北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか
2018年 09月 10日
北海道電力は初の天然ガス火力発電所となる石狩湾新港発電所(総出力1.7GWe)を建設中ですが、このうち1号機(570MWe)が来年2月に運開予定です。これにより苫小牧に集中している発電所が石狩湾岸に分散されます。また、北本連系線の増強も2019年に完成し、現在の600MWeから900MWeに増強されます。
現状では完成は2030年と予定されていますが、石狩湾新港発電所が3号機まで完成すると、苫東厚真発電所と同等の容量の発電所が石狩湾岸に分散され、また天然ガス火力は出力調整能力を持ち、起動特性も良好です。なお、天然ガス火力発電所は着工後3年で完成できます。
北海道電力は泊発電所の再稼働に経営資源を配分してきた為に石狩湾新港発電所への投資が遅れており、今回のブラックアウトは投資判断の誤りの結果と考えることも出来ます
冒頭のTweetの要約を再掲します。
”こういう脆弱な状況がずっと続いてきた
恐れていた事態が遂に起こった
発電所が一つ停止しただけで破綻する状況が異常だ
泊が動いてればこういう事態にはならなかった。”
このTweetは、発電所を乾電池と勘違いしています。実際には、三相交流の同期を厳密に維持せねばならず、泊発電所のような大出力で、出力追従が出来ず、出力調整には新たな適合性審査の必要な原子力発電所は現状の北海道電力の送電網の持つ脆弱性を更に大きくしてしまいます。むしろ、そのような脆弱性を持つ発電網に原子力発電所を接続することは、多重防護の考えに反します。多重防護は原子力安全の大黒柱です。このTweetはその大黒柱にシロアリを住まわせるような危険な発想です。このような考えは、最悪、原子炉を爆発させてしまいます。