3人連続で利用者が亡くなるまで放置されたこと自体が問題
川崎の有料老人ホームで起きた利用者 3人連続殺害事件。
元職員の今井隼人被告人に横浜地裁(裁判員裁判)では死刑判決が下りました。
まずは、亡くなられた3人の方に心からご冥福をお祈りします。施設が最後まで利用者様の安全を守れなかったことが何より大変残念です。
今井被告人は、無実を主張しているというが、誰が真犯人だったにせよ、疑問があります。
「人が3人も連続で変死するまで、止められなかった」
ということ自体が大問題であす。
今井被告人が犯人かどうかは別問題として(本人は無実と主張)、とりあえず、今井被告人を夜勤から外す(他のスタッフもいつ日勤帯にする)などの手はあったのではないでしょうか?
さらに、意地が悪い見方をすれば、施設のスタッフに
「ああ、うるさい入居者がいなくなってくれて良かった」
くらいの雰囲気が広がっていたのではないでしょうか?
それが第二、第三の事件を後押しした可能性はあると思うのです。
正直、そういうことは充分にあり得ると、現役の介護職員として、実感します。
特に認知症の方で、頻繁にコールをする方とか、徘徊する方は虐待をされやすいのも事実であるからです。
正直、当該施設の現場に余裕がなかったのではないか?
その背景には、もちろん、人手不足がある。仕事に比して処遇が良くないというのは明らかだ。人間関係で悩んで退職者が多い、というが、そもそも、余裕がないから人間関係が悪くなる。
そして、会社側が質の高くない職員でも雇わざるを得ないという状況があるのも事実です。
もう一つは、会社側も「誰でも良いから入所させていた」ということはなかったのか?「認知症があって、なおかつそこそこ元気」という方の場合は、この手の大型施設よりはグループホーム入居がお勧めです。しかし、会社としては何が何でも稼働率を上げるために入れたかったのでしょう。
この事件が起きた当時の施設を経営していた会社は、全国規模の有名な会社で、とにかく、稼働率重視、そして、最大限、利用者にサービスを受けさせる、という主義でした。
そういう気風も、利用者を人間とは思わない、という雰囲気を職場に広げたのではないか?
そのことも、事件の背景にあったのではないか?
そう、思わざるを得ないのです。
高齢者の命を守るべき介護の現場で起きた事件に判決です。4年前、川崎市の老人ホームで、高齢の入所者3人をベランダから転落させて殺害したとして殺人の罪に問われた25歳の元職員に対し、横浜地方裁判所は「介護職員という立場を利用した犯行は、人間性のかけらもない冷酷なものだ」と指摘し、検察の求刑どおり死刑の判決を言い渡しました。
平成26年、川崎市幸区の有料老人ホームで、入所者の丑澤民雄さん(当時87)と仲川智惠子さん(当時86)、浅見布子さん(当時96)が相次いで転落して死亡し、元職員の今井隼人被告(25)が3人を抱えてベランダから転落させて殺害した罪に問われました。
22日午後1時半から横浜地方裁判所で開かれた裁判員裁判で、渡邉英敬裁判長は、結論にあたる判決の主文を先に述べず理由の読み上げから始め、最後に今井被告に対し死刑の判決を言い渡しました。
これまでの裁判で被告の弁護士は「事故や自殺の可能性もある」と主張したのに対し、判決では、死亡した3人の身体能力などから自力でベランダの手すりを乗り越えることは難しく、事故や自殺ではなく殺害されたものだとしたうえで、当時の勤務状況や、逮捕直前に今井被告が母親や妹に殺害を認める電話をしていることなどから、被告が3人を殺害した可能性が極めて高いとする判断を示しました。
さらに、今井被告が捜査段階で3人の殺害を認めたとする自白は現場の状況などと一致し、高く信用できると指摘しました。
そのうえで裁判長は「介護職員という入居者を守るべき立場を利用した犯行は、人間性のかけらもない冷酷なものだ。不合理な弁解に終始していて反省はみじんも感じられない」と述べ、死刑の判決を言い渡しました。
死刑を言い渡された際、今井被告はじっと前を向いて、表情を大きく変えることはありませんでした。
被告側が控訴
横浜地方裁判所によりますと、判決のあと被告の弁護士が控訴したということです。
死刑言い渡しのときも固い表情崩さず
午後1時半に裁判が始まると黒縁のメガネにグレーのスーツ姿の今井被告は緊張した面持ちで弁護士の横に置かれたいすに腰掛けました。
裁判長が判決の主文を後回しにして理由を読み上げている間、今井被告はやや前かがみの姿勢で顔を正面に向けていました。
そして、裁判長が立ち上がるように促し「被告人を死刑に処する」と主文を言い渡すと今井被告は手を体の前で組み、固い表情を崩しませんでした。
そして閉廷した瞬間、正面に向かって深く一礼し法廷を出ました。
浅見さん遺族「思いが伝わった判決」
浅見布子さん(当時96)の遺族は「私たち遺族の思いが伝わった判決と受け止めています。きょうまで一日たりとも心が安まる時はありませんでした。公判中、顔色一つ変えず反省もない被告に対しては、腹立たしく悔しい思いをずっとしてきました。母の無念が報われた判決ですが、年老いた無抵抗の母がなぜ殺されなくてはならなかったのか、私たち遺族の苦しみ、悲しみは到底消えることはありません。このような事件が二度と起きないことをせつに願っています」とコメントしています。
施設運営会社「信頼回復に全力で努める」
事件後、現場となった施設の運営を引き継いだ東京の「SOMPO(そんぽ)ケアメッセージ」は「ご入居者さまのご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまに深くお詫び申し上げます。判決を重く受け止め、今後一層の安全管理体制の強化、社員教育を徹底し、信頼回復に全力で努めてまいります」というコメントを出しました。