全米に広がった抗議デモのきっかけとなった黒人男性の死亡事件で、この男性の弟が議会で証言し、「このような苦痛はもうたくさんだ」と述べ、再発の防止に向けた警察組織の改革を訴えました。
10日に開かれた議会下院の司法委員会には、白人警察官に押さえつけられて死亡した黒人男性、ジョージ・フロイドさんの弟のフィロニーズ・フロイドさんが証人として出席しました。
フィロニーズさんは冒頭、「きょうこうして証言することで兄の死をむだにしないことができるかもしれない」と述べました。
そしてフロイドさんが、偽造された20ドル札を使用した疑いで警察に拘束され死亡したことについて、「20ドルのために兄は死ぬことはなかった。黒人にはそれだけの価値しかないのか」と訴えました。
アメリカでは事件をきっかけに警察組織の改革を求める声が高まっていて、秋の大統領選挙に向けた新たな争点としても浮かび上がっています。
これについてフィロニーズさんは「このような苦痛はもうたくさんだ。助けを求める兄の声は無視されたが、私たち家族、世界中の人の声を聞いてほしい。法執行機関は問題を起こすのでなく、解決する組織になってほしい」と述べ、再発の防止に向けた警察組織の改革を訴えました。
また、フロイドさんが死亡した時の状況について「人としての心があればあのようなことは間違っていると分かる。動物にだってしない。兄に戻ってきてほしい」と涙ながらに訴える場面もありました。
米各地でデモも略奪や暴力行為など収まる
事件から16日目となる10日もアメリカ各地で抗議デモが行われましたが、デモに便乗した略奪や暴力行為などは収まっています。
このため首都ワシントンのホワイトハウスの周辺では、トランプ政権が、不測の事態に備えて設置した臨時のフェンスなどの一部を撤去する作業が行われていました。
一方、ワシントンのバウザー市長は10日の記者会見で、デモの参加者たちが集まるホワイトハウス北側の広場周辺に設けられたフェンスについても速やかに撤去するよう求めました。