16日,昼休みが終わろうかというとき,携帯電話がなりました。
覚えのない番号なのですが,電話を取りました。
すると,「警視庁成城署の**です」と相手は言います。
「平成12年(2000年)に世田谷区であった一家四人殺人事件の捜査で,世田谷から
引っ越した人にお話を伺っているのです。」
事件はTVなどで報道されています。私がかつて住んでいた近くではあります。私は,もう1989年の1月にその地域から引っ越しています。
また,事件現場のある世田谷区北西部は23区の中では「田舎」であることは,東京人なら誰でもご存知だとは思います。被害者一家の家のあたりは私が記憶する限り見渡す限りの草原地帯でした。畑も多くありました。
「とうのむかしに私は引っ越しているんですがね?」
「いや,仕事なので話を伺わないといけないのです。」
その後のやり取りで,私の職場の近くに刑事さんがおられるらしいことがわかり話の流れからきてもらうことになりました。
彼らは二人組で,世田谷から広島へ引っ越した人20人がいるので一人一人話を聞いて歩いているということなのです。
■忙しいので早く話に応じてしまう数分後,男性刑事二人組が現れました。巡査部長と巡査長ということでした。
「これは,取調べではありません。任意ですので」
と前置きしながら,話が始まりました。
はっきり言って,任意であるなら,別に話をする義務もないのですが,どうせ,断っても何回でも電話してくるだろうから,面倒なので話をすることにしました。
話の内容は簡単でした。
私がどこで生まれ,どこに住んだか,どこの学校に進んだか,職歴などを順に答えました。
そして,被害者の一家の写真を見せられました。だが,一家自体が私が引っ越した後,移ってこられた方々です。私も世田谷区といえば大学の1,2年次は目黒区でしたから下北沢でカラオケをしに行ったくらいです。
それから,犯人が現場に残した証拠の写真を見せられました。
むろん私が知っているはずもなく,話は終わりました。
最後に「犯人が現場に指紋を残しているの」ということで,指紋を取られました。
本当はこれも,拒否してもいいのですが,仕事が忙しく,早く帰っていただきたいので,押しました。
凶悪な事件の犯人は早く逮捕されてほしいと思います。刑事さんはこのような遠方までご苦労様です。
日本の警察というのはここまで調べるものなのです。かなりきめ細かいとは思います。
しかし,正直な話,犯人が逃げ回っているせいで,愉快とはいえない思いをし,本当に迷惑ではあります。早く自首してほしいと思います。
■冤罪の可能性は低いのか?その上で,もっと深く考えれば,これがもっと,深刻なケースだったら思うとぞっとします。
私は,任意だから義務はないが,これ以上は面倒だと思い,指紋を押してしまった。多くの人がそうでしょう。左翼の人には怒られるかも知れません。
「義務のないことを権力に協力するとはけしからん。そういうことだから権力が増長するのだ。」と,批判されるかもしれません。
参考:日本国憲法
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を
受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、
且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、
且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
しかし,ずばり言ってしまえば,今回の私の対応が,一般人の対応だと思います。「面倒なことは早く終わらせてしまいたい。」
だが容疑者だと思われてしまった場合,もっと厳しい聴き方になるでしょう。
そうなったとき,「早く帰りたいから面倒だから自白してしまえ」という心理に追い込まれてうその自白をしてしまう可能性は,本当に低いのでしょうか?私は低いとは思わない。
憲法の以下の条項はただあるだけではないのです。そういう危険が高いと判断されているからあるのです。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された
後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、
又は刑罰を科せられない。
殺人は事件数は少ないですが,先日の富山での強姦事件の冤罪などはどうか?本当の犯人が見つかったから良かったようなものの,もしそうでなければ,罰せられるべき人が罰せられず,大手を振って歩いているということになります。
あるいは,鹿児島県での選挙違反でっち上げ事件。「踏み字」をさせた,など,本当にひどいと思います。
憲法38条を保障するため,取調べの全面可視化など冤罪防止対策の徹底は必要だと改めて感じました。
■権力対個人は対等ではないそれから,権力対個人というとき,個人は非常に弱いものだということを思わざるを得ません。
個人は生活に終われる中で対応しないといけないのです。だから「早く帰りたいから」うその自白,ということがある。
一方,権力を行使する人は,給料をもらって,プロとして行使しているのです。だから,対等ではないのです。対等であるように,個人に対して十分な配慮をしないといけないのです。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
この99条が,全てを語っています。私自身も,もちろん公務員として気をつけないといけない。自戒も込めてそう思いました。