ロシアの首都モスクワでは5日、医療関係者などに対する新型コロナウイルスの国産ワクチンの大規模接種が始まりました。プーチン政権としては、今週前半にも接種が始まるイギリスに先駆けて行うことで、ロシアのワクチンの有効性などを強調するねらいもあるとみられます。
ロシアの首都モスクワでは5日、70か所の医療機関で、医療関係者や教師などに対する新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まりました。
今回使われるワクチンは、3段階ある臨床試験が終わっていませんが、ロシア政府がことし8月に承認した国産のワクチンで、市内の医療機関では、事前にインターネットで申し込みをした人が接種に訪れていました。
医師の女性はNHKに対して「自分の身は自身で守らなければなりません。接種できてうれしいです」と話していました。
プーチン政権としては、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が、今週前半にも始まるイギリスに先駆けて大規模接種を行うことで、ロシアのワクチンの有効性などを強調するねらいもあるとみられます。
ただ、このワクチンをめぐっては、ロシアの一部の閣僚などが接種したものの、プーチン大統領は接種しておらず、今月発表された世論調査では「接種する用意がある」と回答した人は30%にとどまるなど多くの国民は、ワクチンの安全性や有効性について慎重な見方をしています。
国際社会で存在感示したいねらいか
今回の大規模接種で使われているワクチンは、ロシアの研究機関が開発した「スプートニクV」です。当時のソビエトが世界で初めて打ち上げた人工衛星にちなんで名付けられたものでことし8月、ロシア政府が正式承認しました。
最終段階の臨床試験と並行して、医療や軍の関係者に対する接種も一部で始まっていましたが、プーチン大統領は2日、医療関係者や教師に対して大規模な接種を6日からの週に始めるよう指示しました。
これを受けてプーチン大統領とも近いモスクワのソビャーニン市長はワクチンの保管などの態勢も整ったとして5日から大規模接種を始めると明らかにしたもので、今週前半にも接種を始めるイギリスの動きも意識して調整を急いだと見られます。
また、ワクチン開発に携わっている政府系ファンド「ロシア直接投資基金」は、先月下旬、スプートニクVについて有効性や価格を相次いで発表するなど欧米に対抗する動きを強めています。
プーチン政権としては、今後、一般の人への接種も始めることで安全性などを強調して各国への売り込みにも力を入れるとみられ、感染対策における国際社会での存在感を示したいねらいとみられます。
一方でロシア国内の科学者からも政治的な思惑を先行させるべきではないと慎重な対応を求める声もあがっています。