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庶民派知事で何があっても心配いらない広島を ヒロシマ庶民革命


by hiroseto2004

非常勤公務員に春を!

2007年は、「ワーキングプア」が大問題となりました。民間だけでなく、公務分野でも、同じ問題が起きています。すなわち、非常勤公務員は、非常に不安定な立場におかれているという問題です。

非常勤公務員は、とくに、行政の現場を担う部門の女性に多くいます。現に入庁8年になる私が知る限り、私が就職してから、男性の非常勤職員と同じフロアで仕事をしたことは一度もありません。私が知る非常勤職員は全て女性でした。

彼女らは、雇用が不安定なために立場が弱く、後で述べるように、面倒な仕事を押し付けられる実態もよく聞きます。

□民間と比べても不利な非常勤公務員

さらに、雇い止め(契約更新拒否)をされた場合も不利です。

民間の場合は、(もちろん、裁判に訴えること自体が大変ではありますが、)裁判に訴えれば契約更新への「期待権」を認められる=原告勝訴のケースも多いのです。

ところが、雇い主の被告が行政の場合は、旧来の判例を見ると、圧倒的に原告不利です。JANJANでも何度も紹介された、「館長雇い止め・バックラッシュ裁判」でも、(原告の三井マリ子さんは公務員ではなく民間の財団職員だが、男女共同参画行政を担い、市が事実上人事権をもっていた)大阪地裁は、原告側が主張した、期待権を認めませんでした。

そうした中で、非常勤職員が産休を申請したとたんに雇い止め、などということまで横行しています。

また、頼みの労働組合も、最近までは、問題があった。私は、行政現場で働く女性の知人から、組合幹部も含めて、正規職員が、非常勤職員に面倒なことを押し付けているという話をうかがいびっくりしたことがあります。非常勤職員も正規職員と同じような事務分担をしているのですから、みんなが各自ですべき、ゴミ捨てや、茶碗洗いまでさせているというのです。

□当局の現場軽視と正職員にも回る付け

当局は、現場へ行けばいくほど、非常勤職員で賄おうとする傾向が強い。そして、当局は、安易に現場を考えています。ひとつは「どうせ女性の仕事だから」というジェンダーバイアス。もうひとつは、近年のネオリベラルないしネオコン政治による、知的労働は正規雇用、単純労働は、非正規労働で、という安易なレッテル張りです。むろん、これにもジェンダーバイアスが含まれており、女性が多い仕事は有無を言わさず「単純労働」とみなされ、切り捨てられている観があります。

明石市では、消費者相談員を、雇い止めにしようと当局が画策しました。相談員たちが組合を作り、闘ったため、雇い止めは回避されましたが、もし、強行されていれば、経験の蓄積が重要な相談業務に大変な支障が出ているところでした。

広島県内陸部のある自治体では、保育士の多くを、非常勤に切り替えています。正規職員の保育士にもそうなると負担は重くなり、若手でも、管理職のような役目を強いられている、あるいは、正規職員と非正規職員の間の差別的関係を子どもたちが鋭敏に感じ取り、非正規保育士の指示は聞かなくなり、収拾がつかないなどの弊害が出ています。

12月29日付の朝日新聞は、竹信三恵子編集委員の署名入り記事で、全国の女性センターにおける、女性の低賃金労働の実態を告発しています。女性センターといえば男女平等が目的なのに、女性が低賃金と言う矛盾した実態です。

現場を非常勤職員ばかりにすると、どういうことがおきるか。結局、政策立案過程に影響力を持つ正規職員は、いわゆる「いい大学の文系学部を出た事務職」ばかりになる傾向が結果として強まる。ところが、野球が四番打者ばかりを揃えても野球にならないように、事務職ばかり揃えても、多様性に欠き、職場としても魅力がなくなってきます。「総合力」が低下するのです。

12月29日の中国新聞によると、広島県内のある自治体では、大卒行政職を7月と9月に二度も募集しても、民間に人材が流れ、欠員が出てしまっています。その上のほうには、全国的にも教員や職員の精神疾患での病気休職者が激増中と言う趣旨の記事が載っていました。

身分が安定しているはずなのにそこに人材が来ないのは、若者が鋭敏に、当該自治体の魅力のなさ、「総合力の低下」を感じ取っているからだ、と私は考えています。そして、在籍している正規職員もストレスを強く感じるということなのでしょう。

□2007年に入り判例に変化

ただ、2007年に入り、変化が見えてきました。

2007年の10月2日、山梨県昭和町の町立プールの嘱託員2名が訴えていた事件で、原告勝訴が一審、二審に続き、最高裁で確定しました。2審判決によると、女性2人は93年から町立温水プールで嘱託職員として働いていましたが、佐野精一町長(当時)の家族のうわさを触れ回ったなどとして、町長から03年3月末での退職を言い渡されました。女性側が町に理由を求めたところ、職務怠慢や金銭的な不正があったと事実無根の理由を示されました。1審、2審とも「人格的利益を著しく侵害した」として、町に慰謝料支払いを命じていましたが、その判決が最高裁で確定したのです。

中野区の非常勤保育士が訴えていた事件では、東京地裁では損害賠償金額が一人40万円と非常に低額でした。しかし、東京高裁で、11月28日、地位の確認自体は認めませんでしたが、原告4人に対し、それぞれ110万円から220万円という画期的な金額の賠償を認めました。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071221103513.pdf

「一審原告らが再任用されるとの期待は,法的保護に値するというべきであるところ,一審被告は一審原告らを再任用せず,一審原告らの上記期待権を侵害したのであるから,一審被告は,一審原告らに対して,その期待権を侵害したことによる損害を賠償する義務を負うべきである」としたのです。

また、同判決では、非常勤公務員が民間と比べても、不利であることを非合理と断じ、。「反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても,実質面に即応した法の整備が必要とされる」と、立法措置を講ずるよう政治に求めています。

行政相手の裁判といえば、三国志の蜀漢の宰相・諸葛孔明の「北伐」と一緒で、上級裁判所=後になればなるほど、原告不利、被告の行政(三国志で言えば魏軍・司馬仲達)有利、というのが常識です。地方裁判所=228年の街亭の戦いで勝てなければ、あとは絶望的。最高裁はいわば、「五丈原の戦い」(234年、孔明が病死)と一緒で、被告=仲達はひたすら守りを固めれば(よほどのミスをしない限り)勝ちであり、原告=孔明にほぼ勝ち目がない。しかし、その常識が覆りつつあります。

□政治の変化で春をもたらせるか?

また、以下のような世相の変化もあるのでしょう。

すなわち、まず、貧困問題に対して立ち上がる動きの広がりです。平和運動は盛んだったが、貧困問題に対する運動は、一部の政党の支持者の間を除き、弱かったのが実態です。運動があっても与野党とも党の色があり、普通の人には近づきにくかった。

しかし、それが若者や女性を中心に、要求に基づいた運動が広がった。

 さらにその突き上げを受けて、民主党及び、連合も変化した。今年の参院選では、民主党も従来は「自民党よりネオコンじゃないか」と一部の組合員からさえ酷評されていた経済政策を社民主義的に改めた。民主党は、苦手とされた女性に食い込むため、女性候補の数を一挙に増やし、中国地方においては、5人中3人(民主党が推薦した国民新党公認候補も含む)が女性でした。

そして、参院選での例えば自治労の組織内候補は、非常勤出身の女性のあいはらくみこさんで、このことが、明白に求心力につながり、票を以前の男性候補(その候補が悪かったということではないが)より大きく伸ばしたと考えられます。このこと自体が、非常勤公務員の代表が国会に入ったということで、小さな一歩ではありますが、今後に期待したいと思います。

それのことにより、民主党も自民党との違いが鮮明になり、共産党や社民党支持者も選挙区では民主党候補への協力を自発的に行ったこともあり、民主党が自民党に「KO勝ち」した。あるいは、大阪市長選挙などに見られるように、民主党が自治体でも自民党政権を打倒するため独自候補を立て、「自民党+官僚長期独裁政権」を現に打倒している地域も出ている。

こうした変化を見て、裁判官たちも、微妙に心理の変化はあったと思います。そうはいっても、政治の中で、物事がどう扱われるかは、判例にも影響します。(大昔、女性議員もろくにいなかった時代は女性への露骨な差別が、「公序良俗」として正当化されていたことを思い出してください。)

さて、そもそも、公務員のトップたる国務大臣なり、首長なりは、日本国憲法における生存権なり労働権を率先して守る義務があります。女性の人権を推進する部署のトップなら、女性の権利を守る義務が特に重点的にあります。そして、それなくして、どうして格差社会が是正できるか。憲法を実現する行政が出来るか。

日本国憲法
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

それが、民間以上に、義務を免除されているようないままでの法体系は、不備である。東京高裁が要求しているように、早急に、立法措置をすべきだと考えます。そもそも、できる限り、現場サービス部門について、欧州で行われているような同一価値同一賃金の精神に基づき、正当な評価を行い、雇用の安定化を行うようにすべきでしょう。

新春ですが、非常勤公務員に春が来るようにするよう強く求めます。


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by hiroseto2004 | 2007-12-29 21:29 | ジェンダー・人権 | Trackback(4)