南アフリカ、イスラエルが「ジェノサイド行為」と国際司法裁に訴え
2024年 01月 08日
南アフリカ政府は29日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で「ジェノサイド(大量虐殺)行為」を繰り広げていると主張し、国際司法裁判所(ICJ)に対応を要請した。
ICJは、武力紛争の際に適用されるジュネーヴ諸条約にもとづく義務にイスラエルが違反しているとの主張が提起されたことを認めた。
イスラエルは南アフリカのこの主張について、「事実無根」だとして強く反発。イスラエル外務省は、「南アフリカが広める血にまみれた誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)を、嫌悪しながら拒絶する」と述べた。
オランダ・ハーグに設置されているICJは、国連の主要な司法機関。国家間の紛争を国際法に従って解決するほか、国際的な法律問題について勧告的意見を与える。
南アフリカ政府は声明で、自分たちには「ジェノサイドを防ぐ」義務があると主張。「南アフリカは、ガザ地区に対してイスラエルが現在続ける攻撃に巻き込まれた民間人が、武力の無差別行使と住民の強制移住によって受けている被害について、深刻な懸念を抱いている」と表明した。
「さらに、人道に対する犯罪や戦争犯罪など国際的犯罪が繰り広げられているとの報告が相次ぐほか、ジェノサイドやそれに関連する犯罪の定義に見合う行為が、ガザで続く虐殺の一環として行われた、あるいは今も行われている可能性が、相次ぎ報告されている」と、南アフリカは指摘した。
ICJに提出した84ページにわたる文書で南アフリカは、「イスラエルによる行為や不作為」は、「パレスチナの民・人種・民族グループの相当部分の破壊を意図しているため、その性質上、ジェノサイド的」だと主張している。
南アフリカはICJに、来週にも審理を開き、ガザでの軍事行為を全面停止するなどの「暫定措置」をICJとしてイスラエルに要請するよう求めた。
これに対してイスラエル外務省のリオル・ハイアト報道官は、南アフリカの主張は「(ICJを)悪用する、侮蔑に値するおぞましい行為」だと強く反発。南アフリカは「イスラエル国家の破壊を呼びかけるテロ組織に協力」しており、「ガザ地区のパレスチナ人の苦しみ」は、「住民を人間の盾として使い、人道援助を物資を盗む」イスラム組織ハマスの責任だと主張した。
「イスラエルはあくまでも国際法を重視し、国際法を順守しながら行動している。イスラエルの軍事的行動はハマスのテロ組織とハマスに協力する他のテロ組織にのみ向けられている」
「ガザ地区の住民が敵なのではないと、イスラエルは明示してきた。無関係の人たちへの危害を最小限に抑え、ガザ地区に人道援助物資が入れるよう最大限の努力をしている」とも、イスラエル外務報道官は述べた。
南アフリカ政府はこれまで、ガザにおけるイスラエルの軍事作戦を厳しく批判してきた。11月初めにはイスラエルから自国外交官を全員呼び戻した。イスラエルはこれを受けて、自国大使をプレトリアから帰国させた。
さらに、南アフリカ国民議会はイスラエルとの外交関係を全面停止するよう議決したが、政府はまだ正式に対応を回答していない。
南アフリカは今回のICJへの要請に先立ち、11月には国際刑事裁判所(ICC)にも、イスラエルがガザで戦争犯罪を行っていると訴えた。ICCは集団殺害犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪など、国際社会全体にかかわる最も重大な犯罪に問われる個人を訴追する。
イスラエルはICCに加盟していない。
イスラエルとハマスの今回の戦争は10月7日、ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて始まった。イスラエル南部への攻撃でハマスは、民間人を中心に約1200人を殺害し、約240人を人質にした。
これを受けてイスラエルがガザ地区に攻撃を開始。ハマスが運営する現地の保健省によると、ガザでは女性や子供を中心に2万1500人以上が死亡している。