「外出自粛でバイトなくなっちゃうかな」「バイト削られすぎて死んじゃうよ。学費滞納したら退学」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、学業とアルバイトを両立してきた学生にも広がっています。取材を進めると悲痛な声が聞かれました。(ネットワーク報道部 記者 野田綾 鮎合真介 田隈佑紀)
SNSの投稿
「コロナの影響かなんか知らんけど飲食店でバイトしてる僕シフト大幅減で学費払えるか危うくなってきた」
「ふざけんなコロナ許さん許さん許さん。私のイベントバイト消えた、まじつらい。来月の学費がギリギリやばい」
「コロナのせいでバイト数減ってめっちゃお金少ない。学費どうすんねん……」

4月からの新学期を控え、SNSには学費の支払いのめどがつかなくなったという声が相次いでいます。
また、大学生の娘を心配する心境を投稿した人も。
「東京都自粛要請の為、今日から娘のバイト先も休みになりました。勤労学生には大打撃です」
学費はバイトで稼いでいる
「このままでは学費の支払いができない」
秋田県の大学院に通う23歳の男性に電話で話を聞きました。
生活費は親から仕送りをもらっていますが、年間50万円余りの学費はすべて自分で払っています。
大学院の授業や研究が忙しく、ふだんはアルバイトに入ることができません。
このため長期休みの2月、3月を利用して学費のためのお金を用意したいと思っていました。
男性は塾講師などのアルバイトを掛け持ちし、2月と3月は週6日働く予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アルバイト先が休業するなどして働くことができなくなり、収入は予定していた5分の1ほどに。
4月末に半期分のおよそ27万円の支払い期限を迎えますが、手元にその半分ほどしか用意できていないと言います。
このままでは支払いは難しいと感じています。
秋田の大学院生
「大学院に通い続けたいが、不安な状況です。学費を払わなければいけないものだとはわかっているし、払うつもりでいますが、アルバイトができない現状では学費の支払期限をのばしてもらえたらと思っています」
文科省 学費納付の猶予など大学に求める
文部科学省からの通知国も対応に乗り出しています。
文部科学省は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月17日、全国の国公立や私立の大学や短大などに、経済的な理由で修学が困難な学生を支援するよう通知。
▽入学金や授業料の納付が困難な学生に対して納付時期を猶予するなどの配慮や、
▽緊急時の奨学金の制度などを積極的に周知するよう求めています。
大学「学費の減免あります」
各大学も学生らに呼びかけを行っています。

東京大学は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ホームページで入学金や授業料の減免の制度について周知しています。
▽世帯の収入によって、入学金や学費の支払いが免除や減額されるほか、
▽支払期限を9月下旬まで延ばしたり、月々分割して納付できたりする制度も用意されています。
いずれも申請が必要です。
都立の首都大学東京でも同じように入学金や学費を減免する制度があり、感染拡大の影響で学費の支払いが困難になった学生からの問い合わせや相談も寄せられているということです。
首都大学東京 学生課
「経済的に困難な状況になった場合にはさまざまな支援制度があるので、少しでも困ったことがあれば、問い合わせをしてほしい」
学生バイトももらえる「休業手当」
新型コロナウイルスの感染拡大による売り上げや客の減少で、勤務に入るはずだったシフトを減らされてしまった場合、その分の給料はどうなるのでしょうか。
厚生労働省労働基準局監督課に聞きました。
厚生労働省労働基準局監督課 担当者
「雇用している会社側の都合でシフト・勤務日を急に減らされてしまった場合、平均賃金の60%以上を休業手当として受け取ることができます」
「会社の都合」で休まされるなら対象に

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響でキャンセルが相次いでいるし、お客も来ないからシフトは入っていたけど来なくていいよ」なんて言われた人もいると思いますが、これも「会社側の都合」になるので、休業手当を受け取ることができる場合があると言います。
法律ではどうなっているのか。
労働基準法26条で
▽勤務表では勤務日となっているにもかかわらず、直近になって忙しくないからと休みにさせる場合や、
▽契約で約束した勤務日数と比べ、同意なく日数が減らされた場合などに、休業手当を受け取ることができるとしています。
厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、
▽在宅勤務ができるのにさせない場合や、
▽働く人に発熱などの症状があったり、コロナウイルスの感染が疑われたりしたことを理由に会社側の指示で休む場合は、休業手当の対象になるということです。
会社には「雇用調整助成金」が
会社側は、売り上げが減少するだけでなく休業手当の支払いも求められ、どこにそんな余裕があるのかと考える人もいると思います。
こういう時に会社側が活用できるのが「雇用調整助成金」です。
「雇用調整助成金」は、売り上げや生産が減少しても従業員を解雇せず、休業や出向などによって雇用調整を行う企業に、国が手当の一部を助成する制度です。
厚生労働省
「助成金の支給要件を緩和し対応している。会社側には雇用調整助成金を活用するなどして法律で認められた休業手当をきちんと支払ってほしい」
法律を知ろう 遠慮はいらない
大学関係者に話を聞くと、新型コロナウイルスの感染の影響がさらに長引けば、学費を払うことができない学生は今後増えることが懸念されると言います。
また、ある労働組合の相談窓口の担当者は「学生を雇う会社が法律をよく知らないケースもあるうえに、学生側も休業手当を求めると印象が悪くなって仕事を失うと思い、なかなか請求できないのが実態だ」と話しました。
学生への影響がどこまで広がっているのかを把握したうえで、きめ細かな支援や相談にあたっていくことが求められています。