同じ「暴言王」でも失神KO負けしたゴールドウォーターとホワイトハウスを射止めたトランプの違いは?
2016年 12月 02日
なぜ、おなじ「暴言王」でも「ゴールドウォーター」は失神KO負けしたのに「トランプ」は勝ったのか?
先月の2016アメリカ大統領選挙でトランプが当選しました。
そこで、1964大統領選挙に過激な発言で有名な男が共和党から立候補したものの、現職のリンドン・ジョンソンに失神KO負けしたことを思い出しました。
その男の名前はゴールドウォーター。
過激な右派として、鳴らした男でした。彼は、1964大統領選挙で共和党の候補者選びでロックフェラーを破り、本選挙に進出したが、民主党の現職のジョンソンに失神KO負けと言うべき大敗を喫しました。
彼は、50の州と地域(DC)のうち南部の5州とアリゾナしか取れませんでした。
52年後の2016年。過激な発言で有名な男・トランプはなんと本選挙で当選してしまいました。
この違いは、なぜ起きたのか?
大学入試の世界史でもし出題されたとしたらどうなるか?
回答例を考えてみました。
1964年のアメリカ大統領選挙では、現職の民主党のジョンソンに対して共和党は過激な言動で有名なゴールドウォーターを擁立した。
ゴールドウォーターは南部5州とアリゾナしか獲得できずジョンソンに大敗した。
共和党支持層でもアイゼンハワー元大統領ら共和党の穏健派からもゴールドウォーターは支持されなかった。核兵器使用論者、人種差別論者とのイメージが災いした。
ただし、いままでは民主党の固い地盤だった南部において、公民権運動に反対する白人層を民主党から共和党に引きはがすことに成功した。
また、俳優だったロナルド・レーガンはゴールドウォーターの応援で名前を売り、1980年大統領選挙へ向け地歩を固めた。
他方、2016年の大統領選挙では、逆に暴言王として有名なトランプが共和党候補になったが、民主党の元国務長官で夫が大統領を経験したクリントンを破った。
トランプは、不法移民排除や保護貿易、大幅減税などを訴え、ゴールドウォーターと違い、北部の工業地帯でも票を伸ばした。民主党をこれまで支持していた労働者層を白人男性を中心に取り込んだ。他方、クリントンは、民主党支持層を十分に固めきれなかった。
アフリカ系を含むマイノリティや女性も含む若者のリベラル層も、クリントンの新自由主義的な政策や中東での戦争推進を嫌い棄権や二大政党以外の候補に流れた。
1964年の時点では、アメリカ経済はまだ好調であり、多くの人が経済以外の問題も重視する精神的余裕があった。そのため、ゴールドウォーターの差別的言動や核兵器使用論と受け取られかねない言動が大きなマイナスとなった。
他方、2016年の時点では、アメリカ経済は製鉄や自動車となどのいわゆる重厚長大産業を中心に長期低落傾向にあった。貧困層も拡大していた。こうした中で、保守的な白人を中心に移民への憎悪を煽り立てるトランプへの支持が強まった。また民主党支持だったいわゆるラストベルトの労働組合員の中にも、トランプの経済政策への期待から共和党支持へ鞍替えするものが出た。
さらに、リベラル層でも若手では、性差別や人種差別問題よりも経済格差の拡大のほうが切実だったため、トランプの危険性を訴えたクリントンへの求心力が高まらなかった。
by hiroseto2004
| 2016-12-02 19:33
| 国際情勢
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