黒い雨 国の救済策「長崎の被爆体験者」対象外 被爆地を分断する暴挙
2021年 12月 23日
広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」被害の救済拡大を巡り、厚生労働省は23日、広島県・市、長崎県・市との5者協議で被爆者認定指針改定の骨子案を示した。可能性が否定できない場合も含め「黒い雨に遭ったこと」と、「一定の疾病」にかかっている人を救済対象とした。
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長崎の「被爆体験者」救済はかなわなかった。23日に提示された、広島の「黒い雨」被害者と長崎の被爆体験者を巡る国の救済拡大案。国は黒い雨の被害者について被爆認定の間口を広げる案を示したが、被爆体験者に関しては「議論の土台が異なる」として具体案を示さなかった。蚊帳の外に置かれ、期待を裏切られた長崎の関係者は「広島も長崎も被害は同じなのに」と肩を落とした。
「国の案は受け入れがたい」。この日あった厚生労働省と広島県・市、長崎県・市の5者協議の後、記者会見した長崎市原爆被爆対策部の林尚之課長は国の姿勢を批判した。これまでの協議で「長崎は黒い雨が降ったことを示す客観的資料がない」とする厚労省に対し、1999年度の住民調査結果などから「長崎も黒い雨が降った。指針に被爆体験者の救済も盛り込んでほしい」と求めてきた。
しかし、厚労省の担当者は「調査には客観性がない。長崎は(議論の)入り口の前だ」とにべもなかったという。林課長は会見後の取材に「証言者がうそをつくはずがない。対象の俎上(そじょう)にもないということか」と憤った。長崎県原爆被爆者援護課の山崎敏朗課長も雨について「広島には(「黒い雨」訴訟判決の)事実認定があり、長崎にも体験者の証言がある。同じ救済指針に入ると思っていた。これで終わらせるわけにはいかない」と語気を強めた。
被爆体験者らは行政と司法の壁に度々はね返されてきた。被爆認定を求めて集団訴訟を起こした第1陣は2017年、第2陣は19年に敗訴が確定。原告団の一部が再提訴し、今も係争中だ。原告代理人の三宅敬英弁護士は「被爆体験者の健康被害は明白だ」と話す。協議後に記者会見した原告団長、岩永千代子さん(85)は国の案に「あぜんとした。黒い雨は広島と長崎でどう違うのか」と声を震わせた。
被爆体験者救済を支援する医師で、長崎県保険医協会の本田孝也会長は「広島だけ救済する不平等が許されるはずがない。二つの被爆地を分断する暴挙だ」と険しい表情を浮かべた。
長崎では原爆投下後、雨や灰といった放射性降下物が降り、汚染された野菜や水を摂取した人たちが内部被ばくしたと主張してきた。本田会長は「内部被ばくしたかどうかの問題が(国の案では)黒い雨に遭ったかどうかにすり替えられた。被爆体験者の納得なしに指針は変えてはならない」と語気を強めた。【今野悠貴、中山敦貴】



