広島の交通問題(1 )
2008年 02月 23日
広島市・広島県では、1990年代から、交通問題について激しい議論が市長選挙や知事選挙などの折になされてきました。
一つは広島市周辺内部の交通問題。
もう一つは広島と外部のアクセスをどうするか?特に空港をどうするか?
そして、空港へのアクセスをどうするか?の議論です。
今回は広島市周辺の交通問題について取り上げます。
◇広島市の交通の現状
広島の交通の現状を市外の方にも観光の参考になるようわかりやすく説明すれば、以下です。
広島市の南区と東区の境目から、中区北部、西区南部、佐伯区を東西に横切るのがJR山陽線と新幹線。いわゆる旧市内には広島、横川、西広島、新井口があります。本数は一時間に数本と多い。
一方可部線が広島始発に横川経由で、可部まで伸びます。1時間に数本ありますが、いまだに単線です。
昔は可部からさらに三段峡までありましたが、小泉純一郎政府が撤退の自由を事業者に認めたことを契機に、自治体の存続運動にもかかわらず、2003年11月に廃止されました。
広島駅からは芸備線が北東に三次へ向けてのびます。東区から安佐北区を経由します。単線のディーゼル車です。安佐北区の狩留家までは1時間に数本ありますが、そこから先は1時間に一本か二本です。
南東へは、海田市で山陽線から別れて呉線がのびます。
原爆ドームや県庁、市役所がある中区はJRの駅は一つもありません。そのかわり、全国でも有名な広島電鉄が中区から西区東部には網の目のように張り巡らされています。
広島から紙屋町経由南区の宇品行き、広島から西広島行き、ないしそのまま宮島行き、広島から紙屋町、原爆ドーム前経由で江波行き、横川から江波行き、横川から紙屋町経由市役所方面、広島から比治山下経由広島港行き、八丁堀から白島線。八系統あります。このうち、横川から市役所方面は最近復活しました。
大変本数が多く便利です。
一方アストラムラインが、紙屋町近く本通りから北上し、山陽線の下をくぐり抜け(ただし駅なし)、途中安佐南区の大町で可部線と乗り換えはあるが、そのまま西へ曲がり、1994年にアジア大会が開催された安佐南区の広域公園前です。ただ、この地域から広島都心(紙屋町)に出るのは、バスで西区の山の中をトンネルで抜けるのが便利です。
◇主な主張と利害得失
主な主張としては以下です。
1、道路をどんどんつくる。
2、地下鉄をつくる。
3、広島電鉄(路面電車)を充実させる。
4、アストラムラインの延長
5、そもそも交通需要を抑制するべき
経済界の中でも秋葉忠利市長に反感をもつ方々や、自民党の議員の多くは、1と2の組み合わせを主張してきたケースが多いのです。
一方、革新ないし環境重視の方々は4と5の組み合わせが多いです。私もこのスタンスです。
秋葉忠利市長も、基本的には5の方向への転換を図っています。ただ、平岡前市長の代に決定したり完成してしまったことも多く、苦労しました。
ノーマイカーデーひろしま実行委員会
◇平和都市にふさわしい交通政策を
海外ではロンドンなど、二酸化炭素排出量六割削減を掲げている街もある。
広島市は先頃、エネルギー政策の画期的な転換も打ち出しています。すなわち、全世帯分のエネルギーを市内で確保するというものです。域内でエネルギーを確保すれば、送電線ロスも少ない。日本で二酸化炭素増加の主因ともなっている石炭にも頼らない。そんな方向に踏み出しました。
交通政策も当然呼応してエネルギー節約型にせねばならないと思います。
また、当然、人口は増えない。
これが議論の大前提です。
◇「道路をどんどんつくる」は時代にも逆行
まず、1は論外です。
先ほどのことを前提にすれば、クルマ社会にこれ以上するのは時代への全くの逆行です。
しかし、自民党の市議や県議の一部の方々は
「広島市は道州制になったら中国地方の州都にならんといけん。だから道路が必要だ」
の一点張りです。
もちろん、彼らは道路特定財源維持の急先鋒です。
今までの「国に頼って道路をどんどんつくる仕組み」を維持したくて仕方がない。
しかし、国の事業であっても場合によりますが、三分の一の負担を自治体がせねばならない。
知り合いの自治体の土木担当者に聞いても本音で「道路をどんどんつくる」今の仕組みを支持する人は一人もいません。
付記しますと広島市と州都を争う岡山市は、路面電車を生かした街づくりを進めています。
無論、むしろ、市議による口利きを排除した秋葉さんへの嫌がらせのネタとして「秋葉は何もしない」という彼らの批判があるというのが八年間、市議会などを取材した私の実感です。
◇地下鉄ももう有り得ない
2の地下鉄の利点としては、新しい路線ですから、軌道の幅や電圧をJRに合わせれば直通運転ができます。
難点は、建設費。それから技術的に見ても広島は、軟弱地盤ですからますます困難です。
◇広島電鉄近代化が手っ取り早いが・
4の広島電鉄の充実は、手っ取り早いです。
極論すれば、車両を近代化すればそれでよいのです。延伸も簡単です。
ただ、電圧も軌道の幅もJRと違いますから乗り入れ運転とはいかない。
◇中途半端なアストラムライン
3のアストラムラインは実は中途半端です。
第一に山陽線や新幹線への接続がない。
第二に、もう終わってしまった話ですが、建設費も普通の鉄道と大差はない。
利便性を考えれば、普通の鉄道を延伸すればよい。
新交通システムは不便だから人々はあまり乗らない。
すると、公共交通機関の利点であるエネルギー節約効果も減殺されてしまいます。
しかし、道路特定財源の補助金がもらえる。
「新交通システムは道路」、という扱いだったから優遇されたのです。
それだけで結局広島以外でも、新交通システムが促進されています。
道路特定財源はこんなところにも暗雲を落としています。
◇限られる選択肢
今の広島市や広島県の財政を考えれば、かなりできることは限られます。
秋葉さんは公共事業見直し委員会を2003年に設け、事業を絞り込みましたが正解です。
その時は、国の直轄事業への負担金も凍結しました。
その上で考えてみますがたいてい誰が考えても似た結論にしかなりません。
第一にアストラムラインについては、JR山陽線との乗り換えを可能にすることくらいが限界です。
路線延伸など有り得ない。
白島で乗り換えが可能にできるよう、先般、地元住民や社会福祉協議会も署名を出しています。
広島電鉄については、2004年に策定した、都心活性化ビジョンでLRTの導入を広島市も想定しています。
さらに踏み込めば、ロンドンに倣って都心へのロードプライシングを行い代わりに公共交通への補助を充実させることでしょう。
ただ、いずれにせよ、思い切った策を広島市がうち出すのは、道路特定財源がいまのまま維持され一方で地方交付税がカットされたままの状態では難しいものがあります。
まず、ガソリン税暫定税率が維持されたままで、ロードプライシングを市民が受け入れるのは極めて難しいでしょう。
国政における以下の変化が広島市を良くすると考えます。
ガソリン税暫定税率をなくす代わりに、地方が自由に使えるような一般財源を保証するのです。
そういう仕組みなら今の広島市ならもっと環境に優しい街づくりは可能と考えます。
by hiroseto2004
| 2008-02-23 17:37
| 広島市政(広島市議会)
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