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by hiroseto2004

ロバート・カトナー「新ケインズ主義の時代 国際経済システムの再構築」を読んで(2)

ロバート・カトナー「新ケインズ主義の時代 国際経済システムの再構築」を読んでから続く

今後の展望は?

資本主義は勝利したか?

冷戦崩壊で、総市場経済化、西側の勝利とする声が大きい。しかし、冷戦後、これからの国際経済体制は以下のような課題を抱えている。
もはや、アメリカ一国では、国際公共財の提供は不可能であり、また、アメリカ自身、冷戦崩壊で国際公共財の提供へのインセンティヴは、弱まっている。

また、現状、リヨン=サミットでも取り上げられたが、途上国間の激しい経済格差、また、環境問題、先進国自身の失業問題など、難問山積である。

こうした、問題を、全て、市場の不徹底の帰着するものが増えている。本当はどうなのか?

国際通貨体制の課題

通貨体制は、現在のところ、先進国の協調による「管理された変動相場制度」である。
しかし、このままドルが基軸通貨でいく,すなわち、アメリカが単独で国際公共財を提供していくには無理がある。

しかし、現状、それに代わるものがないというのが現状である。 確かに、経済が発展するアジアでは円が、ヨーロッパはマルクが地域的 に流通しており、EU内では、ドルの地位は地に落ちている。

しかし、スワップ取引の多くがドルを媒介としている。 しかも、例えば、モンゴルとポーランドなどの交易には依然ドルが決済通貨であり、 経済的能力は、アメリカを頂点とする先進国にハイテク製品輸出して、ドルを稼ぐことに事実上限定されてしまっている。そのことは、無理な工業化、食糧不足、ゆがんだ発展による疫病の流布(すでにアジアがエイズの最流行地という話しも)を引き起こしかねないし、現に中国の食糧不足も一因は、工業重視と、農業基盤の相対的な軽視にある。

また、ドル圏、円圏、マルク圏に入れてもらえないところはどうするのであろう?国際経済への参加の道断たれるのではないか?

また、「市場の監視」は途上国に集中している。金融市場ののグローバルな統合で、経常赤字は、資本移動でファイナンスできるとされるが、実態はアメリカは日本に国債買わせ、暴落防ごうとすることができるということである。こうした不平等性も問題である。

ケインズの理念の見直し、経済への参加権利証としての通貨「バンコール」)も検討されて良いはずだ。アメリカが、もはや、単独で国際公共財としての通貨を提供できず、むしろそれを乱用している今、新たな形の国際通貨を創造し、対等な形の国際通貨体制の構築は重要性を増すのではないだろうか?

そして、選択肢の広い開発プランを実行可能にするため、ケインズ案のように、流動性の供給を増やすべきであろう。

東欧・ロシアの改革でも、一律な「安定化」政策は、却って混乱を招く。また、東欧革命で人々が望んでいたのは、自由放任ではなく、西側と同じような「混合経済」であろう。

勿論、おおくの途上国の貧困の原因の一つは、前近代的な社会構造、不透明な、経済システムにも一因がある。しかし、IMF、世界銀行のように途上国の手足を過度に縛るべきではない。

今世紀はこうした、認識不足のため愚かな大戦を繰り返し、環境、人口問題 も激化させる結果になった。そしてこのままアメリカが潰れて、国際決済通貨 無くなれば、それこそ、国際経済体制崩壊、日本自身の問題だ。とくに、現代では、投機的な資本移動が激しいだけに、危険は大きい。

投機で、うまく相場が調整されると考えるのは、危険である。通貨は、どこからでも借りてこれるので、投機しやすい。しかし、通貨は、資本主義経済にとっての重要な公共財である。それが、不安定な投機にさらされては、致命的である。

よく、冷戦後、市場経済が世界に広がったから、自由放任で良いという意見も聞く。しかし、総市場経済化だからこそ、通貨の公的意義は増したともいえる。それだけに、政治的な力で安定させる必要があろう。


貿易体制の課題
貿易体制についても同様である。国際化した経済の中では、国民国家は無意味であるという意見も聞く。しかし、国際化したからといって、資本主義に急に安定化機能が備わるわけでもあるまい。
完全に自由に交易させて問題がないのは、経済力格差、経済政策の違いが全くない、または、世界政府が成立したケースであろう。

現在、途上国の中でも、アジアNIES、そして、矛盾を抱えつつも東南アジアなどは、順調に発展している。

しかし、他の途上国の多くは、いまだに貧困・人口爆発・環境破壊・前近代的システムに苦しんでいる。

自由貿易は、資源の効率的配分を行なうとされるが、その結果の利益配分までが、平等な訳ではない。

また、規模の経済が産業に存在すれば、比較優位などに関係なく、たまたま、産業政策や、歴史的条件で先行するものが、大きな利益を得る。

また、農業に比較優位があるからといって、大人しく農業に特化すれば、農産物の価格の不安定性、また、需要の所得弾力性の低さがあいまって、その国は健全な発展は難しい。多くの国が、輸入代替型工業化を目指し、また、産業政策をとったゆえんである。

勿論、そのことが、非効率な産業温存や、食糧危機(特にアフリカ)を招いたとの批判は大きい。

また、アメリカなども、規模の経済がある分野での「戦略的貿易政策」をとっている。

国際化した経済の中では、国民国家は無意味であるという意見も聞く。しかし、国際化したからといって、資本主義に急に安定化機能が備わるわけでもあるまい。そして、国際経済の現実も、やはり、「自由」といいながら、他国の犠牲のもと、戦略的貿易政策や、リストラ競争などで、優位に立とうとする現実がある。

そして、これらのことにより、生産過剰、総需要不足によるケインズ的な問題が発生する危険もある。

あえて、非難を恐れずにいえば、多国間でルールを明示的に定めた、「管理貿易」も規模の経済、破滅的競争が起きやすい分野での導入も世界政府が成立するまでの過渡的措置としてやむをえまい。自由放任の絶対視より、柔軟に、互いの消費市場を守りつつ健全な発展を図っていくべきである。

産業政策についても、多国間でルールを明示的に定め、研究・開発を促進することなどをを容認、技術進歩の利益を国際経済体制の破壊なしに享受する方向をとるべきであろう。

また、民間レヴェルでの摩擦回避努力も重要であろう。

勿論、上記の通貨・貿易体制実現には、国家主権の関門、特にアメリカの抵抗も予想され、また、民主的な統制が国家に対するより、国際機関に対する方が難しいという、EUでも見られる、「民主主義の赤字」の問題も出てくる。


草の根からの国際経済体制変革

そこで、NGOなどの、国境を越えた活動が、注目される。いまや、彼ら・彼女らは単なる批判勢力に留まらず、積極的な、提案型集団に成長しつつある。
また、環境、社会開発(人権)なども重要な問題である。しかし、南を「収奪」して発展してきた「北」が環境・人権を貿易・経済発展抑制と結び付ると、途上国から当然のごとく批判があがろう。

ここで、注目されるのは、草の根レヴェルでの、「第三世界ショップ」などの動きである。

それは、基本的には「公正貿易」の理念にのっとたものだ。それは、1960年代のオランダでまずはじまった。ヨーロッパでは、各国に公正貿易組織が誕生、ドイツのそれは、年間売上250万マルクにも達するという。

日本でも、ネグロス島のバナナを公正な対価(1キロ当たり20円の自立のための基金込みで)輸入、年間1500トンも売れているという。「いかに安く」買うかということより、「いかに適切かつ公正な価格で買うか」である。

原則として、1)世界市場の相場より高く、2)最低1年以上の長期契約であり、3)契約成立後、代金は前払い、である。

この「公正貿易(フェア=トレード)」運動の拡大は、北の消費者の成熟を示すものである。

公正な代価が、生産者の手に渡ることで、生産者の健康、環境への配慮も向上し、また、安定的な契約(多国籍企業の「最適調達」の発想と対照的)で、動態的規模の経済がいきてくる。

また、先進国側も、援助ボランティアをする、といっても、個人の財力、時間に限界があり、往々にして、短期で挫折する。このフェア=トレードの形なら、消費者として、また商売として援助に貢献できる。また、それは、「大競争」、国際的なリストラ競争を背景とした「企業内有用労働」急速な縮小の中、雇用を創り出す効果もあることを指摘したい。この他にも、利潤最大化原理に因われず、生業として、市民事業に携わる人も増えつつある。それらは、利潤最大化より、存続して、社会のニーズを埋めることを働きがいとしている。

市民の側から、企業一元の経済、また、国際経済体制をつき崩す動きが現れている。それは、冷戦崩壊後、とみに横行した、資本主義礼賛の動きの裏で、着々と進んでいる。もはや、歴史の流れは、かつての、「共的領域」を「政府」、「市場」が、引きさいてきた資本主義の発達過程から、反転し始めたのかも知れない。

そして、政府の役目に、このような動きを後押しする環境整備が付け加わっても良いのではないか。


最後に

国際経済体制とは、(世界政府がない限り)相互の健全な発展のためのものであり、それを忘れた体制は長続きはすまいし、かえって有害である。自由化より、「円滑化」、「公正」が、大事であると筆者は考える。また、冷戦後、とみに、現在の世界が抱える問題を、市場の不徹底に帰着するものも多いが、それは、冷戦下で働いてきた資本主義の自浄作用が失われつつある兆候であり、また、誤った方向へ、人々を導きかねないと考える。


参考文献

杉本昭七ら編著「現代世界経済をとらえる」(東洋経済新報社)

鬼塚雄丞「国際金融」(東洋経済新報社)

内橋克人「共生の大地」(岩波新書)

ロバート=カトナー(佐和隆光訳)「新ケインズ主義の時代」

環境白書(96年版)
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by hiroseto2004 | 2008-11-06 17:57 | 経済・財政・金融 | Trackback