技能実習生「暴行2年続いた」 岡山で就労の外国人 監督機関調査
2022年 01月 16日
二年間も暴行が続いた。そして、それを助けたのは労働組合だった。
労働組合はやはり必要です。
いっぽうで、こうした技能実習生制度はいったん廃止するべきですね。
岡山市内の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生の男性が、職場で複数の日本人から繰り返し暴行を受けていたと訴えている。2019年秋から約2年間続き、ほうきなどで何度もたたかれたり、腹を蹴られてあばら骨を折ったりもした。男性は仲介役の同市内の監理団体の通訳に相談したが、止まらなかったという。男性を保護した福山市の労働組合が会社や監理団体の責任を追及するとともに監督機関の外国人技能実習機構(東京)に通報、同機構が調査を進めている。
「人間として扱ってもらえなかった。毎日、『今日は何もされないように、平和に過ごせるように』と願いながら出勤していた」
21年11月、福山市内で、男性(41)は通訳を介した取材にそう語った。
19年10月に来日し、岡山市内の監理団体の仲介で、足場の組み立て・解体などを行う従業員10人ほどの建設会社で働き始めた。日本語が不自由で指示がうまく伝わらないことへのいらだちからか、程なくして数人から暴行を受けるようになった。
男性によると、頭をこづかれる程度から次第にエスカレート。移動中の車内で日本語で「分かりました」と何度も言わされ、「声が小さい」などと肩や腕を殴られた。車内で脚の辺りをつねったりたたかれたり、事務所で2人から挟まれて逃げられないようにされ、執拗(しつよう)に腹や腰を蹴られたこともある。
20年9月には、トラックの荷台に上って作業しているところを2人からほうきや棒で頭や尻を何度もたたかれた。別の日に安全靴で脇腹を蹴られた際には、医療機関を受診すると、あばら骨が折れていた。
男性はベトナムで工場に勤めていたが、給料が安く、妻と5歳の娘を残して日本に来た。現地の送り出し機関に手数料100万円を支払うため多額の借金をしており、会社を辞めればそれを返せず、家族への仕送りもできない。外部に訴えたら仕返しが怖い。「我慢するしかなかった」と言う。
21年6月、意を決して監理団体の通訳をしているベトナム人に連絡。フェイスブックに残っているやりとりの記録によると、監理団体の担当者が会社に話をし、会社が日本人従業員に注意すると言った、という。
ただ、その後も暴行は止まらなかった。
男性は同10月、フェイスブックで知り合ったベトナム人を通じて実習生を支援する福山市の労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」に相談。同労組のシェルターに身を寄せた。
暴行の一部は同僚の実習生が動画に撮っており、同労組は「実習生を守るべき義務を果たしていない」として、会社と、会社を監査する立場の監理団体に謝罪や慰謝料を求めている。
外国人技能実習機構も11月、男性に事情を聴いた。同機構広島事務所(広島市)は取材に「個別案件には答えられない」としているが、同労組によると、機構は監理団体から報告を受けていないと説明したという。
取材に対し会社の代理人の弁護士と監理団体は「事実関係を含めてコメントしない」としている。
弁護士連絡会 指宿共同代表「実習生の安全守られず」
ベトナム人技能実習生の男性への暴行問題に関して、外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表の指宿昭一弁護士(東京)に背景や技能実習制度の問題点などを聞いた。
―外国人技能実習機構への実習生の相談は2020年度1万3353件。うち3210件が環境が悪いなど「管理」に関する内容だが、暴行がそれにどれだけ含まれるか分からない。
「実習生は送り出し機関に高額な借金をして来日するケースが多く、立場が悪化するのを恐れて実情を訴えにくい状況がある。暴行や暴言の被害はあるはずだが、表面化しにくい」
―制度の問題点も背景にあるのか。
「受け入れ企業を監査・指導する監理団体は送り出し機関と受け入れ企業の手続き業務を行い、それで収入を得ている。信頼できる団体もあるが、厳しい指導がしにくい構造がある」
―外国人技能実習機構はどうか。
「17年に発足し約590人の職員がいるが、実習生や監理団体の増加に対してマンパワーが不足している。実習生の失踪が多いのは、劣悪な環境に置かれても改善するチェック機能が働いていないことも大きい。現行制度では実習生の安全が守られていない」
技能実習生の受け入れ 主に各国の送り出し機関が募集、選考した技能実習生を日本側の窓口に当たる監理団体が実習先の企業などに仲介する。監理団体は企業での実習状況を定期的に調べ、適切に行われているか確認し、法務省と厚生労働省が所管する外国人技能実習機構に報告する義務がある。出入国在留管理庁の2021年6月末時点の統計によると、国内の技能実習生は計約35万4千人(岡山県内9043人)。
(2022年01月14日 05時00分 更新)
by hiroseto2004
| 2022-01-16 12:42
| ジェンダー・人権(労働問題)
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