「公務員に天誅!」ではなく、「問題解決」を--公務員獣医不足問題の教訓
2017年 08月 22日
「正規公務員のほうが民間の介護労働者より恵まれているなんてことは、某元大阪市長より、俺のほうがよく知っている。だって、両方経験しているから。しかし、『公務員さえ叩けば大阪は良くなる、日本は良くなる』のは違うだろう!」
最近、演説などで機会があるとき、タイトルのような趣旨のことを述べさせて頂いています。
加計学園の問題。たしかに、「加計学園獣医学部推進派」が言うとおり、公務員獣医が不足しているのは事実。
だけど、その根本原因は、待遇が悪すぎることにあります。
わたしも、獣医さんたちと同じ職場に勤めていたことがありますが、6年間専門的な教育を受けて、動物と格闘している同僚が、我々行政事務職と大差ない給料表では、それは、人は不足しますよ。
政治家も
「人々は橋下徹さんたちの『公務員さえ叩けば大阪は良くなる、日本は良くなる』というイデオロギーに洗脳されているから、公務員獣医の待遇を改善したら票が減るのではないか?」
と恐れているところにあるのではないか?
既存政党でも、日本共産党だけは「公務員は先進各国に比べて人口比でみても少ない」ということを言ってはいます。
しかし、一部ですが、現役の日本共産党員でさえも、『公務員さえ叩けば大阪は良くなる、日本は良くなる』に類する記事をシェアしていたりしています。
それくらい、『公務員さえ叩けば大阪は良くなる、日本は良くなる』イデオロギーは浸透している面はある。
ましてや、自民党や民進党や公明党の支持者においておや。
だから、民主党政権も含めて、一時、獣医学部増設という明後日の方向の解決策へ向かってしまったわけです。
この問題については、わたし自身も、あまり発信はしてこなかった。
なぜかということを弁解させて頂くと、わたしたち団塊ジュニア世代~ポスト団塊ジュニアくらいだと、同世代の非正規雇用の問題とか、介護・保育労働者などの低すぎる待遇の方が問題で、相対的に、正規公務員の労働問題の優先順位は、下がってしまうのです。
公務員の労働問題と言っても、「非正規公務員」の問題には広島瀬戸内新聞も、取り組んできました。非正規労働者の裁判闘争を支援し、「人格権」をよりどころに、ようやく、非正規公務員側の訴えが認められるという流れに少しは貢献できたのではないか、という自負はあります。
他方で、教師も含む正規公務員の労働問題にはほとんど触れてこなかったことも事実です。
そして、わたし自身も、正規公務員を退職し、同時に連合・自治労を離れて6年以上になります。平和運動などで、自治労なり日教組のみなさんとご一緒する機会はあるにせよ、労働問題で、認識を共通化させる機会は皆無に等しかったと思います。
ですので
「最近の公務員の後輩たちの労働環境はこんなにひどいのか?!」
と驚いているわけです。
さらに公務員経験が無い同年代に至っては、雨宮処凛さんや河添誠さんを持ち上げていた人で、非正規労働に関するイベントを主催したような人でも、結局、「既存労組、公務員に天誅!」的な方向へ走ってしまった人を少なからず存じています。(雨宮さんや河添さんが悪いというのではなく、そういうことが事実としてあると言うことです。)
きちんと、問題を共有化していかないと、とんでもない方向へ政治が進んでいく。
もちろん、正規公務員と民間介護労働者を比べれば、前者が恵まれているのは事実だし、そんなことは、両方を経験している俺が一番知っています。橋下徹なんぞよりよほどわかっている。
だが、やみくもに正規公務員なり、正規公務員の労働組合に「『天誅!』を加え」さえすれば問題は解決するのか?それは違うわけです。違うけど、ついつい、感情にまかせて流されてしまうし、民主主義国家における政治家は時として、票を気にして、みんなが流されている方向を「是」としてしまう傾向があるわけです。
「公務員に天誅!」イデオロギーが「獣医不足問題の放置」を招き、「加計学園」の背景になっていったのではないか?
そのことは総括する必要があると思います。
ワインセラーのために税金を使うのではなく、獣医さんの給料を上げれば良いだけなのだから。
そのことを票を気にせずに言えるのが本当の政治家だと思う。
「天誅!」ではなく、「問題解決」を。
そのことは、今回の加計学園問題の背景にある公務員獣医不足問題で感じました。
by hiroseto2004
| 2017-08-22 19:45
| 思想・哲学
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