴリゴリの財務官僚・一部大手企業や、いまだに、「竹下・金丸」的な政治への幻想を捨てきれない地方のエリート層の挟撃を受ける中で、孤立してしまったこともあります。
こうしたことに加え、2000年代後半に、格差是正を求める運動が盛り上がったものの、2011年の３．１１後に、格差や貧困の問題が後景に引いてしまった感があります。
確かに、反原発運動が盛り上がったのは結構なことでした。一方で、「新自由主義かつ反原発」という人に遠慮する向きも、左派・リベラル内に生じたとも考えられます。反原発のためなら、他のことはどうでもいいという雰囲気さえもあった時代もありました。しかし、「反原発」一本の新党は2012年衆院選、2013年参院選にみられるように失敗に終わりました。
一方で、経済政策面では「竹下・金丸」の焼き直しともいえる安倍晋三さん率いる自民党が政権を奪還してしまったのです。
また、団塊ジュニアくらいだと、団塊世代が主導する（実際には団塊世代では自民党支持が多いのだが）左派への反感の勢い余って格差是正を求める主張の一部は「おおさか維新」「みんなの党」的な「世代間闘争」「シルバー民主主義打倒」「自治労打倒」的な流れに回収されてしまったのではないかと推測されます。
しかし、左派・リベラル派が、しっかりと格差是正に取り組まないと、安倍総理の「竹下・金丸」的な経済政策や、おおさか維新的な「シルバー民主主義打倒！」「自治労打倒！」的な流れが一定の支持を得て、結局、次期国政選挙でも憲法改悪ラインを「自公お」で確保、ということになりかねません。
その意味では、民・維両党の格差是正を求める予算組み替え動議に共産党も賛成しました。こういうことの積み重ねも小さいですが、実績にもなり、よかったのではないかと思います。
今後は、たとえば、介護の問題は、団塊世代の皆さんとって切実ですし、若手にとっては、介護労働者の待遇問題でもあります。そうした切り口で、年配者も若手もタグを組んで、安倍総理の暴走に歯止めをかけていくことが大事ではないでしょうか。
https://www.facebook.com/events/703367866447204/
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著者 さとうしゅういち（元広島市男女共同参画審議会委員／広島瀬戸内新聞社主）
Kindle 購入価格: ￥ 121
紙の本の長さ： 64 ページ
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さとうしゅういち (著), 広島瀬戸内新聞 (編集)Kindle 価格: 約￥ 121（１ドル）販売： Amazon Services International, Inc
第一に、日本が企業主義の福祉だったことがあります。
国が個人に再分配を行うよりも、企業を通じたものに比重が置かれたからです。
乱暴に言えば、「お父さんが大手企業正社員や正規公務員であれば
家族の教育や医療も安泰。」という体制だったからです。
従って、日本国民の意識として、福祉とは、国よりも企業（会社）に対して求めるものという感覚が根強かったわけです。
そのきっけかの一つは、学生運動の敗北です。いわゆる団塊世代の左翼のみなさんは、学費値上げ反対を主目標とした学生運動で敗北してしまった。それ以降、学費はうなぎのぼりになっていったのです。そのことが後々響いて、日本の大学生が奨学金地獄に苦しむことになったのです。
第二に、第一と関連して、労働組合の労働貴族化、無力化です。特に1980年代、金丸信（故人）は、「自公民」路線を進める一方で、日本社会党の田辺誠（故人、書記長、委員長を歴任）らと組んで、国鉄などの労働組合を無力化していきました。竹下・金丸の弟子の橋本龍太郎（故人）が運輸大臣として、国鉄労組の解体を完成しました。橋本は、のちに、自社さ政権の総理となり、社会党改め社民党の了承も得ながら、新自由主義的な格差拡大路線を1990年代に突き進んでいきます。（社民党は2006年党大会で当時を総括し、橋本も晩年には自らの失政を認めましたが）。
労働組合の弱体化は、格差是正を訴える主体を弱体化させてしまいました。
第三に、１９９0年代のポストモダン思想と、それまでの近代を十分消化しきれていないいわゆる「ムラ社会」が結びついたことがあります。ポストモダン思想は、近代を十分に消化しきれていない日本においては、まるで、大手企業や国家と、一般市民・労働者が対等であるかのような幻想を生み出してしまいました。
そして、一方で、「自分とは違う属性の人間には冷たい」ムラ社会的な雰囲気は依然健在でした。
その結果、欧米でも他のアジア諸国でも見られないような珍妙な「自己責任論」がまかり通ることになります。
これと関連して、さらに、「竹下・金丸」的なものへの批判が勢い余って、新自由主義に回収された側面もあります。言い換えれば、「国がやることはすべて悪」というイメージも「竹下・金丸」のせいで浸透してしまったのです。
第四に、「国民の生活が第一」を旗印に、格差是正のマニフェストを掲げた民主党政権のとん挫です。これは、痛かったと言わざるを得ません。
しかし、その背景には、格差是正を求める運動が、民主党政権を支え切れず、民主党が新自由主義ゴリゴリの財務官僚・一部大手企業や、いまだに、「竹下・金丸」的な政治への幻想を捨てきれない地方のエリート層の挟撃を受ける中で、孤立してしまったこともあります。
こうしたことに加え、2000年代後半に、格差是正を求める運動が盛り上がったものの、2011年の３．１１後に、格差や貧困の問題が後景に引いてしまった感があります。
確かに、反原発運動が盛り上がったのは結構なことでした。一方で、「新自由主義かつ反原発」という人に遠慮する向きも、左派・リベラル内に生じたとも考えられます。反原発のためなら、他のことはどうでもいいという雰囲気さえもあった時代もありました。しかし、「反原発」一本の新党は2012年衆院選、2013年参院選にみられるように失敗に終わりました。
一方で、経済政策面では「竹下・金丸」の焼き直しともいえる安倍晋三さん率いる自民党が政権を奪還してしまったのです。
また、団塊ジュニアくらいだと、団塊世代が主導する（実際には団塊世代では自民党支持が多いのだが）左派への反感の勢い余って格差是正を求める主張の一部は「おおさか維新」「みんなの党」的な「世代間闘争」「シルバー民主主義打倒」「自治労打倒」的な流れに回収されてしまったのではないかと推測されます。
しかし、左派・リベラル派が、しっかりと格差是正に取り組まないと、安倍総理の「竹下・金丸」的な経済政策や、おおさか維新的な「シルバー民主主義打倒！」「自治労打倒！」的な流れが一定の支持を得て、結局、次期国政選挙でも憲法改悪ラインを「自公お」で確保、ということになりかねません。
その意味では、民・維両党の格差是正を求める予算組み替え動議に共産党も賛成しました。こういうことの積み重ねも小さいですが、実績にもなり、よかったのではないかと思います。
今後は、たとえば、介護の問題は、団塊世代の皆さんとって切実ですし、若手にとっては、介護労働者の待遇問題でもあります。
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著者 さとうしゅういち（元広島市男女共同参画審議会委員／広島瀬戸内新聞社主）
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役人からヘルパーへ 医療・介護担当の行政マンが介護現場で働いて見えたもの [Kindle版
]さとうしゅういち (著)約３６１円（3ドル）
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□ヒロシマの心活かす政界再編
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電子書籍「広島瀬戸内新聞: エコでフェアな世界をヒロシマから」出版！
「イデオロギーの時代は終わった」のか？: 「安倍暴走」と貧困を招いた勘違い [Kindle版]
電子書籍「いま、ヒロシマからSEALDsへ伝えたいこと。」
もはや日本共産党しか残されていないのか？: 「安倍自民」暴走と「市民派」低迷の中で[Kindle版]
SNSが見られなくなる前に国民連合政府で安保法廃止を・・準地元・イオン祇園前で次期国政選挙へ向け、協力呼び掛け
https://www.youtube.com/watch?v=xK6tCMSRKzw&feature=youtu.be
９月２１日「諦めたら本当に安保法案が成立したことになる」さとうしゅういち、牛田で法案無効、自民政権打倒の呼びかけ
９月１１日安佐南区古市橋駅前街頭演説
7月27日南区出汐町交差点街頭演説
7月24日安佐南区梅林駅近く街頭演説
7月20日西区横川駅前街頭演説 安保法案廃案、海外派兵より被災者支援を
７月１７日古市橋駅前で安保法案衆院強行突破に抗議・安倍・自民党打倒呼びかけ
7月15日安保法案強行可決に抗議 さとうしゅういち緊急演説 広島駅新幹線口
6月29日広島市安佐南区古市橋駅前「海外派兵するなら総理から前線へ」「海外派兵より被災者支援」
6月2２日広島市東区広島駅新幹線口「海外派兵するなら総理から前線へ」
5月20日 広島市東区広島駅新幹線口 「爆心地出身・岸田外相はイランとの戦争後押しではなく仲立ち外交を」
5月7日 東区広島駅新幹線口街頭演説「家や球場でカープのプレイボールを見られる日本」「お年寄りに長生きを嘆かせない」
5月1日 中区県庁前メーデー街頭演説
統一地方選挙２０１５関連
2015年4月2日安芸郡府中町・さとうしゅういち街頭演説 「若者が希望を持てる世界こそテロ撲滅の道」
2015年4月2日 さとうしゅういち街頭演説 府中町庶民増税より格差是正・残業代ゼロではなくカープを家で楽しめる社会を
https://www.youtube.com/watch?v=xu1DCKuRDPc
2015年4月2日さとうしゅういち街頭演説安芸郡府中町 河辺たかふみ広島市長・中原ひろみ市議・つくだ守生県議で誰もが置きざりにされない広島を
2015年4月2日さとうしゅういち街頭演説安芸郡府中町 河辺たかふみ広島市長・中原ひろみ市議・つくだ守生県議で誰もが置きざりにされない広島を
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広島銀行 本店 3783741
さとうしゅういちネット 代表者 佐藤周一
by hiroseto2004
| 2016-03-02 21:59
| 反緊縮・格差是正
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