新型コロナウイルスへの感染が確認された男性検疫官は、横浜検疫所からクルーズ船に派遣され、横浜港の大黒ふ頭の沖合に停泊し始めた今月3日の夜から4日の夜にかけて、検疫業務に当たっていました。検疫官は、乗客から質問票を回収したり体温を測定したりして客室に立ち入ることもあったということです。
クルーズ船では、乗客の感染が確認された今月5日以降は、検疫官が客室に立ち入らないようにしていましたが、それ以前は検疫官が客室に入って体温の測定などを行っていたということです。
また検疫官は、医療用のマスクや手袋を着用していた一方で、防護服やゴーグルなどは着用していませんでした。
これについて厚生労働省は、WHO=世界保健機関の指針に基づく対応だったとしています。
検疫官は、船内で検疫を行ったあと、5日から7日まで検疫所の事務所で通常業務を行い、その後、休日だった9日に発熱しました。

このため、翌日10日に医療機関を受診してウイルス検査を受けたところ、新型コロナウイルスへの感染が確認されました。
検疫官は、現在入院していますが、症状は落ち着いているということで、厚生労働省は、同僚の検疫官や家族などで濃厚接触した人を調べ、健康状態を確認していくことにしています。
専門家「手袋外す際 ウイルスに触り感染か」
新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船で検疫官1人の感染が確認されたことについて、医師で厚生労働省仙台検疫所の岩崎恵美子元所長は、手袋の外側に付いていたウイルスを、外す際に触ってしまったことで感染につながったのではないかと指摘しています。
岩崎医師は、感染症対策の専門医で厚生労働省仙台検疫所の所長として、仙台空港などでの検疫を担当していました。
岩崎医師は、検疫官1人の感染が確認されたことについて「防護服を着て検疫をしていると思っている人がいるかもしれないが、検疫される人の事を考えて自分たちの防護は最小限にしている。手袋とマスクだけで十分にやっていけることは分かっていることだ」と述べ、検疫の方法に問題はなかったという認識を示しました。
そのうえで「手袋の外し方が悪かったと考えている。外側は汚染されているので、そこに触れないように外すように教えていると思うが、守られていなかったのだろう。手などにウイルスが付いたままで、口や鼻に触ってしまったのではないか」と述べ、手袋の外側に付いていたウイルスを外す際に触ってしまったことで感染につながったのではないかと指摘しています。
そのうえで「手袋を1人ずつ替えているとも思えないし、替えているとしたら繰り返しになるので外し方がいいかげんになることもある。疲れてくると人間はミスを犯すし、体調が悪いと免疫も落ちる。長い時間働くことはお薦めしない」と述べ、クルーズ船内の検疫官への支援の必要性を強調していました。