戦後初・74年ぶりの「戦時下選挙」 参院選を終えて
2016年 07月 10日
第24回参院選は、7月10日投開票されました。第二次世界大戦後初めて、1942年4月30日のいわゆる翼賛選挙以来74年ぶりの「戦時下」の国政選挙となりました。
既に、安倍総理は2015年1月、イスラエル国旗の前でイスラム国に宣戦布告。これに対して本格的な報復攻撃として、2016年7月1日、親日国のバングラディシュの市街地で日本人が殺害されるというテロが起きました。奇しくもいわゆる翼賛選挙の最中の4月18日に、アメリカ軍による本土への初空襲「ドゥーリットル空襲」が行われています。
民進党、共産党、社民党、生活の党などの野党と市民の連合は、2013年に当時の民主党・共産党・社民党・生活の党・野党系無所属が獲得した議席は上回る勢いです。
しかし、2010年に獲得していた改選議席からは大きく減らし、自公お心と無所属のいわゆる改憲派が3分の2を占める情勢となりました。
■一人区で健闘も勝ちきれず
野党・市民連合は、青森、岩手、宮城、山形、福島、新潟、長野、山梨、三重、大分、沖縄の一人区で勝利しました。11勝21敗と3分の1を超えました。
保守地盤が多い一人区での勝利は、野党共闘が一定の成果を上げたことを示しています。
衆院選での与党を3分の2を切らせることへの展望も生まれました。
しかし、多くの選挙区で「勝ちきれなかった」ことは残念ですし、課題を残しました。
無党派層では自民党をリードしていても、案外、身内の野党のコアな支持者をまとめ切れていなかったケースも散見されます。準備不足もありますし、「身内票」は大丈夫という油断もあったのではないかと思います。
■大都市近郊の複数区で野党が苦戦
他方で、大都市近郊の複数区や、比例区では、野党が不振でした。
複数区では、大阪と兵庫で自公おが7議席を独占し、圧勝してしまいました。
阪神地区は、昔は、黒田了二知事や阪本勝知事などの革新知事を輩出した革新地盤でした。国政で言えば護憲の代名詞ともいえる土井たか子(故人)などを送ってきた地盤です。
しかし、最近では、おおさか維新が昔の革新票を根こそぎかっさらっていったとしか思えない開票結果になっています。
橋下さんの「自治労」「電力労組」からなる連合に断固たる姿勢で対決する姿勢がリベラル派にも一定程度受けているのです。
その遺産を引き継ぎつつ、松井代表は橋下さんの2013年のようには失言をせずに「身を切る改革」「大学学費無償化」などで「昔の革新票」を手堅くまとめていったのです。
「自民党や公明党は嫌いだが連合も嫌」という層を共産党と分け合い、その分、共産党もかつての地盤だった阪神では異常な苦戦を強いられています。
共闘が一定程度成果を上げた地方の一人区よりも、実は、大都会である阪神地区をどうするかが実は野党側にとっては大問題です。
また、マスコミの報道での与党優勢を聞いてあきらめてしまった有権者も多かったと思われます。懸念が現実のものとなってしまいました。
■岡田さんの首つながる民進、「優勢」に気の緩み共産
民進党は、岡田さんが進退を賭けた三重や山梨、長野、福島などで勝利。改選議席は減らしたものの首の皮一枚つながりました。
しかし、大都市部近郊の複数区、特に阪神地区での壊滅状態には息をのむばかりです。
民進の支持基盤の連合に遠慮しすぎて、熊本・大分大震災の直後に「川内原発停止」一つ打ち出せない状況が、「もうひとのび」を妨げているし、関西では「おおさか維新」の伸張を許しているのは間違いありません。
共産党は、マスコミでの「優勢」報道により、緩みが生じた感があります。藤野政策委員長の発言を巡る問題でも、そもそも当選一回の方をこの天下分け目の闘いの討論の部隊に投入するということに違和感を覚えました。これも気の緩みの一つではないかと思います。野球で言えば、優勝がかかった最終試合で、エースではなくてさほど実績のない新人を先発させるような話です。これは、疑問の「志位采配」でした。
■改憲発議の前に、海外派兵事前承認案の阻止を!
改憲発議ができる状態というふうに騒がれています。
それはもちろん大問題ですが、その前に、安保法が発動され、自衛隊がとくにイスラームの人たちを殺し、自分たちも命を落とすという事態になることを阻止しなければならないのではないでしょうか?
もし、そうした事態になれば、イスラム国は、バングラディシュからさらに日本本土へとテロの対象を拡大しかねない。それこそ、原発テロでも起こされたら打つ手はありません。
そもそも、イスラム国を空爆で打倒しようとしても無理な話です。
日本としては、武力行使に進む米英仏露からは距離を置き、貧困撲滅や若者に希望をもたらす社会造りなどで貢献すべきではないでしょうか?
■野党は「反緊縮」をしっかりと打ち出さないから負けた
野党はアベノミクスを批判しました。ただ、気になったことは、安倍総理の経済政策を全否定するイメージを与えるのはいかがなものでしょうか?
財政出動自体は、不況時の手法としては間違いではありません。
問題は使い道なのです。世界的には、左派の標準は財政出動しつつ、教育や福祉、再生可能エネルギーなどに資金を投入していく「反緊縮」です。
財源は、大手企業やお金持ちに公正にご負担頂くことです。
はっきり申し上げる。野党は「反緊縮」をしっかりと打ち出さないから負けたのです。
特に民進党についてはこのことが良く当てはまります。
何でもかんでも総理の反対を言えば良いというものではないのです。
■民進は川内原発停止くらい打ち出せ
民進党は、熊本・大分大震災の直後に、連合に遠慮したか、「川内原発停止」すら打ち出せませんでした。はっきり言って、これは、共闘相手の共産党や社民党などの足も引っ張った感があります。
川内原発停止を打ち出している三反園さんが鹿児島県知事選挙で勝ったのに、参院選鹿児島県選挙区では自民党が勝っています。結局の所、しっかりと、原発停止くらい打ち出せないから民進党は伸び悩むのです。
■打倒「おおさか維新」へ「東京都解体構想」はいかが?
野党にとり、おおさか維新は、言ってみれば目の上のたんこぶのような状況になっています。
しかし、おおさか維新を無力化する対案があります。
それは「一極集中是正には大阪都構想ではなく東京都解体を」というテーゼを打ち出すことです。
東京23区と東京府が1943年合併し、東京都になりました。以来、東京23区の住民は基礎的自治体を持っていないのです。区はあくまで都の内部団体です。
都民にとっても、現状は憲法違反を甘受しているのです。
東京一極集中是正のためにも、二三区民の自治権回復のためにも東京都を解体する。
そうしたことを打ち出すのはいかがでしょうか?
もうひとつ、おおさか維新を無力化するには、おおさか維新の格好の標的になっている連合が自ら襟を正すことです。連合(自治労や日教組、電力総連)が襟を正してしまえば、おおさか維新も肩すかしを食らった形になるでしょう。
■とはいえ、野党共闘には意義があった
1980年にいわゆる社公合意を契機に野党共闘が崩れて久しいものがあります。
今回の野党共闘も、はっきり申し上げて、タイミングとしては遅すぎました。すでに、安倍総理が戦争を始めてしまった後です。
それでも、危機感を持った市民の圧力で野党共闘となったことは良かったと思います。
今後は、安保法発動という形で「戦争を拡大」させないよう、取り組んでいくこと。これは全力でやっていかねばなりません。そして、政権奪取後は戦争から離脱していくことを打ち出していくこと。
経済政策面では世界の左派の標準である「反緊縮」でまとまっていくことです。
さらに原発停止くらいはきちんと打ち出すこと。
こうしたことが、大事です。
最後に大事なのは、常にあきらめない。そのことではないでしょうか?
by hiroseto2004
| 2016-07-10 23:28
| 参院選2016
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