山口県にある岩国基地の周辺住民がアメリカ軍の軍用機などの騒音被害を訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所は国に対して7億3000万円余りの賠償を命じました。
一方、住民たちが求めていたアメリカ軍の軍用機と自衛隊機の飛行の差し止めについては1審に続いて認められませんでした。
山口県岩国市にあるアメリカ軍岩国基地の周辺に暮らす654人の住民は騒音による健康被害を訴え、国に対し、アメリカ軍の軍用機と自衛隊機の夜間から朝にかけての飛行の差し止めや賠償などを求めました。
1審の山口地裁岩国支部は4年前、飛行の差し止めの訴えを退けた一方で、騒音被害を認めておよそ5億5800万円の賠償を命じ、住民と国の双方が控訴していました。
25日の2審の判決で、広島高等裁判所の森一岳裁判長は「住民たちは騒音により看過できない被害を被っている」と指摘したうえで、2審の審理期間の騒音被害などを加えて1審よりおよそ1億7000万円を多い7億3000万円余りの賠償を命じました。
一方、アメリカ軍の軍用機などの飛行の差し止めについては「現在の法令などでは国にアメリカ軍機の航空管制を制限できる根拠はない」として訴えを認めませんでした。
また、去年3月に神奈川県にあるアメリカ軍厚木基地から空母艦載機の移転が完了して岩国基地に配備された軍用機がこれまでの2倍に増えたことについて、判決は「飛行する回数は増加しているが、移転後の騒音について証明できる証拠がない」として移転後の騒音の増加を賠償の対象にしませんでした。
判決のあと、原告団や弁護団に加え全国から集まった支援者などおよそ200人が広島市内に集まり、記者会見しました。
この中で原告団の津田利明団長は、「一審の判決も今回も理屈の通っていない判決だと思います。今は憤りの気持ちでいっぱいです」と話しました。
また、原告団の1人で、騒音の大きさを国が指標化した「うるささ指数」の75の地域に該当し、岩国市尾津町に住む吉岡光則さん(73)は、「怒り心頭です。これからも騒音を我慢しろということで、裁判官が岩国市の現地を視察し、期待していただけに残念です。官僚的な判断にとどまってしまった」と話していました。
防衛省中国四国防衛局の森田治男局長は、「国の主張の一部について裁判所の理解が得られなかったと受け止めている。今後の取り扱いについては判決内容を検討し関係機関と調整していく」としたうえで、「今後とも周辺住民の騒音影響に可能なかぎり配慮し、アメリカ側にも配慮を求め、住宅の防音工事などの対策を通して、負担を軽減できるよう最大限努力していく」とするコメントを出しました。