今国会で問われるべきは「大手企業応援政治」
2008年 01月 26日
道路特定財源について、私は何回か、記事を書いてきました。
与党については、いまさら「環境によいガソリン税」を言い出すのは
何事か?という提起をさせていただきました。
地方自治体に対しては、「本当に暫定税率維持でいいのか」という
問題提起をさせていただきました。
■トヨタ&アメリカ応援で一貫の自民党
最後にやはり、どうしても申し上げねばならないのは、私は「トヨタ
応援政治」の総括をしなければならないと思うのです。
道路の整備により、トヨタをはじめとする自動車会社。そして、
その波及効果で鉄鋼や化学をはじめ素材会社など大手企業は確かに
潤ってきたのは否定できないと思います。経済成長の原動力となったの
は否定できない。
現在、暫定税率維持賛成派も反対派もいかにも「田舎の建設業者」
ないし「自治体」だけが、道路特定財源の恩恵を受けてきたかの
認識を前提としているような感があります。
しかし、私は、むしろ戦後の日本の政治を一貫して貫いている
「トヨタに代表されるような大手企業応援」の政治の是非も
実はこの「道路をどうするか」という問題になってくると
思います。
自民党でも「田中の角さん」に代表されるいわゆる「抵抗勢力」
と、小泉純一郎さんに代表される「ネオコンないしネオリベラル」
の流れがあります。そして実際には多くの政治家が両方の要素を
もっている。都知事の石原慎太郎さんなどは、一見「ネオコン」
に近いが、割合道路整備にも熱心であるなど、「抵抗勢力」の
要素も持っています。
しかし、双方とも結果としては「トヨタに象徴される大手企業」
を「世界一」にするために一生懸命がんばってきた。
「抵抗勢力」は道路整備を通じて、自動車の保有台数の伸びに貢献しました。
一方、とくにバブルの崩壊以降、新規道路建設がさすがに「飽和状態」になった。
自民党、とくに小泉純一郎さんは何をやったか?もう新規道路を加速的につくる
ことは難しい。
そこで、新たな大手企業てこ入れ策として、「為替介入」を行った。
2003年1月から2004年3月にかけ約35兆円のドル買い為替介入を
行い、円安に誘導して、トヨタをはじめとする輸出企業を「援護射撃」
したのです。あるいは、労働の規制緩和もそうです。賃金を抑制しやすくすれば
当然、儲けは大きくなる。むろん、しばらくすれば回りまわって内需は
低迷しますが、そんなことはお構いなしです。
いわゆる9.11総選挙で、当時のトヨタ社長が鉢巻を締めてまで
自民党を応援したのはある意味、当然の「恩返し」だったのです。
自民党の政策決定は、一貫して大手企業の利益中心で、地方の「庶民」はかやの
外に置かれたといっても差し支えありません。ただ、最近は、新規道路の必要性が
薄れた分、地方の建設業者などを「ネオコン・ネオリベラル」が「バッサリ」
きりやすくなったということです。
しかし、為替介入のお金は大手企業を潤す。アメリカにも流れ、投機
マネーに姿を変え、サブプライムローン問題、さらに原油や食料価格引き上げを
招き、日本国民を苦しめている。「トヨタ応援政治の成れの果て」です。
■道路過密国家日本
また、いわゆる「我田引鉄」が批判された時期もあった。政治家が鉄道を引いて
国鉄の赤字を増やした、と。そして中曽根さんが国鉄を民営化した。小泉さんが
規制緩和を行い、バスや鉄道のローカル線を廃止しやすくしてしまった。
だが、冷静に考えると、どうなのか疑問に思えます。
日本の人口密度はたとえば同じ面積のノルウェーなどとくらべれば30倍
高いのです。それだけ、本来は公共交通に有利なはずです。
しかし、人口1000人あたりの自動車は以下です。
2004年
日本が586台、ノルウエーが525台。日本がいろいろな面で明治維新
以来モデルとしてきたイギリスは510台。アメリカが808台と高いのは、
仕方がありません。
なんという「逆転現象」なのでしょうか?
ちなみに道路総延長は、日本が1,177,278kmで一平方キロあたり3.12km。
ノルウエーが91,916kmでなんと一平方キロあたり0.28km。
イギリスが387,674kmで1平方キロあたり1.6km。
アメリカが6,433,272kmで一平方キロあたり0.7km。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/08.htm
「日本ではこれ以上道路を増やすことはいらないのではないか?」ということがいえます。
「道路過密国家」ではないかとおもわれます。
ざっとデータを見ただけでも、自家用車は日本では公共交通より「かなり下駄を履かせて
もらっている」と思えるのです。
地方の場合はいるじゃないか、という反論もある。しかし、私自身が広島県北部などの
山村部も存じている。
道路を新たに作るよりもむしろたとえば災害復旧とか、そちらのほうの予算に四苦八苦
しているのが実態だと思います。
それから、これから、高度成長期に作ったようなインフラの更新時期も来る。わざわざ
道路を新規に作る必要はないと思います。
一方、公共交通の充実や環境対策の強化は、トヨタの逆鱗に触れるかもしれないという
懸念はあるでしょう。
しかし、トヨタだって国が公共交通に傾けば、金も技術も人材も潤沢にあるのだから、
そちらにあわせるくらいの力は持っています。織物機を作っていたのがトヨタの原型
だったことを忘れてはいけない。
■少数政党にも耳傾け議論を
国民新党が1月25日に緊急経済対策を発表しています。
暮らしを守る緊急20兆円経済対策
http://www.kokumin.or.jp/seisaku/20080125.shtml
石油高騰から国民生活と経済を守る緊急経済対策
http://www.kokumin.or.jp/seisaku/20080123.shtml
なお、同党は、暫定税率維持の立場です。
それでは「庶民に辛いではないか」と切り捨てるのは簡単ですが、そうではない。
石油値上がり対策に3.9兆円。また、社会保障の削減撤回と2009年度からの増額。
労働分配率の上昇。国民健康保険料が払えない人には「全額国費」で医療費を出す。
農業の個別所得保障。地方交付税交付金を2000年度の水準まで戻す。
中小企業対策など、まさに「個人」と「地域」に対して優しい経済政策です。
「12 財源措置
以上の財源対策としては、消費税によることなく、経済成長による税収増を基本とし、
緊急の具体策としては、当面、外国為替資金特別会計の積立金・運用収入及び財政投融資
特別会計の金利変動準備金・運用収入等の一部を当てる。」
としています。これは、かつて、私が憲法調査会広島公聴会で意見陳述した際に
も申し上げた話です。ようやく、初めてそれが公党の政策になったのです。
http://www.news.janjan.jp/government/0403/0403172114/1.php
国民新党の理想とする人々の所得が高く、福祉も充実ている国であれば、ガソリン価格
が高くてもなんら問題はないのです。ノルウエーがそうです。
自民党の場合は、ただただ新規道路をつくって利権をあさりたいがために、ガソリン
価格を高くする。そして、福祉も環境も充実させる気は毛頭ない。あるのは「大手企業の
目先の利益」だけだからです。
地方自治体の議員や首長も住民的議論を起こして、認識を共有化してから
国にものを言わないから、世論から「KY」に見られてしまうのです。
道路特定財源については、私個人はやはり本筋は暫定税率はなくすべきだと思います。
しかし、その場合は、石油値上がり対策の費用が節減できます。したがって、
外国為替会計からのお金を今度は地方に回し、地方交付税を増やす、という
手があります。
なくさない場合は、国民新党案による景気対策を実施したうえで、同時に
交通システムや環境、財政についての国民的議論をやっていくべきではない
でしょうか?国民新党もそもそもは大手企業にもっと負担していただくという
案を参院選のマニフェストで出しています。大いに議論は深めるべきです。
世の中にある政党は自民党と民主党だけではないのです。少数政党の意見にも
耳を傾け、事態の打開を図るべきです。

記事へのご意見・ご感想はこちらへどうぞ!
なるほど!と思ったら下をクリックお願いします!



人気blogランキングへ
与党については、いまさら「環境によいガソリン税」を言い出すのは
何事か?という提起をさせていただきました。
地方自治体に対しては、「本当に暫定税率維持でいいのか」という
問題提起をさせていただきました。
■トヨタ&アメリカ応援で一貫の自民党
最後にやはり、どうしても申し上げねばならないのは、私は「トヨタ
応援政治」の総括をしなければならないと思うのです。
道路の整備により、トヨタをはじめとする自動車会社。そして、
その波及効果で鉄鋼や化学をはじめ素材会社など大手企業は確かに
潤ってきたのは否定できないと思います。経済成長の原動力となったの
は否定できない。
現在、暫定税率維持賛成派も反対派もいかにも「田舎の建設業者」
ないし「自治体」だけが、道路特定財源の恩恵を受けてきたかの
認識を前提としているような感があります。
しかし、私は、むしろ戦後の日本の政治を一貫して貫いている
「トヨタに代表されるような大手企業応援」の政治の是非も
実はこの「道路をどうするか」という問題になってくると
思います。
自民党でも「田中の角さん」に代表されるいわゆる「抵抗勢力」
と、小泉純一郎さんに代表される「ネオコンないしネオリベラル」
の流れがあります。そして実際には多くの政治家が両方の要素を
もっている。都知事の石原慎太郎さんなどは、一見「ネオコン」
に近いが、割合道路整備にも熱心であるなど、「抵抗勢力」の
要素も持っています。
しかし、双方とも結果としては「トヨタに象徴される大手企業」
を「世界一」にするために一生懸命がんばってきた。
「抵抗勢力」は道路整備を通じて、自動車の保有台数の伸びに貢献しました。
一方、とくにバブルの崩壊以降、新規道路建設がさすがに「飽和状態」になった。
自民党、とくに小泉純一郎さんは何をやったか?もう新規道路を加速的につくる
ことは難しい。
そこで、新たな大手企業てこ入れ策として、「為替介入」を行った。
2003年1月から2004年3月にかけ約35兆円のドル買い為替介入を
行い、円安に誘導して、トヨタをはじめとする輸出企業を「援護射撃」
したのです。あるいは、労働の規制緩和もそうです。賃金を抑制しやすくすれば
当然、儲けは大きくなる。むろん、しばらくすれば回りまわって内需は
低迷しますが、そんなことはお構いなしです。
いわゆる9.11総選挙で、当時のトヨタ社長が鉢巻を締めてまで
自民党を応援したのはある意味、当然の「恩返し」だったのです。
自民党の政策決定は、一貫して大手企業の利益中心で、地方の「庶民」はかやの
外に置かれたといっても差し支えありません。ただ、最近は、新規道路の必要性が
薄れた分、地方の建設業者などを「ネオコン・ネオリベラル」が「バッサリ」
きりやすくなったということです。
しかし、為替介入のお金は大手企業を潤す。アメリカにも流れ、投機
マネーに姿を変え、サブプライムローン問題、さらに原油や食料価格引き上げを
招き、日本国民を苦しめている。「トヨタ応援政治の成れの果て」です。
■道路過密国家日本
また、いわゆる「我田引鉄」が批判された時期もあった。政治家が鉄道を引いて
国鉄の赤字を増やした、と。そして中曽根さんが国鉄を民営化した。小泉さんが
規制緩和を行い、バスや鉄道のローカル線を廃止しやすくしてしまった。
だが、冷静に考えると、どうなのか疑問に思えます。
日本の人口密度はたとえば同じ面積のノルウェーなどとくらべれば30倍
高いのです。それだけ、本来は公共交通に有利なはずです。
しかし、人口1000人あたりの自動車は以下です。
2004年
日本が586台、ノルウエーが525台。日本がいろいろな面で明治維新
以来モデルとしてきたイギリスは510台。アメリカが808台と高いのは、
仕方がありません。
なんという「逆転現象」なのでしょうか?
ちなみに道路総延長は、日本が1,177,278kmで一平方キロあたり3.12km。
ノルウエーが91,916kmでなんと一平方キロあたり0.28km。
イギリスが387,674kmで1平方キロあたり1.6km。
アメリカが6,433,272kmで一平方キロあたり0.7km。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/08.htm
「日本ではこれ以上道路を増やすことはいらないのではないか?」ということがいえます。
「道路過密国家」ではないかとおもわれます。
ざっとデータを見ただけでも、自家用車は日本では公共交通より「かなり下駄を履かせて
もらっている」と思えるのです。
地方の場合はいるじゃないか、という反論もある。しかし、私自身が広島県北部などの
山村部も存じている。
道路を新たに作るよりもむしろたとえば災害復旧とか、そちらのほうの予算に四苦八苦
しているのが実態だと思います。
それから、これから、高度成長期に作ったようなインフラの更新時期も来る。わざわざ
道路を新規に作る必要はないと思います。
一方、公共交通の充実や環境対策の強化は、トヨタの逆鱗に触れるかもしれないという
懸念はあるでしょう。
しかし、トヨタだって国が公共交通に傾けば、金も技術も人材も潤沢にあるのだから、
そちらにあわせるくらいの力は持っています。織物機を作っていたのがトヨタの原型
だったことを忘れてはいけない。
■少数政党にも耳傾け議論を
国民新党が1月25日に緊急経済対策を発表しています。
暮らしを守る緊急20兆円経済対策
http://www.kokumin.or.jp/seisaku/20080125.shtml
石油高騰から国民生活と経済を守る緊急経済対策
http://www.kokumin.or.jp/seisaku/20080123.shtml
なお、同党は、暫定税率維持の立場です。
それでは「庶民に辛いではないか」と切り捨てるのは簡単ですが、そうではない。
石油値上がり対策に3.9兆円。また、社会保障の削減撤回と2009年度からの増額。
労働分配率の上昇。国民健康保険料が払えない人には「全額国費」で医療費を出す。
農業の個別所得保障。地方交付税交付金を2000年度の水準まで戻す。
中小企業対策など、まさに「個人」と「地域」に対して優しい経済政策です。
「12 財源措置
以上の財源対策としては、消費税によることなく、経済成長による税収増を基本とし、
緊急の具体策としては、当面、外国為替資金特別会計の積立金・運用収入及び財政投融資
特別会計の金利変動準備金・運用収入等の一部を当てる。」
としています。これは、かつて、私が憲法調査会広島公聴会で意見陳述した際に
も申し上げた話です。ようやく、初めてそれが公党の政策になったのです。
http://www.news.janjan.jp/government/0403/0403172114/1.php
国民新党の理想とする人々の所得が高く、福祉も充実ている国であれば、ガソリン価格
が高くてもなんら問題はないのです。ノルウエーがそうです。
自民党の場合は、ただただ新規道路をつくって利権をあさりたいがために、ガソリン
価格を高くする。そして、福祉も環境も充実させる気は毛頭ない。あるのは「大手企業の
目先の利益」だけだからです。
地方自治体の議員や首長も住民的議論を起こして、認識を共有化してから
国にものを言わないから、世論から「KY」に見られてしまうのです。
道路特定財源については、私個人はやはり本筋は暫定税率はなくすべきだと思います。
しかし、その場合は、石油値上がり対策の費用が節減できます。したがって、
外国為替会計からのお金を今度は地方に回し、地方交付税を増やす、という
手があります。
なくさない場合は、国民新党案による景気対策を実施したうえで、同時に
交通システムや環境、財政についての国民的議論をやっていくべきではない
でしょうか?国民新党もそもそもは大手企業にもっと負担していただくという
案を参院選のマニフェストで出しています。大いに議論は深めるべきです。
世の中にある政党は自民党と民主党だけではないのです。少数政党の意見にも
耳を傾け、事態の打開を図るべきです。

記事へのご意見・ご感想はこちらへどうぞ!
なるほど!と思ったら下をクリックお願いします!



人気blogランキングへ
by hiroseto2004
| 2008-01-26 12:17
| 経済・財政・金融
|
Trackback