兵庫県知事選挙 狂騒曲(選挙後編) 本紙関西支局鈴木記者
2024年 12月 05日
兵庫県知事選挙 狂騒曲(選挙後編)
兵庫県知事選挙は票が開く前の20時に出口調査のみで「瞬殺」を決めるほどの斉藤元彦氏の圧勝だった。これでノーサイドとし県一丸となって改革に進んで行くのが筋なのだが、パワハラ、キックバック問題を検証する百条委員会は進行中だし、第三者委員会も開かれる。敗れた稲村和美氏の陣営は、「斉藤候補と争うと言うより何と戦っているのかわからなくなった」と敗因を述べた。

誹謗中傷にさらされた県議たち
早速、ハレーション(混乱)が起こった。18日姫路市選出で百条委員でもある竹内英明県議が辞職。所属会派のひょうご県民連合の議員によると選挙期間中SNS等による攻撃があり自宅にも押しかけられ竹内氏や家族は長期間自宅に缶詰にさせられ「これ以上やると家族を守れない」と判断し辞職を決断したという。同じく百条委員長でもある奥谷謙一県議(自民党)もN国の立花氏が自宅前での街宣をやり数時間がなり立てた上、呼び鈴が一日中鳴り続けた。奥谷氏も同居する母親を避難させて「こうしたことがまかり通ると家族を守れない」と発言したが立花氏は「それがいやなら議員になるべきではない」と返した。他の百条委員も「事務所や自宅の近くで他県ナンバーの車が長時間止まっていた。」「スマホを持って事務所を探していると思われる妙な人を何度も見た」と言った発言が相次いだ。また同じく誹謗中傷にさらされた百条委員でもある丸尾牧県議も訴訟を準備しているが裁判費用にカンパを募ったことからまたも誹謗中傷にさらされた。そうした県議は百条委員を含め複数いる。しかも「丸尾、竹内氏は告発文書の作成に関わった件で県警の聴取を受けており近日中に名誉毀損で逮捕される」と言う話まで飛び交っている。実際は最初の告発文書で兵庫県警が広域通報に当たる恐れがあるとして告発を受理していないのだが。
さらに落選した稲村和美氏も「選挙結果には異議は一切ない」としながらも、デマがまかれたことや選挙期間中にXアカウントが二度にわたって凍結されたことに言及し一部は告発するとしている。陣営幹部は「ファクト(事実)を確認すればすぐにわかるデマを大量にばらまかれた。YouTubeなどで発言者が『自分だけが真実を知っている』という感じで言っているから始末が悪い」とこぼしていたことを思い出す。

怪気炎を上げる立花孝志氏
斉藤氏をサポートした立花氏は稲村氏をサポートした21人の市長を叩き潰すとして「地域政党“真実正義党”を作って市長候補を擁立する」として手始めに25年1月に行われる、自身の両親の出身地で幼いときによく訪れた南あわじ市長選挙に立候補することを表明した。その前に12月に行われる出身地の泉大津市長選挙にも立候補を表明している。また来年4月に伊丹市長選挙が行われる。藤原保幸現市長が稲村氏を支持したが、立花氏はその候補者に伊丹出身のガーシー(東谷義和 元参議院議員)を指名している。
斉藤氏は19日に初登庁し当選証書を受け取り入庁時には多くの県職員の拍手に花束を受け取るなどをしていたが、職員の心中はいかばかりか? ここでも抗議プラカードが見受けられた。
選挙違反疑惑?
だが混乱がさらに起こった。斉藤氏をサポートしたPR会社で広島県の仕事も請け負っているPR会社「merchu(メルチュ)」の代表 折田楓(かえで)氏がNoteで「斉藤氏のSNS戦略、広報全般に関わった」と明かした。ただこれが事実とすれば業務でやれば選挙違反、ボランテイアで選挙に関わっても会社として兵庫県の仕事を請け負っており諮問委員も務めているので利益相反の疑いも強くなる。12月3日の時点選挙中の収支報告を公表し「違反はない」としているが、すでに弁護士などにより刑事告発されており予断を許さない。
元県民局長の私的データー公表も
さらに立花氏は爆弾データーといえる元県民局長の不倫の証拠とされるPCデーター(但しファイル名の表示されたファイルマネージャーの画像だが)を暴露してしまった。ただ不倫の相手とされる元県職員の実名まで明かしておりこれも騒動が予想される。
だがそれにも矛盾点があり(特に不倫のデーターのタイムスタンプが副知事がPCを“押収”したとされる3月25日の午前以降の時間帯ですべて同じ時間)信憑性に多くの指摘がある。最近になって立花氏は過去に県民局長に対しての発言(不倫の人数や犯罪があったか)の一部を取り消しだした。このあたりは現在進行形なので続報を待ちたい。
ネットSNSの効果と「怖さ」
2013年に選挙運動にインターネットが解禁されたが当初は戦略的な使い方を模索していた状況で期間中にHP更新や街頭演説のライブ配信などネットを「使っただけ」の候補者が多かったが、13年参議院選挙での山本太郎氏(当時無所属 現れいわ新選組党首)がネットでボランテイアを大量募集に成功し、ツイッター(現 X)のフォロワーを増やし知名度アップで当選につなぐことが出来た。 だがその流れを変えたのは今年7月の東京都知事選挙での石丸伸二氏で猛暑を考慮し短時間の街頭演説を繰り返し詳細をスマホで説明と街頭にQRコードを提示した。それがあたり落選したとは言え当選した小池百合子氏に続く時点に滑り込み、野党共同候補の蓮舫氏を上回った。だがネットが絶対というわけではなく、石丸氏が街宣しなかった多摩地区(青梅市など)は蓮舫氏が石丸氏を上回っていた。このあたりは石丸氏の選挙を仕切った選挙プランナーの藤川晋之介氏曰くは「石丸現象はテレビや新聞とリンクしていた」と語る。だが今回の兵庫知事選挙はネット情報が一人歩きした感が強く「危ないものを感じる」としている。実際ネットの意見を否定するつもりはないが、今回は刺激的なもの、過激なもの程受け入れられた感が強く、斉藤氏も当初「パワハラなどがあったかは(百条委員会などの)第三者に委ねたい」としていたのが選挙終盤には「パワハラおねだりはなかった」にすり替わった。ただおねだりはグレーだがパワハラは8月の百条委員会で「行き過ぎがあったとしたら謝罪したい」と一部を事実上認めているのだが。さらに現時点で百条委員会が最も指摘したのは「法で禁じられている告発者捜し」をしてしまったことで、これすらも多くの県民に届かず「斉藤悪くない」にすり替わった感は否めない。 また県民に分断が起こった事も否定出来ない。これからどうなるかわからないが、知事の県政運営が厳しくなり状況は予断を許さないことだけは間違いない。