米軍、被ばく恐れ調査せず 沖縄・鳥島の劣化ウラン弾誤射 日本政府の説明と矛盾
2019年 05月 08日
アメリカ軍自身が被ばくをおそれて調査に行っていない。
【ジョン・ミッチェル特約通信員】1995~96年に米軍機が鳥島射爆撃場(沖縄県久米島町)で劣化ウラン含有弾を誤射した事故の後、米空軍が兵士の被ばく懸念から少なくとも2010年9月まで鳥島での動植物の生息状況や水質などを調べる通常の環境調査を実施していなかったことが分かった。米国情報公開制度で本紙が資料を入手した。
日本政府は1997年、誤射について「鳥島に立ち入ったとしてもその影響は十分小さい」との調査結果を公表。2002年にも「影響は無視できる」としたが、同射爆撃場を管理する米軍側の評価はこうした地元への説明と矛盾していることが明らかになった。
また報告書によれば、未回収の劣化ウラン弾は発射1520発のうち1273発で、総重量は計188・4キロだった。弾丸にはウラン234、同235、同238の3種類の同位体が含まれており、大部分を占めるウラン238の半減期は約45億年。
米軍岩国基地(山口県)所属の海兵隊機が1995年12月と96年1月に計3回、劣化ウラン弾を鳥島射爆撃場に誤射した。米空軍の資料によると、米軍はその際に鳥島を調査したが、わずか192発(13%)しか回収できなかった。
米政府は事故について97年1月、日本側に通報。その後、日本政府と米軍によるチームが島を捜索したが、新たに回収された弾体は55発のみだった。
日本側への通報が遅れたのは、どの物質を通報が必要な有害物質か規定する米軍の日本環境管理基準(JEGS)に劣化ウランが含まれていなかったのも一因とみられる。米軍は現在も鳥島を射爆撃場として使用し続けている。
外務省は7日までに沖縄タイムスの取材に「当時、米側と鳥島の陸域部分でも調査を行っており、外務省から調査結果などを発表している。今回の件について詳細は確認中」と答えた。
米空軍嘉手納基地は7日までに返答しなかった。
[ことば]劣化ウラン 核兵器や原子力発電所用燃料製造時の副産物として生成され、弱い放射能のほか水銀や鉛のような重金属としての毒性も持つ。兵器としては貫通力を増すための弾芯などとして使われ、イラクでは、1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争における米軍の劣化ウラン含有弾使用が、現地の子どもたちの白血病や先天性奇形の増加と関係があるのではと指摘されている。