新型コロナウイルスの感染が最初のピークを迎えたことし4月前後に、少なくとも1都13県で自治体の職員がいわゆる「過労死ライン」を超える長時間労働を余儀なくされていたことが分かりました。
新型コロナウイルスの感染者数はことし4月上旬、1日に700人を超えて最初のピークを迎え、自治体は対応に追われました。
NHKが情報公開請求などでこれまでに明らかになっている自治体職員の残業時間をまとめたところ、少なくとも1都13県で月100時間を超える残業を余儀なくされていたことが分かりました。
このうち岡山県ではことしに入って6月までに、県と岡山市、それに倉敷市で、新型コロナウイルスに対応するための業務を担当していた保健所などの職員、延べ80人に上りました。
また残業が月200時間を超えたケースも相次ぎ、山口県では最も長い職員で266時間、福井県では232時間、千葉県では217時間に達したということです。
月に100時間を超えるか平均で80時間を超える残業は、労働基準監督署が過労死や過労自殺を認定する基準の1つで、「過労死ライン」とも呼ばれています。
国や自治体は、保健所などの負担軽減に向けた検討を進めていますが、冬にインフルエンザの流行と新型コロナウイルスの感染拡大が重なれば、さらなる業務のひっ迫が懸念されることから、迅速な対応が求められています。
専門家「今回の教訓生かし次の流行に備えを」
保健医療に詳しい一般社団法人「医療介護福祉政策研究フォーラム」の中村秀一理事長は「地方自治体は行財政改革で効率化が求められ、保健所などの人員が削減されてきた。ふだんから膨大な業務を抱えているところに新型コロナウイルスの問題が入ってきて、非常に困難な状況になっている」と話しています。
そのうえで「今回の教訓を生かして、次の流行に備える態勢を整備しなくてはいけない。自治体間で人を派遣しあったり、今は働いていない潜在的な保健師をリストアップしたりする仕組みに加え、人員を強化する財政的な措置を国も地方も考えていかなければいけない」と指摘しています。