熊本県内で40カ所以上、指定避難所使えず
2016年 04月 24日
一連の地震で、避難所となっている建物に被害が出たり、周辺で土砂崩れのおそれがあったりして、熊本県内の少なくとも40か所の指定避難所が使えなくなっていることが分かりました。
NHKが23日から24日にかけて1000人以上の避難者がいる熊本県内の12の市町村に取材したところ、指定避難所のうち少なくとも40か所が使えなくなっていることが分かりました。
熊本市では避難所に指定されている建物で、壁が剥がれたり天井を支える部品が外れたりして25か所が使えなくなっています。このうち龍田西小学校は、今年度、開校したばかりで建物に被害はありませんでしたが、校庭や周囲のよう壁にひび割れが見つかり、よう壁が崩れるおそれがあるとして閉鎖されました。
また、益城町では、建物に被害が出て2か所が閉鎖されたほか、多くの人が避難している総合体育館でも、指定避難所のメインアリーナは天井や照明の一部が落下したため使用できなくなっています。
宇土市では避難所となる建物には被害がないものの、すぐ裏にある市役所が倒壊する危険性があるため閉鎖されました。
さらに八代市では、つり天井になっている学校の体育館2か所を念のため閉鎖するなど合わせて3か所が使えなくなり、南阿蘇村では周辺で雨による土砂崩れのおそれがあるとして1か所閉鎖され、避難者は別の施設に移動しました。このほか、宇城市と菊陽町でそれぞれ2か所、御船町、大津町、阿蘇市でいずれも1か所、指定避難所が使用できなくなっています。
各市町村によりますと、避難所となる建物に被害が出た34か所のほとんどは耐震化が完了していたということです。
指定避難所とは
指定避難所は東日本大震災をきっかけに設けられました。平成25年、災害対策基本法が改正され、緊急時に身を守る「避難場所」と、一定の期間滞在する「避難所」を区別したうえで、市町村があらかじめ指定しておくことになりました。
指定避難所の指定にあたっては、災害の影響が比較的少ない場所にあることや、食料や医薬品など生活関連物資を配布できることなど基準を満たしている必要があります。熊本県によりますと、先月30日の時点で県が把握しているだけで合わせて839か所が指定避難所になっています。
専門家「耐震診断や設計の検証が必要」
一連の地震の影響で、指定された避難所が使えなくなっていることについて、建物の耐震に詳しい東京大学生産技術研究所の中埜良昭教授は、「避難所として使う体育館などの建物は、地震による揺れで倒れないようにするだけでなく天井などの非構造部材の安全性も考慮して設計する必要がある。天井などの落下は東日本大震災でも見られ、少しずつ対策が進んでいるが、十分でないケースもある」と指摘しています。
そのうえで、「今回の地震による避難所の被害の状況を今後、詳しく調査し、耐震診断や建物の設計が適切だったか検証する必要がある」と話しています。