オバマ来広、正負の諸側面
2016年 05月 30日
アメリカのオバマ大統領が5月27日、広島に来られました。
そのことについての諸側面を、改めて総括したいと考えます。
第一に、現職のアメリカ大統領として初めて、平和公園を訪れた、ということです。
戦後すぐは、アメリカでは9割以上の人が原爆投下を容認していたそうです。
1995年段階でも、スミソニアン博物館で原爆展をしようとしたら、猛反対が起きた始末です。
そうした中では、そうはいっても、広島へ来たことは歴史的とは言えます。
第二に、原爆投下への謝罪はありませんでした。
結局は、現職大統領として許容される範囲に発言をとどめたということです。
ただし、これについては、被爆者の多くも謝罪は求めていない方が多いと言うこともあります。
それは原爆投下を容認しているのではなく「もう、自分たちのような思いをする人が二度と出ないで欲しい」という切実な思いなのです。
そして、謝罪を求めないことを良いことに、アメリカも、アメリカに追随する日本政府も、その延長線上に暴走している面もあるのではないか?そのことについては、忸怩たる思いがあります。
第三に、オバマ大統領自身が、今もアフガンやイラクやシリアで「対テロ戦争」の名の下に、市民も殺害している
ということです。
核兵器は使わなくとも、残虐な戦争は続けて居るではありませんか?平和公園に来るならぜひ、市民殺戮を止めていただきたいのです。
第四に、オバマ大統領自身が、プラハ演説でノーベル平和賞を受賞しながら、核兵器廃絶へ向けた成果をこの8年近くあまり上げられていないこと。そのことについて、謝罪をすべきではないか、という考え方もできます。
第五に、オバマ大統領と一緒にオスプレイまで広島市内まで来たことです。岩国基地にも立ち寄り、海兵隊員と自衛隊員を前に演説しましたが、沖縄での元海兵隊員による死体遺棄事件(現時点では)には言及はありませんでした。
すでに、広島市内を飛行する米軍機が激増しています。その流れを加速してしまいました。
日米地位協定を背景としたアメリカ軍によるやりたい放題という「既成事実」を岩国や広島におけるオバマ大統領の行動はますます固定化してしまったといえます。
他方、日本政府自身、先の大戦にしっかりと謝罪をしていません。特に、被害を受けた個々人に対してははなはだ不十分です。
そのことを背景に、中国などもことあるごとに「日本政府は原爆をネタに侵略者であった過去を消そうとしている。」などと非難するのです。
さらに、日本政府自身がアメリカと一緒になって核兵器禁止条約に後ろ向きです。
また、安倍総理は日米地位協定の見直しさえ求めていません。
日本が求めていないことを、わざわざアメリカが日本の意をくんでやってくれるかといえばそんなことはあり得ません。
オバマさん云々と言うより、そういう日本政府を認め続けた日本国民の問題でもあります。
そして、今回のオバマさんの来広が、安倍総理の支持率急上昇に一役買ってしまった。このことも、悪かったことの一つです。
ただ、繰り返しになりますが、とにかく、一人一人の戦争被害者、核被害者に向き合って、個人を大事にする政治を積み上げていくしかない。
戦争であろうと核実験であろうと、原発であろうと、一人一人の尊厳を大事にしていたらそんな無責任なことはできないからです。
「憎しみを乗り越えたヒロシマの心」と「エライ人に感動しただけの権威主義」の「紙一重に見られかねない」感
by hiroseto2004
| 2016-05-30 21:45
| 反核・平和
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