核禁条約批准しない日本 国際社会を失望させた 森本真治議員
2021年 01月 20日
広島県選出の国会議員として核兵器のない世界の実現をライフワークとしてきた。核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効する見通しとなったことは、大きな一歩であり、広島、長崎の思いが国際社会に伝わったと評価したい。
一方で条約を批准しないという政府の考えには本当に忸怩(じくじ)たる思いだ。口では核兵器のない世界の実現に向けて主体的な役割を担うと言いながら、全く後ろ向きな姿勢には怒りを持っている。
政府は批准しない理由に核保有国が賛同していないことなどを挙げ、核保有国と非保有国の橋渡しをするという。では日本政府は具体的にどのような努力をしてきたのか。全くわからない。唯一の戦争被爆国として世界各国が日本に求めているものは非常に大きいにもかかわらずその期待を裏切り、国際社会を失望させている。日本が条約に参加すれば多くの国から信頼され、評価される。それを代弁して核保有国に向けて声をあげることが日本の本来の姿だ。
日米同盟は「核の傘」抜きで
安全保障は当然日米同盟を基軸に考えなければならない。しかし、だからといって米国による「核の傘」(核抑止)が不可欠ということにはならない。核抜きの日米同盟は成り立つ。国民は日米安保は必要だと考えているが、米国の核の傘で守ってもらいたいと考えているわけではない。
また、実際に核の傘が有効で、そのおかげで日本が他国から攻撃されなかったかどうかも、また別の話であって、日本の平和主義が果たした役割も考えるべきだ。日本が本当に核の傘で守られているのかどうかは、まさに国際政治の現実的な判断のなかで考えるべきだ。
政府は核禁条約について「全ての核兵器を絶対悪として、現在の状況を否定している」「核保有国と非保有国の溝を深める」などと主張する。しかし、私はそうは思わない。核禁条約は、いま日本政府が核軍縮政策の主軸に置く核拡散防止条約(NPT)と対立するものではなく、両立するものだ。NPTで核兵器国にも義務づけられている核軍縮(注)が実行できていない。核軍縮を実行させる後ろ盾になるのが核禁条約だ。政府はそのような立場で核軍縮に臨むべきだ。
トランプ前米大統領の時代は「核態勢の見直し」(NPR)で実戦化を進めるとするなど、核軍縮とは正反対の流れがあった。この逆流を少しでも止めなければならない。バイデン新大統領はオバマ元米大統領の核政策を踏襲すると言っているので期待したい。米大統領が変わることで、日本も名実共に国際社会で核廃絶に向けた動きを主導するチャンスが生まれると捉えたい。
政府の腰が重いなかでは最低でもオブザーバー参加はすべきだ。核禁条約を実効あるものにするための議論が必要だ。また広島、長崎両市での締約国会議の開催については、政府も動かして実現したい。ぜひ世界の指導者に被爆の実相を直接見てもらいたい。
東京と広島との落差
私は広島で生まれ育ち、小学校のころから原爆について学び、8月6日は平和学習をし、核廃絶はアイデンティティーとして、当たり前のように自分のなかにある。これについては保守か革新かも、与野党も関係ない。地方議員も同じだ。だから広島市議会でも日本政府に核禁条約の参加を求める意見書が採択された。その当たり前の感覚のなかで、国会議員になって他の国会議員や政府とやりとりをすると、あまりにも落差を感じた。
被爆70年の際にも広島、長崎の国会議員とともに国会決議に取り組んだが「なぜ広島、長崎だけなのか」などと言われた。たしかに東京大空襲などもあるが、核兵器を二度と使わせてはならないということを被爆国としてもう少し声を出せないかと思った。今は、一人でも多くの議員に、あるいは政府に、広島の思いを伝えるのが被爆地から選出された議員の務めだと思いながらあきらめずにやっている。




