「助けない」のが「助け合い」
2008年 04月 11日
国が言う「助け合い」は「助けない」の間違いではないか?
広島県北部在任中、介護や医療を担当し、市町村の指導にもあたらせていただいた、私の正直な感想です。
具体例として、介護保険をあげます。
介護保険料は5段階からなり、年収数千万円のお金持ちと、生活保護受給者ないし老齢福祉年金の受給者の間で、3倍しか違いがありませんでした。そのように、国が基準を定め、設定させていたのです。現在は以下の三次市のように6段階になっているのですが、基本的には変わりません。
http://www.city.miyoshi.hiroshima.jp/shiruba_m/kaigohoken.jsp
上記の三次市の例の場合、「世帯全員が住民税非課税で、第2段階以外」の方なら、お金持ちとの差は2倍に過ぎません。そして、「本人非課税だが、家族の誰かが課税」なら「第4段階」となり月額4000円。年収数千万円で第6段階の方との差は1.5倍になります。
第4段階だと、たとえば、お子さんが働いていて、ご本人は低年金、というケースが一番おおくあります。お子さんが働いているからいいだろうと思っても、課税最低限ぎりぎりくらいの方なら、本当に苦しいのです。
こうした方は、介護サービスを利用しようとしても実際問題、家計に余裕がないので自己負担の1割でも重荷になり、サービスの利用が難しいのです。さらに、国の教条的な指導が追い討ちをかけます。すなわち、「同居家族がいるなら、なるべく介護サービス利用は抑えよ。家族の「助け合い」を基本とせよ」という精神に基づいた指導を私たち県の担当者は、サービスを実際に提供する事業者にせざるを得ませんでした。私も、何度かそういう指導をさせていただき、ルールに基づいたものとはいえ、忸怩たる思いがあります。
第2段階の方でも、実際には近所に親族がいるから、生活保護を受けられない、しかし、所得は低い、というひとがたくさんおられます。それでも、月額2000円を年金から引かれていきます。
見かねた市町村の中にはもちろん、保険料の減免を行うところもあります。
しかし、国は、「一般会計からの繰り入れはまかりならん」、というのです。
介護保険は、第2号被保険者(40-64歳)31%、第1号被保険者(65歳以上)19%、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%という負担割合でお金を出し合って財政を支えている「特別会計」です。
国は、市町村が一般会計から繰り入れると、「介護保険は助け合いだから一般会計のお金を投入しての減免をすると「助け合い」でなくなる。」というのです。
所得の割には高い国保料もとられている方に追い討ちをかけるようで申し訳なかったが、減免を一般会計から繰り入れて行っているある村の幹部の方に対して「国の基準に従って、一般会計からの繰り入れはやめてください」とこの若造が指導させていただいたことは、忸怩たる思いがあります。
町村の職員の方はみな、私よりもはるかにベテランでした。「所得比例の介護保険料にすればいいじゃないの」「介護保険なんて持つわけがないよ」と率直におっしゃる職員もおられました。
それはそうです。大金持ちと最低段階の方で3倍しか違わないなら、それは「逆進的保険料」です。
新進党を率いていた時代の小沢一郎さんが「介護は税でまかなうべき」というのが正しいと思います。
国の考え方は、「助け合い」という名の「助けない」ではないでしょうか?75歳以上に保険料を出させる後期高齢者医療制度にしても同じ精神構造を根底に強く感じるのです。
そもそも、保険料方式にこだわらなくても、税金も広い意味で国民ないし住民がお金を出し合う「助け合い」ではないのでしょうか?「税金は役人のものではなく国民みんなのもの。」それで地方自治体が介護などをまかなっている北欧などのあり方でよいと思います。
「税金は俺ら役人のものであって、国民のために使うときは『恵んでやるもの』だ。だから「助け合い」ではないのだ。」 そんな意味が、国が言う「助け合い」の言外にあるように思えてなりません。

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広島県北部在任中、介護や医療を担当し、市町村の指導にもあたらせていただいた、私の正直な感想です。
具体例として、介護保険をあげます。
介護保険料は5段階からなり、年収数千万円のお金持ちと、生活保護受給者ないし老齢福祉年金の受給者の間で、3倍しか違いがありませんでした。そのように、国が基準を定め、設定させていたのです。現在は以下の三次市のように6段階になっているのですが、基本的には変わりません。
http://www.city.miyoshi.hiroshima.jp/shiruba_m/kaigohoken.jsp
上記の三次市の例の場合、「世帯全員が住民税非課税で、第2段階以外」の方なら、お金持ちとの差は2倍に過ぎません。そして、「本人非課税だが、家族の誰かが課税」なら「第4段階」となり月額4000円。年収数千万円で第6段階の方との差は1.5倍になります。
第4段階だと、たとえば、お子さんが働いていて、ご本人は低年金、というケースが一番おおくあります。お子さんが働いているからいいだろうと思っても、課税最低限ぎりぎりくらいの方なら、本当に苦しいのです。
こうした方は、介護サービスを利用しようとしても実際問題、家計に余裕がないので自己負担の1割でも重荷になり、サービスの利用が難しいのです。さらに、国の教条的な指導が追い討ちをかけます。すなわち、「同居家族がいるなら、なるべく介護サービス利用は抑えよ。家族の「助け合い」を基本とせよ」という精神に基づいた指導を私たち県の担当者は、サービスを実際に提供する事業者にせざるを得ませんでした。私も、何度かそういう指導をさせていただき、ルールに基づいたものとはいえ、忸怩たる思いがあります。
第2段階の方でも、実際には近所に親族がいるから、生活保護を受けられない、しかし、所得は低い、というひとがたくさんおられます。それでも、月額2000円を年金から引かれていきます。
見かねた市町村の中にはもちろん、保険料の減免を行うところもあります。
しかし、国は、「一般会計からの繰り入れはまかりならん」、というのです。
介護保険は、第2号被保険者(40-64歳)31%、第1号被保険者(65歳以上)19%、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%という負担割合でお金を出し合って財政を支えている「特別会計」です。
国は、市町村が一般会計から繰り入れると、「介護保険は助け合いだから一般会計のお金を投入しての減免をすると「助け合い」でなくなる。」というのです。
所得の割には高い国保料もとられている方に追い討ちをかけるようで申し訳なかったが、減免を一般会計から繰り入れて行っているある村の幹部の方に対して「国の基準に従って、一般会計からの繰り入れはやめてください」とこの若造が指導させていただいたことは、忸怩たる思いがあります。
町村の職員の方はみな、私よりもはるかにベテランでした。「所得比例の介護保険料にすればいいじゃないの」「介護保険なんて持つわけがないよ」と率直におっしゃる職員もおられました。
それはそうです。大金持ちと最低段階の方で3倍しか違わないなら、それは「逆進的保険料」です。
新進党を率いていた時代の小沢一郎さんが「介護は税でまかなうべき」というのが正しいと思います。
国の考え方は、「助け合い」という名の「助けない」ではないでしょうか?75歳以上に保険料を出させる後期高齢者医療制度にしても同じ精神構造を根底に強く感じるのです。
そもそも、保険料方式にこだわらなくても、税金も広い意味で国民ないし住民がお金を出し合う「助け合い」ではないのでしょうか?「税金は役人のものではなく国民みんなのもの。」それで地方自治体が介護などをまかなっている北欧などのあり方でよいと思います。
「税金は俺ら役人のものであって、国民のために使うときは『恵んでやるもの』だ。だから「助け合い」ではないのだ。」 そんな意味が、国が言う「助け合い」の言外にあるように思えてなりません。

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by hiroseto2004
| 2008-04-11 18:51
| 介護・福祉・医療
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