ウィーン宣言と行動計画を採択 核兵器禁止条約締約国会議
2022年 06月 24日
ロシアによる軍事侵攻によって、核兵器が使用されることへの懸念が高まる中で開かれた核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、3日間の日程を終え、「核なき世界」の実現を目指す「ウィーン宣言」と、具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」を採択して閉幕しました。
オーストリアの首都ウィーンで今月21日から開かれていた核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、最終日の23日、「核なき世界」の実現を国際社会に呼びかける「ウィーン宣言」と、核廃絶に向けた具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」を採択し、閉幕しました。
このうち「ウィーン宣言」は、ロシアの名指しは避けながらも、「核兵器を使用するという威嚇に憂慮し落胆している。いかなる核による威嚇も明確に非難する」として、核の使用や威嚇を行わないよう強く求めています。
そのうえで、「核兵器の存在はすべての国の安全とわれわれの生存を脅かしている。核兵器は不名誉で正当性がないという、国際規範を築く」と訴えています。
また「ウィーン行動計画」は50の項目からなり、条約の締約国を増やすために取り組むことや、被爆者や核実験の被害者への支援や救済を進めることなどが盛り込まれています。
さらに、核保有国に核軍縮の取り組みを課すNPT=核拡散防止条約との関係については、「禁止条約とNPTは補完し合う関係だ」として、「2つの条約の調整役」を任命するとしています。
初めての締約国会議には、条約を批准した国に加え、条約に参加していないNATO=北大西洋条約機構の複数の加盟国もオブザーバーとして出席し、3日間にわたって合わせて80か国以上が議論を行いました。
議長を務めたオーストリア外務省のクメント局長は、「各国が協力して成果を上げ、条約に懐疑的な国も議論に参加したことが重要だ。今後は条約を軽視することが難しくなるだろう」と述べ、会議の意義を強調しました。
世界の核軍縮をめぐっては、ことし8月、7年ぶりにNPTの再検討会議も開かれる予定ですが、ウクライナ情勢を受け、核保有国同士の対立が続く中、行き詰まった核軍縮の方向性を示すことができるかが問われることになります。
ウィーンで開かれていた核兵器禁止条約の第1回締約国会議は最終日の23日、核廃絶への決意を示す政治宣言と、批准国の方針を記した「ウィーン行動計画」を採択し、閉幕した。宣言では核保有国の「核の傘」の下にある国も「真剣な対応を取っていない」と批判。一方で、核保有国との対話もめざす内容になった。
3日間にわたる今回の会議は、ロシアが核兵器の使用をちらつかせる中で開かれた。核抑止の議論が盛んになり、核軍縮をめぐる各国の分断も広がる。
政治宣言は「核兵器の完全な廃絶を実現するという決意を再確認する」とうたい、核禁条約を「基礎となる一歩」と表現した。核兵器の人道的影響については「壊滅的で対処することができない」とした上で、核兵器を「生命に対する権利の尊重とは相いれない」と断じた。
核抑止論は「地球規模の破滅的な結果をもたらすリスクを前提としたもの」として、「誤りだ」と批判。核保有国や「核の傘」にある同盟国について「真剣な対応を取っていないどころか、核兵器をより重視している」と訴えた。
一方、ロシアを名指ししての「核の脅し」に関する文言は入らなかった。
行動計画は、条約の批准国を増やす道筋▽核廃絶への取り組み▽核被害者への支援▽条約の効果的な履行に向けた科学的、専門的助言の制度化▽核軍縮・不拡散体制における核禁条約の位置づけ――から構成され、計50項目ある。
行動計画の採択に先立つ23日の議論では、核関連の専門家最大15人による「科学諮問グループ」や、核保有国が参加する核不拡散条約(NPT)との協力分野を探る「非公式ファシリテーター」を設けることを決めた。専門的な知見をとり入れながら、核軍縮・不拡散体制の礎であるNPTの補完をめざす。