「お腹が空いて盗ってしまった」140円のパン1個を万引きした男性(62) 月3万円の年金が底をつき これは日本のデモクラシーの敗北だ
2023年 09月 25日
しかし、現代日本においては、政治・行政の失敗であり、それはつまるところ日本がデモクラシーを取る以上、日本のデモクラシーの敗北です。
140円のパンを盗まないといけない状況にこの男を追い込み、解決を裁判官の「大岡裁き」に依存するようなこの国のデモクラシーの敗北だと思います。
“最終手段” その先に待つ壁
住居や食事が与えられる、更生緊急保護の活用というのは、いわば最終手段。あまり無いケースだ。
事件を担当した弁護士に話を聞いた。
今回の裁判のように、社会復帰を前提とした判決が予想される場合、弁護側は再犯防止を見据えた主張が重要となる。
ただ“一般論”との前置きをした上で、弁護士は続ける。
「身寄りのない人の場合、特に住所確保のハードルが高い。例えば、ホームレスのような人物に部屋を貸してくれる人は少ない」
身寄りのない人が逮捕・起訴されても、住居があったり、また確保の見通しがあったりすれば、社会復帰後に生活保護などで暮らしを立て直していくことを法廷で主張できる。
だが、男性は実家を離れ「住所不定」の身。
「生活保護を申請するにしても、住所は必要になる。この壁は、かなり大きい」
生活保護の先にある“最終手段”。それが、住居などが与えられる更生緊急保護なのだ。
固定化される再犯者
「更生緊急保護を利用して施設に入ることは、本人の申し出があれば可能。重要なのは、施設を出たあとだ」
こう指摘するのは、制度を所管する法務省の担当者だ。
「近年は、施設を出た人を訪ねるフォローアップを行っている。話し相手になったり、生活の相談に乗ったりする。地域の繋がりが希薄になって久しいが、『孤独』と『孤立』が再犯を招く。『居場所』と『出番』を作り出すことを意識している」
法務省の「犯罪白書」によると、刑法犯の認知件数は、2002年の285万件をピークに減少を続けていて、2019年には74万件で戦後最少となった。一方で、更生緊急保護の利用者数は、2019年時点で、全国で約2,100人。ここ20年、ほぼ横ばいで推移している。考えられる背景のひとつに「再犯者の固定化」が挙げられるという。
「薬物や酒などに起因する犯罪に手を染めた後、施設に入所した人には、専門的なカウンセリングや教育プログラムを実施している。しかし、生活に困り盗みを働いた人に対しては、治療という考え方が取れないので…法務省としてできることは、就労支援ということになる」
男性の担当弁護士も、万引きなど「小さな犯罪」を繰り返してしまう人には、ある傾向が見られると話す。
「話し方や受け答えに違和感を覚えて、医師の診断を仰いだところ、発達障がいだと判明するケースはとても多い。他人とのコミュニケーションがうまく取れずに仕事を続けられず、困窮して犯罪に走ってしまう理由は障がいの影響だったのだと、逮捕されて初めて明らかになる」
ただ、それが裁判で考慮されることは無いという。
「発達障がいは、心神耗弱や心身喪失のように明文化されたものではないので、減刑の理由には一切ならない。むしろ、社会復帰後の支援などを主張する必要がある」