怒りの余り大事なものを忘れるな
2008年 01月 18日
先日、私は、ぶらりとある労働運動・平和運動の大先輩を訪ね、話す機会がありました。
彼は長年広島の労働組合を中心とした平和運動で活躍し、今も後輩の援助に当たっておられます。
戦時中生まれだが、1960年代初めからずっと広島の労働運動を見てこられた。まさに生き証人です。
彼は昔はそうはいっても社会主義、私はどちらかといえば穏健なリベラルですが、私にとっても重みのある話です。まさに温故知新です。
私「Aさん、しかしひどいですね。福田(総理)も国民はなめすぎです。しかし、国民も大人しすぎるんじゃないですか?」
Aさん「さとう君。国民は怒ってこなかったわけじゃないんだよ。そうじゃあない。それなりに戦い、要求を勝ちとってきた。しかし、「要求が通った」と思ったら危ないんじゃ」
私「あっ!」
私は自分の浅はかさを恥じました。だが冷静に歴史を思い返せば、そうなのです。
私は実はそのとき最近、取り組んでいる非正規雇用の問題、とくに女性への賃金差別についての問題について、話そうとしていたのです。
Aさんは私も会員のグループの機関誌を私から受け取った。
Aさん「さとう君。もともと格差はなんで起きたかわかるか?」
私「ええと、やはり日経連が1995年に新時代の日本的経営を打ち出して以降ひどいですよね。」
Aさん「ああ。だがそれは「総人件費」の抑制のためだろ。労働者をばらばらにして」
私「ええ。賃金総額は1997年の二百二十兆円から今は二百兆円に落ちました。」
Aさん「そのことをきちんといわないといけない」
私「私は口を酸っぱくしていってます。」
Aさん「君は分かっているが世間の人はどう思ってるか?たとえばだよ。やはり男女雇用機会均等法は毒饅頭という面もあった」
私「女性たちも労組も「雇用平等法」を求めてましたね」
Aさん「その通りじゃ。しかし見てみい。パートを会社が増やしただけやないか?」
私「ええ。言い逃れですよね。この人は女性だからじゃない。一般職やから、パートやからで賃金を抑えた。それが今の非正規雇用拡大につながった」
Aさん「ああ。しかしなあ、あのころはもう労組はだいぶ弱まってしもうた。」
私「ええ、いわゆる鈴木さんから中曽根さんの土光臨調行革路線において、国鉄と電電公社が民営化され、労組の主力だった国鉄労組も全電通もばらばらになりました」
Aさん「1960年代に組合が強い時代はね、まだ、パートの女性をきちんと正社員にさせてたんよ」
わたし「あっ、そうですね。県庁でも、1960年代はじめ入庁の人は女性では結構、最初非正規ていう人いますよ」
Aさん「そう。そのとおり。いつからかそれをいわなくなった。それで分断された」
私「ああ、それで女性たちも、「労組が男性のことばかりやる、女性のことやってくれない」と不満に思い、しまいに小泉さんが格差をなくしてくれると勘違いする人もでた。とくに民社党系の労組なんかとくに男性従業員中心でしたから。
大手企業に依存した社民主義というか。春日一幸さんに言わせれば、民社党の社は会社の社でしたからね。民社党とか労組の言う社民主義に女性や若いものが不満を持つのは、小泉さんを支持してしまったのは仕方ないでしょう。」
Aさん「でもね。いま格差是正といっておろう。自民党も財界さえも。こういうときこそ気をつけんといかん」
私「そうですね。格差是正と称して全体を下げるとか。福田さんが「男女共同参画」というのを聞いて安心しかかっていたが、油断すると危ないんじゃないかと思いました。」
Aさん「向こう(自民党)が共同参画といってきた時はあぶないんよ」
Aさんに言うと怒られるのでそのときは言いませんでしたが私も小泉政権末期には、内心、男女平等を進めつつ格差を拡大したように見えた小泉純一郎さんに憤激するあまり、西村真悟さんをケインズ主義だからといって過度に持ち上げるなどの誤りを犯しました。
逆に西村さんの男女平等に逆行する古臭い発言を知ってしまってからは、彼への反発のあまり、前よりケインズ的主張を抑制してしまった感はあります。
憤激のあまり、勢い余ってしまったと冷や汗です。
Aさん「だからね。きちんと要求したら相手に悪用されないようフォローせんといけん。何のために何をするか。」
私「そりゃ労働者国民がまず飯が食えて、平和であることでしょう。」
Aさん「大きなところの目配りを忘れてはいかん。まあ、しかしそのためには、きちんと労働運動が規制力を働かせないといけない。」
私「ですよね。今また就職は売り手市場などというけど、労働運動の力ではないですからね。残念ながら。経営側が好き勝手しすぎて内需が低迷したことに気づいただけで。」
いろいろ労働組合に対する批判はある。
しかし私は昔の労働組合がきちんとアルバイトを正規に登用することをしていたのを知った。
景気の悪かった就職氷河期に新卒で就職できなかった人は今もがいています。なかなか正社員にしてくれない。でも1960年代なら職場に特に総評労組があればアルバイトから正規雇用になれたのです。
確かに昔は男女の定年差別などひどかった。
しかし、単純に昔の方が悪かった、ひどかったとだけは言い切れない。
むしろ、組合が弱くなると正社員を守るだけで精一杯になり、ますます世論の支持を失うという悪循環になっていたのでしょう。
あるべきは労働組合のバージョンアップ。
批判のあまり、小泉純一郎さんらネオリベラルを助け、国民全体の生活を引き下げるるようなことを結果として招かないよう注意したいものです。
「憤激の勢い余って」却って逆の結果を招くということのないようにしたいものです。

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彼は長年広島の労働組合を中心とした平和運動で活躍し、今も後輩の援助に当たっておられます。
戦時中生まれだが、1960年代初めからずっと広島の労働運動を見てこられた。まさに生き証人です。
彼は昔はそうはいっても社会主義、私はどちらかといえば穏健なリベラルですが、私にとっても重みのある話です。まさに温故知新です。
私「Aさん、しかしひどいですね。福田(総理)も国民はなめすぎです。しかし、国民も大人しすぎるんじゃないですか?」
Aさん「さとう君。国民は怒ってこなかったわけじゃないんだよ。そうじゃあない。それなりに戦い、要求を勝ちとってきた。しかし、「要求が通った」と思ったら危ないんじゃ」
私「あっ!」
私は自分の浅はかさを恥じました。だが冷静に歴史を思い返せば、そうなのです。
私は実はそのとき最近、取り組んでいる非正規雇用の問題、とくに女性への賃金差別についての問題について、話そうとしていたのです。
Aさんは私も会員のグループの機関誌を私から受け取った。
Aさん「さとう君。もともと格差はなんで起きたかわかるか?」
私「ええと、やはり日経連が1995年に新時代の日本的経営を打ち出して以降ひどいですよね。」
Aさん「ああ。だがそれは「総人件費」の抑制のためだろ。労働者をばらばらにして」
私「ええ。賃金総額は1997年の二百二十兆円から今は二百兆円に落ちました。」
Aさん「そのことをきちんといわないといけない」
私「私は口を酸っぱくしていってます。」
Aさん「君は分かっているが世間の人はどう思ってるか?たとえばだよ。やはり男女雇用機会均等法は毒饅頭という面もあった」
私「女性たちも労組も「雇用平等法」を求めてましたね」
Aさん「その通りじゃ。しかし見てみい。パートを会社が増やしただけやないか?」
私「ええ。言い逃れですよね。この人は女性だからじゃない。一般職やから、パートやからで賃金を抑えた。それが今の非正規雇用拡大につながった」
Aさん「ああ。しかしなあ、あのころはもう労組はだいぶ弱まってしもうた。」
私「ええ、いわゆる鈴木さんから中曽根さんの土光臨調行革路線において、国鉄と電電公社が民営化され、労組の主力だった国鉄労組も全電通もばらばらになりました」
Aさん「1960年代に組合が強い時代はね、まだ、パートの女性をきちんと正社員にさせてたんよ」
わたし「あっ、そうですね。県庁でも、1960年代はじめ入庁の人は女性では結構、最初非正規ていう人いますよ」
Aさん「そう。そのとおり。いつからかそれをいわなくなった。それで分断された」
私「ああ、それで女性たちも、「労組が男性のことばかりやる、女性のことやってくれない」と不満に思い、しまいに小泉さんが格差をなくしてくれると勘違いする人もでた。とくに民社党系の労組なんかとくに男性従業員中心でしたから。
大手企業に依存した社民主義というか。春日一幸さんに言わせれば、民社党の社は会社の社でしたからね。民社党とか労組の言う社民主義に女性や若いものが不満を持つのは、小泉さんを支持してしまったのは仕方ないでしょう。」
Aさん「でもね。いま格差是正といっておろう。自民党も財界さえも。こういうときこそ気をつけんといかん」
私「そうですね。格差是正と称して全体を下げるとか。福田さんが「男女共同参画」というのを聞いて安心しかかっていたが、油断すると危ないんじゃないかと思いました。」
Aさん「向こう(自民党)が共同参画といってきた時はあぶないんよ」
Aさんに言うと怒られるのでそのときは言いませんでしたが私も小泉政権末期には、内心、男女平等を進めつつ格差を拡大したように見えた小泉純一郎さんに憤激するあまり、西村真悟さんをケインズ主義だからといって過度に持ち上げるなどの誤りを犯しました。
逆に西村さんの男女平等に逆行する古臭い発言を知ってしまってからは、彼への反発のあまり、前よりケインズ的主張を抑制してしまった感はあります。
憤激のあまり、勢い余ってしまったと冷や汗です。
Aさん「だからね。きちんと要求したら相手に悪用されないようフォローせんといけん。何のために何をするか。」
私「そりゃ労働者国民がまず飯が食えて、平和であることでしょう。」
Aさん「大きなところの目配りを忘れてはいかん。まあ、しかしそのためには、きちんと労働運動が規制力を働かせないといけない。」
私「ですよね。今また就職は売り手市場などというけど、労働運動の力ではないですからね。残念ながら。経営側が好き勝手しすぎて内需が低迷したことに気づいただけで。」
いろいろ労働組合に対する批判はある。
しかし私は昔の労働組合がきちんとアルバイトを正規に登用することをしていたのを知った。
景気の悪かった就職氷河期に新卒で就職できなかった人は今もがいています。なかなか正社員にしてくれない。でも1960年代なら職場に特に総評労組があればアルバイトから正規雇用になれたのです。
確かに昔は男女の定年差別などひどかった。
しかし、単純に昔の方が悪かった、ひどかったとだけは言い切れない。
むしろ、組合が弱くなると正社員を守るだけで精一杯になり、ますます世論の支持を失うという悪循環になっていたのでしょう。
あるべきは労働組合のバージョンアップ。
批判のあまり、小泉純一郎さんらネオリベラルを助け、国民全体の生活を引き下げるるようなことを結果として招かないよう注意したいものです。
「憤激の勢い余って」却って逆の結果を招くということのないようにしたいものです。

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by hiroseto2004
| 2008-01-18 23:35
| 新しい政治をめざして
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