「技術としては進歩、政策としては後退」した医療 河野美代子さん語る
2008年 03月 30日
3月30日午後、東広島市議の赤木たつおさんの後援会総会が私立総合福祉センターであり、産婦人科医の河野美代子さん
http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/から、医療の現状について記念講演をいただきました。
以下は、お話の概要です。
河野さんは、今年61歳。医師になって10年間は、広島大学病院の産婦人科に勤務し、主に重症の患者を担当しました。そのとき、たくさんの人の生き死に、家族関係を目の当たりにして勉強させられた、ということです。その後土屋病院勤務を経て、1990年からクリニックを開業しています。
■代わりの病院見つからず「薬を切る」ことに
河野さんのお父さんは、晩年、倒れて意識がない状態でした。厚生労働省による「改革」により病院の収入は入院が三ヶ月に及ぶと減る仕組みなっていたため、お父さんは出て行ってほしいといわれた。代わりの病院は見つからず、河野さんは自分が医者であっても、代わりの病院は見つからず、結局、主治医に「命綱」である昇圧剤を切ろうといわれたのです。そのときお父さんは、意識がないとはいえ、大変苦しまれたということです。
■「技術としては進歩、政策としては後退」の医療
河野さんは、今の医療は「技術としては進歩している。しかし、政策としては後退している」とおっしゃいます。
卵巣がんなどは、昔は余命半年だったが、今は10年は生きられるようになったということです。
一方で、国は、医療費の負担増を増やしている。国の考え方は「医療費を抑制すべきもの」という考え方なのです。
■中堅病院が次々赤字、過重負担の勤務医が開業
そのため、中堅病院が次々と赤字になっています。そのために人件費が減ります。そこで、少ない医療従事者で患者を見ます。そうなると、スタッフ一人一人の負担が過重になり過労状態になります。そこで、勤務医が辞めていきます。
勤務医は、大変ですが、「誇り」を持って仕事をしています。それでも勤務医を辞めて開業する人が多いのです。最大の理由は「疲れ果てて」ということです。河野さんご自身も「このままでは死んでしまう」ということで、開業されたということです。
■救急現場の「たらい回し」は医師不足
救急患者がたらい回しにされた、という報道がよくありますが、これは救急に従事する医師が絶対的に足りないからです。医師がさぼっているわけではなく、ほかの患者さんへの対応に追われているからです。
この東広島では救急の拠点病院がなく、広島市や呉市に患者を送る場合も多いのです。
■中堅病院が次々撤退・・産婦人科・小児科
産婦人科では広島県内では、次々と中堅病院が撤退しています。ここ数年でも10病院が撤退しました。東広島では(地元では大きな)呉共済病院が撤退しました。
それは、民事上のトラブルはもちろん、医師が刑事責任を問われる事件が増えたことから加速しています。福島県立大野病院の医師が逮捕された事件がとくに影響が大きいのです。
あの事件は帝王切開でおきました。赤ちゃんが出た後胎盤が出ます。胎盤が癒着した状態は「癒着胎盤」といってまだ、手で取れるのですが、いわゆる滲入胎盤(完全に子宮と胎盤の組織同士がとけあっている状態)という状態になっていました。これは非常に難しく、4時間悪戦苦闘しましたが、お母さんはなくなってしまった。それにより、医師は逮捕されました。多くの人が減刑を嘆願していますが、検察側は「あらゆる命を救えなかったら犯罪」といわんばかりの理論構成をとっています。
「救えなかった命」はあるのは本当に悔しいのですが、やはりどうしても不幸にもどうがんばっても結果として救えないことがある。だが、刑事にまで問われてしまった。そのため、急激に産婦人科医がいなくなりました。
そして、一人しか産婦人科医がいない病院は出産を扱わないことになり、広島県ではさらに3人いないとお産を扱わないことになる「集約化」が進みました。しかしその結果、庄原市東城町では、60kmはなれた三次市までいかないとお産ができないのです。(この地域は、私、さとうがかつて勤務していたからわかりますが、雪で路面が凍結することも多い地域で急いでいたら危険です。)
しかし、集約化を推進する医師は、「そういうところ(集約化された病院から離れたところ)に住んではいけない。お産が住んだら、そこへ戻ればよい。」という見解です。
■日本は医療にもっとお金を!
そうではなく、医者を増やすこと。そして医療にしっかりお金をかけること。医者を増やせば、睡眠も十分取れて、過労による事故も減らすことができます。
政府は、医療費が高騰しているといっています。日本の医療費のGDP比は、OECD30か国中22位に過ぎません。人口一人当たりの医師数も、OECDの平均以下です。
介護でも、リハビリに対しての保険適用が、半年で打ち切られます。本当は脳梗塞などで倒れた人でも、半年を過ぎてもまだ回復を続ける人がいるのにです。「障害者自立支援」法にいたっては、「自分で負担することで自立を促す」というものですし、母子手当てもこの春からカットされます。
先進国では医療費はかかってあたりまえです。国民の命を守らず、何の国家でしょうか?介護や福祉、医療には国がお金をかけるべきです。
□感想
私も、仕事上、県内の医療の窮状はみています。勤務医が基準に足りないと当然、増やしてくださいと病院に県が指導します。その場合、たとえば1.8人足りないところで、0.1人ようやく増やしました、あと1.7人を努力します、という回答が県に返ってくるわけです。それはたいてい、大学病院の先生のアルバイトなのです。
しかし、常勤で勤務してくれる、という先生はほとんどいません。むしろ、勤務医で患者に人気だった先生が、開業していくケースが多いのです。
一時期、マスコミなどが一部の「セレブ」な医者だけを取り上げ、激しく医者をたたきすぎたとおもいます。また、小泉純一郎さんら新保守主義者がそれに便乗して医療への予算を抑制してしまった、と思います。あのとき、自民党に入れた人は一時は溜飲を下げたが、今はとんでもない結果を招きました。
今、政治が緊急に手を打たないと本当に大変なことになると思います。
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以下は、お話の概要です。
河野さんは、今年61歳。医師になって10年間は、広島大学病院の産婦人科に勤務し、主に重症の患者を担当しました。そのとき、たくさんの人の生き死に、家族関係を目の当たりにして勉強させられた、ということです。その後土屋病院勤務を経て、1990年からクリニックを開業しています。
■代わりの病院見つからず「薬を切る」ことに
河野さんのお父さんは、晩年、倒れて意識がない状態でした。厚生労働省による「改革」により病院の収入は入院が三ヶ月に及ぶと減る仕組みなっていたため、お父さんは出て行ってほしいといわれた。代わりの病院は見つからず、河野さんは自分が医者であっても、代わりの病院は見つからず、結局、主治医に「命綱」である昇圧剤を切ろうといわれたのです。そのときお父さんは、意識がないとはいえ、大変苦しまれたということです。
■「技術としては進歩、政策としては後退」の医療
河野さんは、今の医療は「技術としては進歩している。しかし、政策としては後退している」とおっしゃいます。
卵巣がんなどは、昔は余命半年だったが、今は10年は生きられるようになったということです。
一方で、国は、医療費の負担増を増やしている。国の考え方は「医療費を抑制すべきもの」という考え方なのです。
■中堅病院が次々赤字、過重負担の勤務医が開業
そのため、中堅病院が次々と赤字になっています。そのために人件費が減ります。そこで、少ない医療従事者で患者を見ます。そうなると、スタッフ一人一人の負担が過重になり過労状態になります。そこで、勤務医が辞めていきます。
勤務医は、大変ですが、「誇り」を持って仕事をしています。それでも勤務医を辞めて開業する人が多いのです。最大の理由は「疲れ果てて」ということです。河野さんご自身も「このままでは死んでしまう」ということで、開業されたということです。
■救急現場の「たらい回し」は医師不足
救急患者がたらい回しにされた、という報道がよくありますが、これは救急に従事する医師が絶対的に足りないからです。医師がさぼっているわけではなく、ほかの患者さんへの対応に追われているからです。
この東広島では救急の拠点病院がなく、広島市や呉市に患者を送る場合も多いのです。
■中堅病院が次々撤退・・産婦人科・小児科
産婦人科では広島県内では、次々と中堅病院が撤退しています。ここ数年でも10病院が撤退しました。東広島では(地元では大きな)呉共済病院が撤退しました。
それは、民事上のトラブルはもちろん、医師が刑事責任を問われる事件が増えたことから加速しています。福島県立大野病院の医師が逮捕された事件がとくに影響が大きいのです。
あの事件は帝王切開でおきました。赤ちゃんが出た後胎盤が出ます。胎盤が癒着した状態は「癒着胎盤」といってまだ、手で取れるのですが、いわゆる滲入胎盤(完全に子宮と胎盤の組織同士がとけあっている状態)という状態になっていました。これは非常に難しく、4時間悪戦苦闘しましたが、お母さんはなくなってしまった。それにより、医師は逮捕されました。多くの人が減刑を嘆願していますが、検察側は「あらゆる命を救えなかったら犯罪」といわんばかりの理論構成をとっています。
「救えなかった命」はあるのは本当に悔しいのですが、やはりどうしても不幸にもどうがんばっても結果として救えないことがある。だが、刑事にまで問われてしまった。そのため、急激に産婦人科医がいなくなりました。
そして、一人しか産婦人科医がいない病院は出産を扱わないことになり、広島県ではさらに3人いないとお産を扱わないことになる「集約化」が進みました。しかしその結果、庄原市東城町では、60kmはなれた三次市までいかないとお産ができないのです。(この地域は、私、さとうがかつて勤務していたからわかりますが、雪で路面が凍結することも多い地域で急いでいたら危険です。)
しかし、集約化を推進する医師は、「そういうところ(集約化された病院から離れたところ)に住んではいけない。お産が住んだら、そこへ戻ればよい。」という見解です。
■日本は医療にもっとお金を!
そうではなく、医者を増やすこと。そして医療にしっかりお金をかけること。医者を増やせば、睡眠も十分取れて、過労による事故も減らすことができます。
政府は、医療費が高騰しているといっています。日本の医療費のGDP比は、OECD30か国中22位に過ぎません。人口一人当たりの医師数も、OECDの平均以下です。
介護でも、リハビリに対しての保険適用が、半年で打ち切られます。本当は脳梗塞などで倒れた人でも、半年を過ぎてもまだ回復を続ける人がいるのにです。「障害者自立支援」法にいたっては、「自分で負担することで自立を促す」というものですし、母子手当てもこの春からカットされます。
先進国では医療費はかかってあたりまえです。国民の命を守らず、何の国家でしょうか?介護や福祉、医療には国がお金をかけるべきです。
□感想
私も、仕事上、県内の医療の窮状はみています。勤務医が基準に足りないと当然、増やしてくださいと病院に県が指導します。その場合、たとえば1.8人足りないところで、0.1人ようやく増やしました、あと1.7人を努力します、という回答が県に返ってくるわけです。それはたいてい、大学病院の先生のアルバイトなのです。
しかし、常勤で勤務してくれる、という先生はほとんどいません。むしろ、勤務医で患者に人気だった先生が、開業していくケースが多いのです。
一時期、マスコミなどが一部の「セレブ」な医者だけを取り上げ、激しく医者をたたきすぎたとおもいます。また、小泉純一郎さんら新保守主義者がそれに便乗して医療への予算を抑制してしまった、と思います。あのとき、自民党に入れた人は一時は溜飲を下げたが、今はとんでもない結果を招きました。
今、政治が緊急に手を打たないと本当に大変なことになると思います。
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by hiroseto2004
| 2008-03-30 18:02
| 介護・福祉・医療
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